ヒントなし、後先不明。

 負の連鎖は執拗に続く。

望まないまま汲み取られ、気が付けば出口を失っている。


「人は無し、物も無し、家は潰れ光は消えている...なんだってこんなにハズレを引くんだ?」

 奴隷の街の次は荒廃した街、廃れ続きで気分は悪いが殺し屋にとっては楽な場所だ。

「標的がいないっていうのも久し振りだね、住みたくは無いが。」

中を粗方探ったが、電気や水は使える食料もあるが安全性はわからない。

「火も使えるか、仕方ない。

面倒だけどやろうかね」

 酒は常に持っている。相棒という意味合いもあるが時には毒を消す劇薬になる。砂漠で獲ったサソリを唐揚げにした事もあった。毒気は大概火を通せば消える、勝手にそう彼女は思ってる

「この魚少し腐ってるな。

まぁいいか、モノや男を顔で見る時代は終わった。確実にね」

性格の有無は分からないが好きなタイプは〝殺しても死なない男〟だ。


「うん、美味い。」

焼き上げて目についた調味料を振りかけただけのまかない以下の粗悪品も腹を満たすには充分な味を誇る。

「前の場所みたいに汚い手紙でも無いものか、探すしかないか」

表面的に周った家屋をもう一度まわる

殆どが間抜けの殻であり廃墟、薄暗く目ぼしいものは見つからないが何も無いとも容易に言い切れない。

「ん、これは...」


必要な材料

サバ一切れ

味噌(お好みで)

みりん、醤油、砂糖etc..


「有難い、貰っておくよ」

主婦の心強い知恵を手に入れた。比較的作りやすいメニューで安堵の思いだ

「こんなところか..」

 一家二家と巡り収穫を得ず期待も既に薄れた形で次々と巡る。連なる住宅を五つ超えた辺りで退屈が我慢を過ぎ、限界という境地に達する。

「次で最後にしよう、仮に残りの家に手掛かりがあろうと先に行く」

終わりという線引きをして家屋の中へ

然程変わらず薄暗く物は少ない。


「...二階に続くのか」

〝どうせ何も無いだろう〟と惰性で階段を登り一応の確認をしにいく。

「懐中電灯を持っておくんだったな、まるで何も見えない」

 視界を消され手探りで部屋を漁ると久々に変わった手触りのモノに指が触れる。

「なんだこれは..?」

足元には硬い材質のモノが触れ、改めて指で確認するとベッドの外枠である事がなんとなく分かる。

「ベッドの脇、さっきのは電気スタンドか。街のブレーカーを上げておいて良かったな。」

スイッチはレトロは紐引きタイプ、暗い部屋でも捉えて引けば直ぐに輝く。


「ほらどうだ?

これですっかりおねんね部屋だろう」

思っていたより部屋が汚い。子供の部屋だろうか、ならば情報は望めない。

「引き出しとは安易だな、流石子供」

電気スタンドの置かれた棚の引き出しを引くと中にはライターが一本のみ、確かに安易だ。

「タバコは吸わない、子供なら尚更」

引き出しは二つあり片方はライター、ならば隣り合うもう片方は...。


「手紙か..これまた安易、読めと?」

丁寧に封筒に閉じられいかにも手紙を気取っている紙切れは偉そうに読まれる事を望んでいる。

「..読んでやるとしようか」

封筒を開け、文字を追いかける。


   お父さんへ

 いつもお仕事おつかれさま。帰ってくるのはおそいけど、ぼくはさびしくないよ。だけどさいきん、お母さんのようすがヘンなんだ。ぼくがお手紙を書くといつも破いてすてちゃう。これもきっとすてられちゃうから僕のおへやにしまっておくね。帰ったらよんで

そのときは


「……」

手紙は途中で終わっていた。封筒が一度開けられている形跡は無かったので宛先にあたる〝お父さん〟も読んではいないだろう。

「汚い字だな、部屋と同じだ」

ライターに火を灯し、手紙を燃やして部屋へ放る。より一層明るくなった部屋は団らんの笑い声のように音を立てて騒いで喚き散らしている。

「おっと夜か、気が付かなかった」

家よりも暗い空が光に慣れた眼を再び鎮めた。


「うっ..」「なんだ」

空と同じ色の人が周りを囲み鈍く唸る

「あんたが言ってた母さんか。

確かに様子はおかしいね」

 だらだらとよだれを垂らしまるで獣のようにこちらを伺う女性の姿はとてもじゃないが人の親とは言えない

「結局人は撃つんだね。

悪いが簡単に済ませるよ?」

数が多けれど狙うは脳幹、囲まれたのなら全方位へ向き直り引き金を引けばそれでいい。


「百発百中、数はかぞえていないけどざっと一周分の大廻転だ」

闇夜に紛れ的を射る。

避けられなければ外れない、人を殺す為だけの隠し芸。

「まったく、芸が無くて困るよ

..シンプルじゃ客が減る一方だ。つまらない」

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