第4話

「何の目的で秘宝を盗もうとしているの?

 本当に秘宝があると思っているの。

 秘宝が本当になるのなら、この国がこんなに力を失うはずがないのよ。

 秘宝がないからこそ、この国はここまで傾いたのよ」


「確かにね。

 俺もそう思っていたさ。

 あんたが産まれるまではね!

 だが秘宝の乙女、あんたが産まれてからこの国は変わった。

 確かに領地は全く広がっていない。

 他国に攻め込んで勝ったわけでもない。

 だが、乙女の力で国力が十倍になっている。

 兵力や生産力が十倍になったわけではないが、俺達の仲間内での評価は十倍だ!

 そこで俺は考えた。

 秘宝は使うには条件があるんじゃないかとね。

 今までのファルン王家では使えなかったが、あんたが産まれてから使えるようになったという事は、人間の能力による制限があるんだとね!」


 困りました!

 完全な勘違いです!

 この国が急激に力を持ったのは私が生き戻れたからで、秘宝の力ではありません!

 ですが普通に考えれば、この盗賊の言う通りです。

 この国の力を増す事にだけに目が向いていて、その事を見落としていました。

 他にもこの視点でモノを見れる者は、数多くいるでしょう。

 国を舵取りを担うようなものなら、絶対に感づいているはずです。

 危険極まりないです!


「そう言う視点があったのですね。

 全く気が付きませんでした。

 それでは、貴男は私の才能と努力を認めてくれていないのですね」


「認めていない訳じゃないよ。

 あんたには今までのファルン王家の人間にない何かがあるのだろう。

 俺が知りたいのは、それがファルン王家の人間固有のモノなのか、万人に可能性があるモノなのかなのさ。

 それを確かめるために、秘宝を手に入れたいのさ」


「それは困りましたね。

 貴男の話が嘘偽りでないのなら、我が国にとってなくてはならない秘宝を、単に知識欲だけで盗もうとしているように聞こえます。

 それでは家臣の命と引き換えに渡せるはずがないでしょ?

 貴男が人質にとっているアーダにも、父もいれば母もいるのです。

 家族の命と生活を護るためには、秘宝を失う訳にはいきません。

 アーダが自分が助かるための秘宝を渡す事を望むと思っているのですか?

 アーダはそのような卑怯者ではありませんよ。

 それにそれでは貴男に何の得もないではありませんか?

 アーダを解放しなさい。

 アーダを解放したら見逃してあげます」


「俺の得だって?

 そんなモノ必要ないさ。

 確かに金はいいもんさ。

 美味しいモンを喰っていい女を抱く、素晴らしい人生さ。

 だがそれよりも、この世の不思議を知るコトの勝るモノはないのさ!」

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