第4話
「さっさとこんな国からは出よう。
さあ、こちらへ、聖女ソフィア」
野獣王太子アーサー殿下が、エスコートしようと手を差し伸べてくださいます。
これは素直にエスコートしてもらうしかありませんね。
初めての国に行くのは、少しだけ不安ですが、しかたありません。
一瞬、王太子から解放され自由になれると夢見ましたが、夢は夢ですね。
私は野獣王太子にエスコートされ、急いで王宮から、いえ、この国から逃げ出そうとしました。
さすがにチャーリー国王にも体面がありますから、王宮や王城内で、正規兵を使って襲ってくるとは思いません。
ですが、王都を出た途端、犯罪者を使って襲ってくるでしょう。
野獣王太子の同じ考えなのか、身分に応じて王城内や王城外で待機していた、随行の家臣達と合流して、急いで王都を出ようとしました。
しかし、シャノン王家が質実剛健なのか、野獣王太子の性格なのか、他の国の馬車とは全く違います。
他の国の馬車が、爵位に応じて金銀財宝で飾り付け、鮮やかな色彩なのに対して、シャノン王家の馬車は夜戦を想定しているのか暗褐色のくすんだ色になっています。
「ご不自由をかけて申し訳ないのですが、私の随行員には女性がいないので、聖女ソフィアの評判を穢さないように、お一人で馬車に乗ってください。
襲撃があれば、少々騒がしくなると思いますが、聖女ソフィアには指一本触れさせませんので、安心して馬車の中にいてください」
「分かりました。
アーサー王太子殿下の指示がない限り、決して馬車を出ません」
凄い馬がいます!
馬ではなく、何か別の巨大な生き物を見ているようです。
身長二二〇センチの野獣王太子が、完全装備で乗っているので、恐ろしく重いはずなのに、巨大な真っ黒な馬はビクともしていません。
野獣王太子は厚みのある真銀製板金鎧を装備し、右手には生れて初めて見る巨大な戦斧を持ち、同じく生れて初めて見る巨大な斬馬刀を背負っておられます。
他にも長剣を腰に佩いておられます。
他にも長弓と矢筒を鞍に装備されています。
いえ、それ以前に、馬自体が真銀製の馬鎧を装備しているのです!
「殺せ!
皆殺しにしろ!
金も装備も奪った者のもんだ!
真銀製の装備を奪えば一生遊んで暮らせるぞ!」
王都を出た途端、予想通り襲撃されました。
声を聞く限り、盗賊団のようですが、正規軍が偽装している可能性もあります。
普通なら少しは不安になるのでしょうが、野獣王太子の威容と、強大な愛馬の迫力を感じた後では、なんの不安もありません。
問題はいつ野獣王太子と分かれるかですね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます