第3話
「何者ですか!
ここを秘宝の乙女の寝室と知って押し入ったのですか?!」
「ヒュゥゥゥ!
よくぞ気が付きましたね!
俺の隠形に気が付いたのは乙女が初めてですよ」
盗賊でしょうか?
その割には見つかったのに悪気もなく堂々としています。
居直って私に襲い掛かる様子もありません。
俗に義賊と呼ばれる者でしょうか?
ですが私の評判はいいはずです。
義賊ならば盗みに入るのを躊躇するでしょう。
「義賊が私から物を盗めば名声を落としますから、義賊でないようですね。
ですが刃傷沙汰は好きではないようですね。
見逃してあげるから出ていきなさいと言ったらどうしますか?」
「確かに刃傷沙汰は嫌いですよ。
嫌いですが、欲しいモノのためなら断じて行う覚悟もあるんですよ。
どうですかねぇ。
素直に出して頂けませんかねぇ」
私は気が付きましたが、盗賊は気が付いてるのでしょうか?
「おっと、あぶねぇ!
うら若いお嬢さんが剣を振り回すもんじゃありませんよ」
「黙れ慮外者!
乙女の寝所に押し入って生きて帰れると思うな!」
私を護る姫騎士の一騎アーダが、悪鬼のような表情で盗賊に襲いかかります。
控室から一気に飛びだして盗賊を斬り捨てようとしましたが、事前に気付かれて避けられてしまっています。
悪鬼のような表情が更に険しくなってしまいました。
自分が盗賊に眠らされた屈辱に加え、剣を避けられた不名誉が加わったのですから、それもしかたがないのかもしれません。
私も眠り薬を嗅がされたのでしょうか?
前世で私から自白を引き出そうとしたアルドス、色々な薬物も使用しました。
その時の経験から言えば、眠り薬が使われた感じはありません。
さっきの隠形発言を考えれば、私には使わなかったのでしょう。
「乙女!」
「おのれ!」
「逃げられると思うなよ!」
三騎の姫騎士が寝室に飛び込んで来てくれました。
めいめい剣を手にして臨戦態勢です。
他の姫騎士も直に駆けつけてきてくれるでしょう。
盗賊はどうするつもりでしょうか?
「いい家臣を召し抱えていますね、さすが評判の秘宝の乙女ですね。
ですが家臣のために秘宝を差し出す事はできますか?
私が秘宝を差し出さなかったらこの者を殺すといったらどうします?」
一瞬でアーダを確保してしまいました。
アーダは味方が入って来た時に一瞬隙を見せてしまい、凄腕盗賊に関節を極められてしまったようです。
ですが、眼は死んでいませんね。
アーダの眼は、自分のために秘宝を奪われるのは耐えられないと訴えています。
まあ、元々存在していない秘宝ですから、渡す事はできないのですが、嘘やハッタリで渡すそぶりは見せない方がいいですね。
そんな事をすれば、アーダは自害してしまいます。
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