第7話

 完成した呪いは、間違えることなくアンナの所に飛んでいきました。

 間違えないように、私の眼となり耳となり、全てを伝えてくれます。

 なんとも便利な呪いです。

 私の呪いの横には、ガブリエル様の使い魔がいます。

 私の呪いが間違いを起こさないように、見張ってくれているのでしょう。


 そうしてくださるのは、私としても安心できます。

 無関係な者まで私の呪いで傷ついてほしくないのです。

 なんて思っています。

 信じられない事ですが、他人を思いやることができるようになっています。

 恋とは素晴らしいです!

 人をここまで変えてくれるのですね。


「ヒィィィィ!

 やめて、やめてください!

 わたしが、私が悪かったです!

 このとおり、この通りです!

 公爵家はローズに譲ります!

 王太子妃の地位も差し上げます!

 だから命ばかりは助けてください!

 もう、もう二度と逆らいませんからぁぁぁぁ!」


 嘘です。

 真っ赤な嘘です!

 今も助かった後の陰謀を考えています。

 私を陥れる方法を考えているのです。

 全てが分かります。

 全てが分かるように、ガブリエル様が術式を組んでくださったのです。


 その術式が、私の姿を再現してくれています。

 だからこそアンナはここまで恐れているのです。

 私の魔力には気をつけていても、魔術には対処していなかったのです。

 私を魔力と知識だけは持っているものの、実際に魔術としては使えない、出来損ないだと思っていたようです。


 確かにこれほどの魔術はしりませんでしたし、使えませんでした。

 ですがリュカの知識にある魔法は使えたのです。

 それを使わないでいたのは、リュカの想いを大切にしたからです。

 人殺しにならないでくれ。

 優しい娘に育ってくれと、リュカが願っていたからです。

 ですがもう限界です!


「おのれバケモノ!

 バケモノにマルタン公爵家を好き勝手にさせん!

 マルタン公爵家は人間のモノだ!

 我ら家臣一同が守ってきたのだ!

 ご先祖様の働きで守られてきたのだ!

 平民の尻軽女の娘などに渡してなるモノか!」


 ブチ!


 怒りで、堪忍袋の緒が切れました。

 幻聴かもしれませんが、確かにその音が聞こえました。

 その音と共に、呪いが吹き荒れました。

 その場の空気が限界まで集められ、炎に転じたのです。

 怒りの炎です!


 無数の炎が、私に敵意を持つ者。

 過去に私を虐めた者。

 私を口汚く罵った者。

 表面的な記憶に残っていなくても、深層心理、深層記憶に残っている者まで焼き殺すのですが、即死させたりはしません。

 指先から四肢へと、徐々に激痛を与えつつ焼き殺すのです。


 アンナに対しては、最初に顔を焼きました。

 我ながら陰湿なのですが、眼を傷つけないように惨い火傷を負わせたのです。

 さらにその顔を鏡に映して見せつけ絶望させてから殺したのです。


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