皆川葵
「ええとカナ。一つ聞きたいことがあるんだけどいい……かな?」
「はい‼ 私に答えられる限れならば何でもお答えしますわ‼」
「その……実は僕って……君以外にも付き合っているという女子がいるんだけど……」
「それは一体どういうことですか‼ もしかして私との関係は遊びだったのですか‼」
泣きながら怒ってる......器用なことするなぁ......
「な、泣かないで‼ それに困惑しているのは僕も同じなんだから……」
「そ、そうですよね……章さんは記憶を……」
「うん……だから僕としては君が言っていることが本当なのか信用できないし、他の二人がいう事も信用することができないんだよ。その……その事については本当にゴメン……」
「いえ。章さんの反応は普通ですわ。私だっていきなりそんな事言われてもむしろ困惑してしまうと思いますわ」
「カナ……」
この子……やっぱりいい子だ……こんな話。他の二人には絶対にできない。まして同情までしてくれるなんて……
「大丈夫ですわ‼ 仮にそのお二方が嘘をついているとしても本当の愛は絶対に負けませんのよ‼ だからこそ私は章さんに信用してもらえるよう行動するまでですわ‼」
「う、うん……なんかありがとう……本当にありがとう……」
現段階ではこの子のいうことが最も信憑性が高い気がする。というかそうであると信じたい。
「ところで章さんの偽の恋人を名乗る不届き物は一体誰なのですか?」
「ええと……多分知ってると思うけど……園寺杏と三宮寺唯の二人なんだ……」
「ああ......あのお二人ですか……」
「あ、やっぱり知ってるんだ……」
「それはもう。二人の事はよくしていますわ。一応幼馴染ですから……ね」
どうやらカナもあまり二人の事をよく思っていないらしい。そうなると僕の幼馴染は皆仲が悪いのか……それはそれでなんだか悲しいな。折角幼馴染なんだからもっと仲良くすればいいのに……
「章さん‼」
「な、何かな?」
「あの二人……いいえ。それだけじゃありませんわ‼ 私以外の言う言葉を信じないで欲しいですの‼」
「そ、それまたなんで……?」
「あの方たちは皆俗物の塊たちですの‼ きっとあの手この手で章さんの事を手に入れようとするに決まっていますわ‼ だからこそ‼」
「自分のいう事を信じて欲しい……と?」
「はい‼ その通りですわ‼」
う~ん……いきなりそう言われても困る。大体この子の言っていることも信用できない状況下で、彼女の言葉を信じるのは明らかに早計だ。
ただし現段階では彼女の言う言葉が最も信頼に足りうる。それに彼女の言葉から推察するに他の二人も明らかに僕に対して好意を持っている。その彼女たちの言葉を聞いてからでも判断しても遅くはない。
「カナ。君の言い分は分かった」
「よか……」
「その上で僕は君のいう事を
「まだ……つまるとこと今後信頼する可能性があるということですか?」
「うん。そうだよ」
この子。動揺したように見えて、きちんと人の話を聞いている。もしかしたら……いや、もしかしなくてもかなり頭がいい子なんじゃないのか? そうなるとかなり厄介だ。
頭のいい人間のつく嘘は厄介で、真実とほとんど見分けがつかないと聞く。そうなるとカナの事が一気に信用できなくなってきた。
「……わかりましたわ。今はそれで我慢致します。でも‼ 私こそが真の恋人ですから‼ その事絶対に章さんに証明してみせますわ‼」
「あ、うん……」
「カナリアうるさい。外まで声が響いている」
「そ、その声は……」
僕の前に姿を現した第四の美少女は、灰色の髪を見事にぼさぼさにしていた俗にいう無気力系女子の塊のような人物だった。
「いちいちリアクションが鬱陶しいし、うるさい。もっとエコに生きることはできないの?」
「貴方みたいにだらしがないよりはうるさい方がはるかにマシですわ‼」
「ふ~ん。そっか。まあカナリアなんてどうでもいいや。章」
「え、ええと君の名前は……」
「
「そ、それじゃあ葵さん。君もまた僕の幼馴染でいい……のかな?」
「うん。ねぇ章」
「な、何かな?」
「疲れた……抱っこして……」
そう言いながら既に僕にもたれかかっているではないか……一体何なんだこの子は……
「章の匂い……落ち着く……」
「え、ええと……」
「すぅ……すぅ……」
「寝てしまいましたの?」
「見たい……だね……」
「はぁ……やっぱり……」
「やっぱり……?」
「はい……その……葵は昔からかなり自由気ままな子でして章さんがいるといつも抱き着いたまま眠ってしまうんですの……」
「それはまた……」
「ええ……本当に厄介な子ですわ……」
僕の幼馴染はどうしてこうも面倒くさいのばかりなんだ。この分だと最後の一人も絶対面倒くさいだろうなぁ……嫌だなぁ……
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