第4話

 国王はコナー伯父さんに命じたのです。

 アイラを処刑することはならんと!

 アイラがグレイスを殺した証拠はないと。

 私の顔を酸で焼いた証拠もないと。

 犯人は既に処刑されていると。

 幼い私の証言は信用できないと!


 国王がそう断じた以上、伯父さんは家名断絶を覚悟に戦うしかありません。

 レオナルド様も逆らう事は出来ません。

 伯父さんも私も死を覚悟しました。

 ですが、この状況でも、レオナルド様は救いの手を差し伸べてくださったのです!


「国王陛下の決定は絶対です。

 間違いなどありません。

 今回も件も正しい裁きが行われました。

 ただ私はウィンターレン公爵とラングストン侯爵が大嫌いです。

 アイラという名前を聞くだけで虫唾が走ります。

 私は彼らの参加している舞踏会のも晩餐会にもサロンにも参加しません。

 私が彼らを好きになる事は終生ありません。

 私と彼らを同時に招待する者も終生嫌いになるでしょう」


 勢いづいていたウィンターレン公爵とラングストン侯爵ですが、レオナルド様の言葉に打ちのめされました。

 国王陛下の決定にもかかわらず、事実上の絶縁宣言です。

 代替わりすれば確実に潰されます。

 他の貴族達の眼も恐ろしく厳しくなっています。

 アイラが国王やローワンと通じて国政や裁判に不正を働いたというのは、次に自分達が同じ目にあわされるのではないかという、疑心暗鬼を生んだのです。


 それでもアイラはしぶとく交渉しました。

 彼女の強みは、私を人質にしている事です。

 母上を殺し私の顔を酸で焼くという残虐非道を、平気でやるという事実です。

 これが伯父上の交渉を弱気にさせました。

 妹の忘れ形見である私を、生きて取り返したいという弱みを突かれたのです。


 アイラは処刑を免れ、修道院送りとなりました。

 私はウィンターレン公爵家を出て、伯父さんのペンブルック侯爵家で育てられることになりました。

 でも地位はウィンターレン公爵令嬢のままです。

 母が嫁入りの時に持参した金銀財宝と台所領は私に返還される事になりました。

 賠償金として持参金と台所領の四倍が、ウィンターレン公爵家とラングストン侯爵家から、私に支払われることになりました。


 ですが国王の顔を立てなければなりません。

 国王が下した裁定を否定するわけにはいきません。

 だからアイラが行ったわけではないが、義母なのに子供の私を護れなかった責任を取り、賠償するという形がとられました。

 それに加え伯父さんには、使った戦費の倍が賠償金として支払われました。


 私は虎口を脱して安心して暮らせるようになりました。

 賠償金と台所領で何不自由ない生活ができるようになりました。

 伯父さんも多額の賠償金で領地経営が楽になったそうです。

 ですが、そのために、レオナルド様は恨まれてしまったのです。

 今回の冤罪追放事件は、本当に私のせいで起こったと言えるのです。

 レオナルド様が私を庇い続けてくださったことが、事件の原因なのです。

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