リベンジバレット
「念仏を唱えろ。と言いたいところ
だが、お前らには別文化だったな」
闇に足跡をつける。
逢魔ヶ刻に悪魔が来たりて首を捥ぐ。
「出来損ないの神にでも祈れ、ハリボテだけの偽教会でなぁ!」
宣戦布告、教会のバラ窓を撃ち抜きキリストの額に風穴を開ける。はっきりと見てとれる神への冒涜。
「何者だ?
外を見張れ!」「はい!」
最早信者と成り果てた教徒達が制裁を与えようと一斉に外へ飛び出した。
「髪も清めず警戒もせず、死ににくるとはね。祈りは届かなかったか?」
「お前、あの時の!」
「へぇ..覚えてる奴もいるんだねぇ。
光栄どころか反吐が出るよ!」
神に仕えたところで己の死相は見えないようだ。死を自覚するよりも早く弾丸を撃ち込まれ、供物と成り果てた。
「教えといてやろう。
仏ではその辺は第三の目、松果体って奴で万物を見通すらしいのさ」
合掌をせずとも彼等は天に召された事であろう。キリストと共に。
「ま、潰したら意味はないのだが」
「神だの鬼だのに興味は無い。
狙うは大将首、無に帰れ貧乏神が」
真っ向から銃をむけるのは殺し屋の流儀に反する愚行。しかし相手は希代の詐欺師、騙したところで騙される。
「..おや久し振りだね、名は確か」
「思い出さなくていい。
死神の名前なんかいらないだろ?」
小さい頃と比べると随分老けた。気苦労なんて何も無い筈のペテン師の豆狸が、老いる程平然と生きている。
「お前がこの世にいるのって、どう考えてもおかしくはないか?」
「..なんだ、不服か。
お前の両親は神の餌になったのだ、反発し意に背いたからな!」
「バンビの父親は」
「バンビ?
..ああ、あの酒屋のガキか。あの親父も馬鹿者だ、朝早くに酒を飲むから店を開けろと言ったら断りやがった」
バーの開店時間は11時から、早朝の押し入りはどう考えても時間外の横暴な屁理屈だ。
「それも神のせいか?」
「あれは違う、ただの憂さ晴らしだ。
やり過ぎたとは思ったが死んだのか、あの汚いクソ親父!」
詫びる素振りも無く腹を抱えて笑う神父の瞳を一閃の輝きが穿ち貫く。
「ぐあっ!なんだこれぇ!」
「眼なんて片方あれば充分だ。」
「くぅっ、アイスピック⁉︎
許さねぇぞクソ女!かかれ!」
聖歌隊席から、黒光りした脅威が連射される。教徒は魂を失ったようだ。
「まだ残ってたのか、雑魚共」
鉛玉がプロを狙っているとは愚の骨頂
目を瞑っていても避けられる。正しくは目を瞑っていても〝撃ち込める〟。
「数打ちゃ当たるっていうのはなぁ!
把握した上であてる事を言うんだよ」
「ケダモノが..!」
「なぁキリスト様、不届き者は死んでいいよな。宗派なんて関係ねぇっ!」
酒で酔わずに彼女をハイにさせるのは殺しが盛大に爆散したときの瞬間的な快楽の一時のみ。
「殺しは稼業だって言うけどな?
私は趣味でやってんだよ。当然、依頼を受けた相手だけで正当化させているけどなぁっ!」
酔った拍子には即弾速攻が砕け弾を無駄に使用する。腕、肩、膝と痛めつけシリンダーを取り掛え二周目へ。
「待て!わかった!いくら欲しい?」
聞く耳を持たない、復讐心などどこ吹く風で喜びを謳歌しては弾を込める。
「まだ死ぬなよ?
せめてシリンダー二つは使い切れ!」
手元に一ミリのズレは無く標的の柔らかい皮膚を断ち切っては貫く。一度憎しみを込めた相手なら容赦を取らず幾らでも的にする事ができる。
「ぜぇ、はぁ...はぁ、はぁ..!」
「なんだ終わりかよ?
なんだか突然冷めちまったなぁ..」
「貴様には..罰が下るっ!
必ず...必ずその身に後悔をするぞ!」
「するとしても相手はお前じゃない。
私は充分楽しんだ、あとはアイツの思いを叶えてやるとするかね。」
教会の窓、壁、ガラス、叩きこめるだけの銃弾を撃ち込んで仕上げに四方の柱を撃ち壊す。
「な、何をしてる..?
おい!生き埋めにするつもりか!」
「それはお前次第だ、悪運が強い事を祈るんだな。得意だろ?」
注文は〝跡形も残さず原型を留めず〟
今夜は朝まで、オーナーと共に高い酒を飲み明かすのだろう。
➖➖➖➖
「あのときの正式な依頼主は誰だっ
たのかねぇ..。余り覚えて無いが」
心を失った後の殺しの仕事は何も見当たらない虚無の空間を悪戯に撃ち抜いているような感覚に陥った。
「それもそろそろ終わりだ..退屈という感情すら失っているが、同時に取り戻す事が出来るだろうか?」
漁の街のボンゼイとは真逆で残っているのは技術のみ。弾を込め撃つ、熟練された暗部の
「結局のところ色々な街を巡ったが、バンビの出す酒より美味い酒は無かったな。親父の腕は伊達じゃない、初めて顔を見たときはもう死んでたがな」
安息の地、西の都、願いの叶う場所
三者三様別の道なりと解釈で無くしたものを取り戻すべく走り出し、遂に明確は道標を得た。
場所はホペイル・ベガダルヒア
進むべき歩みを進むもうと一歩を踏んだ各々に訪れたのは、還される体、部位、それらの一部分よりも、突き放す〝二発目の悲劇〟
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