佐茂原秋葉

「章‼ いるんでしょう‼ 今すぐ出てきなさい‼」


 また変なのが来た......しかも今回のはやたらと物騒そうだ。嫌だなぁ......関わりたくないなぁ......


「あ、いた‼ あんた‼ 何交通事故なんかに会ってるのよ‼」


そんな僕の願いも虚しく見つかってしまった。まあ鼻から隠れる気などなかったのだけれど。


「秋葉さん‼ いきなり現れてその物言いは何ですか‼ 章さんに失礼でしょう‼」

「うっさい‼ 部外者であるあんたがしゃしゃり出てくんじゃないわよ‼」

「な、なんですって!?」

「け、喧嘩は止めよう? ね?」

「喧嘩なんてしなわいよ‼ それに誰のせいで私がこんなに怒っていると思っているのよ‼」


 怒号と共に突如として現れた少女はその赤色の髪を逆立て、猫の様に吊り上がった金色の瞳で僕の事を激しく睨んでいる。


一体全体僕が何をしたと言うのだ。


「ええと……僕記憶がなくて……」

「何勝手に記憶なくしているのよ‼」

「そんな理不尽な……」

「いいから今すぐ全部思い出しなさい‼ ホラ‼ 早く‼」

「ぐ、ぐるじい……」

「ちょ!? 秋葉貴方何やってるの‼ ああ‼ 章さん‼ 章さん‼」


 や、やばい……い、意識がだんだん薄れ……


「……うるさい」

「葵‼ 貴方も秋葉を止めるの手伝いなさい‼ じゃないと章さんが‼ 章さんが殺されてしまいますわ‼」

「……分かった」

「邪魔すんじゃないわよ雑魚ども‼」

「うう……痛い……」

「ああ‼ 章さんが泡を吹いて……」

「ぶぶぶぶぶぶ……」

「勝手に寝るな‼ 起きなさい‼」

「おい‼ お前達何して……章‼」

「チッ……唯が来た」

「秋葉‼ 早く章から早く手を放せ‼」

「嫌だと言ったら?」

「そんなの言わなくてもわかっているだろう?」

「……チッ」

「章さん‼ 章さん‼ しっかりしてください‼ 章さん‼」

「ハッ……死んだかと思った……」


 喉……痛い……それに呼吸もしづらい……


「よ、よっかたですわ……泡を吹き始めた時はもうダメかと」

「だ、大丈夫……ではないけれど……なんとか……」

「……章」

「あ、起きたんだね」

「……うん。二人がうるさかったから起きた」

「そ、そっか」


 二人がうるさいから起きたんだ……そこはもう少し僕の心配して欲しかったなぁ……トホホ……


「失敬ですわ。うるさかったのは主に秋葉のせいですのに……」

「あははは……はぁ……」


 それにしてもまさかいきなり殺されかけるとは、思わなかった。それにと呼ばれた少女は何故僕の事をいきなり殺そうとしたんだ? もしかして僕に何か恨みでも……


「私は悪くないから‼」

「秋葉‼ お前……」

「何? 文句でもあるの?」

「文句しかないぞ‼ いきなり章の事を殺そうとして一体お前何様なんだ‼」

「私様ですが何か?」

「この……‼」


嗚〜呼。何このカオスな状況。一体全体どうすれば......


「ちょっと二人ともいい加減にしなさいまし‼ 折角章さんが意識を取り戻してくれたというのに、こんな醜い争い見せてどうしようというのですか‼」


 カナ......こんな状況下でも君は優しいなあ......僕だったら絶対あんなカオスな状況には突っ込まないのに。


「それは秋葉が……」

「唯さんのいう事はわかりますがだからと言って挑発に乗っては元も子もないでしょう‼」

「……その通りだぞ」

「それから秋葉さん‼ 貴方の行動に関しては意味が分かりません‼ どうしていきなり章さんを殺そうとするのですか‼ 貴方は章さんの事が好きじゃないんですか‼」

「は、はあ!? そんなわけないし‼ 大好......って何言わせようとしてるのよ‼︎」

「ええ……」


 こうもベタなツンデレ行動されるとこちらとしては反応に困るし、いくらツンデレだからと言っていきなり殺しにかからないで欲しい。これではヤンデレとやっていることが変わらないじゃないか。


むしろ僕を殺しに来てるあたり尚たちが悪い。いくら杏でも流石に僕の事を殺す様な真似するはずが……するはずが……ないと思いたい……


「それと貴方まだ自己紹介してないでしょう‼」

「……そんなの今更する必要ないでしょう」

「ああ、そうですか‼ 分かりました‼ それなら貴方は一生名前で呼ばれなくていいのですね‼」

「……佐茂原秋葉さもはらあきは。秋葉でいい」

「そ、そっか。よろしくね。秋葉」


 秋葉はその言葉に返事することもなく、僕から顔をそむけてしまった。どうにもこの子は他の四人と違って僕に冷たい。それがちょっぴり寂しかったり。


「こんにちは‼ 章ちゃ……なんだ……皆もういたんだ……」


 おいおい杏さんや。登場早々その冷たい目は勘弁してくれ。怖いじゃないか。

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