第9話


 真白とふわりが言い争っていたそこに現れたのは肩を組み合った龍と海夏だった。以前のように険悪なムードはない、それどころか龍の声には元気〜元気〜と妖精が宿って見えた。

「龍!……と、海夏?!どうして二人が一緒に??あんなに喧嘩してたのに」

どういうことだろうと思いながら何度も頷く。

「はぁ?そんなんいつの話だよ。俺らの仲でそんなに引きずらねぇよ」

 なぁ?と海夏に同意を求めた。

「そーだよな!俺と龍の仲だから。もし龍が小学生みたいに縁を切るぷんぷんなんてなってたらどーしようとか思ってねぇから」

「おい、お前そんな事思ってたのかよ?!!」

 真白が訳わかんないと溜息をついた。

「これが男の絆なのかな?いいね男の絆」

「そういう問題じゃないのふわり」

 龍が海夏の髪を鷲掴みにぐしゃぐしゃにしている。二人共その顔は楽しそうでふわりも楽しくなってきた。

「キャー!!ふわり何するの?!!」

 真白の髪の毛もワシャワシャにすると何十倍にもなって返ってきた。

 忘れてた懐かしい感じがして、また前みたいに戻れて嬉しく思った。



 最後の授業が終わり挨拶をし下校時間。

 いつも通り真白が鞄を持って私の席にやって来た。

「ふわり帰ろー。ほら龍も早く早く」

「てめぇに言われたら終わりだよ。終わり」

 龍も直ぐに片手に鞄を持ちもう頭で真白をごついた。

 痛そうに真白が少し赤くなった額を両手で抑える。

「ふわり、こいつ放っといて帰ろうぜ」

「レディーって言葉知ってる?」

 ふわりは本当に心配そうに龍に言った。

「失礼過ぎねぇか?!!少なくとも俺はレディーって言葉知ってるし!」

「真白もちゃんとレディーなんだから、レディーには優しく。じゃないと龍、せっかく思ってくれてる人もそのうちいなくなるよー?」

「はぁ?誰だよそいつ。俺はー…俺にとって、レディーは1人なんだよ」

 おや。おやおやおや。真白両想いなんじゃ?

 だって今こんなに真剣な顔をしてあたしに宣言してる龍初めて見た気がするー…。

 その瞳には強い意志、熱い視線、本当に思っているその子だけが特別なんだ。とでも言われているみたいで、思わず息を呑んだ。でも待って待って。

 それを言う相手、目線はちゃんとその子にしてあげなきゃ。親友のあたしに言ってる場合じゃないからね。

 龍の背後にいた真白にグッと親指を立てウインクした。告白、頑張ってね。

「ましー…ろ?」

 その表情は困惑、驚き、どれも1つだけで表すことの出来ない。それどころか悲しみがチラついては喜んでいいの?というような込み上げてくる物を抑え目は泣きそうになっていた。

 え、何で?どうしてそんな表情をしているの?

 話題を変えたほうが良いかも。

「そ、そういえば海夏君は?今日からまた一緒に帰るんだよね??」

「あーなんかそれが、あいつチャイムがなった瞬間よるとこあんのか急いで教室から出てったんだよなぁ」

 家は同じなのに、一緒に帰らずに寄り道?いつもどこかに行くときは一言あったのにー…。

 何故か胸騒ぎがした。あたしの考え過ぎかもしれない。この前の海夏君の体の傷を見たせいかもしれない。

「実は彼女がいて、デートだったりして」

 龍の言葉のせいではない、ないけど気になる……。

「ごめん。あたし用事が出来たから今日は二人で帰って!」

 ふわりは二人を置いて教室を飛び出した。

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