第14話
「ー…お兄ちゃん?」
可愛らしい声がしたと共に、小学生低学年くらいの女の子が現れた。
奥の扉から現れたその子は、トタトタと海夏君の足元まで来ると、海夏君に隠れながらふわりを大きな瞳でじーっと見てきた。
「お姉ぇちゃん、だぁれ?」
奈都美さんのオレンジオパールの瞳とは違い、少し薄い琥珀色の瞳、海夏君と同じネーブルスイエローの髪を2つくぐりにしていた。
「初めまして。あたし、ふわりって言うの。妹の柚ちゃん……だよね?」
あたしは柚ちゃんと同じ目線に合わせながら言った。
コクリと小さく頷く。
「柚ちゃだよ」
「柚は小1成り立てだよな?」
「そうだよ!柚ちゃ小1」
そうなんだー…それにしても柚ちゃん細い。そして小さい。
しっかりと食事が取れていないのかな。
学校帰りにいつも見る柚ちゃんと同じ年頃の子とは全然体型が違がうように見える。手を強く握ればポッキリと折れてしまいそうだ。
「ふわちゃ、柚ちゃと遊んで!」
いつの間にかあたしの手を掴んでいた。
「「え?!」」
ふわりと海夏の声が重なった。
海夏君が首を横に振る。
「柚、それはー…駄目だ」
琥珀色の瞳が少し揺らぎ、海夏君を見上げる。
「どうしてぇ……?」
ふわりの手をギュッと握りしめながら。
あたしは気づいた。
柚ちゃんの服の裾から覗いた見たことがある傷があることに。
――遊んであげたい。
「柚ちゃん。お姉ちゃんと遊ぼっか」
「本当に!?遊んでくれるの!?」
パァアアと花が咲く様に笑うと家の中に「こっちだよ」と手を引いて招き入れる。
海夏君が慌ててあたしを止めようとする。
「ふわり……お前分かってるのか!?」
「ごめん海夏君……。でもあたし、柚ちゃんと遊びたい」
数秒悩み唸った末、海夏君は渋々承諾。
海夏君も柚ちゃんが中々、人と遊べないことを知っていた。
「ちょっとだけ……ちょっとだけ……柚と遊んでくれないか」
「もちろん」
ふわりは奥の扉を開けてしまった。
奈都美さんの頼みは遊んでからでいいと。
後悔するとも知らずにー…。
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