第3話

「ふむ、確かにジェイコブのバカがやったことは愚かだな。

 このままではアポローン神の守護すら失いかねない。

 ヴィーザル神の契約王族、アーサー殿を殺せば、少しはご機嫌がなおっただろうに、失敗しては更にご機嫌悪くなり、契約を破棄されかねないな」


 チャーリー国王が、薄笑いを浮かべながらアーサー王太子に話しかけられます。

 なんとも不気味な方です。

 心が狭くて怒りっぽくてバカなジェイコブ王太子など、アーサー王太子は歯牙にもかけず殺してしまわれるでしょうが、チャーリー国王は何か罠をしかけています。

 アーサー王太子も下手に斬りかかるわけにはいかないでしょう。


「だったらどうする。

 アポローン神に見放され、我がヴィーザル神に黙って殺されるか」


「いいや、ジェイコブの不始末をアポローン神に詫び、ヴィーザル神にも納得していただこう。

 アポローン神は芸術神の神でもあられる。

 王家の所有する全ての美術品を献上し、ジェイコブを生贄に捧げる。

 国中の娘を集めて、新たな聖女を選んでいただく。

 司法神ヴィーザルも、これで納得してくださるのではありませんかな?」


「聖女ソフィアはどうされる。

 これでは片手落ちだぞ!」


「それはヴィーザル神とアーサー殿に任せよう。

 ソフィアはアポローン神が聖女に選ぶほどの女。

 もらって嫌な気はしないだろう」


 私は物ではないです!

 いくら神々とはいえ、物のようにやり取りされるのは嫌です!

 嫌ですが、しかたないのでしょうね。

 神はとても身勝手な存在。

 興味を持てば神力を限りを尽くして奪う者。


 特にアポローン神は色々な顔を持たれている方。

 遠矢の武神、芸術神という顔だけではないのです。

 羊飼いの守護神、光明の神、疫病神、予言神という顔も持っておられる。

 多くの人々が信じている、光明の神という顔だけではないのです。

 チャーリー国王が予言神として何を教えてもらっているのか、それがはっきりしない限り、アーサー王太子でもうかつに手出しできないでしょう。


「下劣な!

 それでよくアポローン神の契約王といえるな!」


「ふっふっふ。

 司法神ヴィーザルと契約しているアーサー殿から見ればそうであろう。

 だがな、アポローン神の契約王であればこそ、アポローン神の望む全てをかなえなければならないのだよ。

 この下劣な行動も、アポローン神の望みをかなえるためよ。

 分かったら、さっさとソフィアを連れてこの国から出て行ってもらおうか。

 この後は神同士が話し合われる問題よ」


「くぅ!

 ソフィア殿。

 さっさとこんな国から出て行こう!」


 ああ、なんたることでしょう。

 やっとジェイコブから解放されると思ったのに。

 アポローン神が護ってくれる、はずはないですよね。

 チャーリー国王が言った代償が確実に実行されるなら、アポローン神は私よりもそちらを選ぶでしょうね。

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