二人で一つ

  「そのリボン邪魔じゃない?」

「そうかな、結構良いと思うけど。」

 彼女たちは正反対だったが仲は良かった。顔は余り似てないが、顔以外は

      〝瓜一つ〟


「よし、行こっか!」

「今日からかぁ〜。

いつ到着するのかな?」

 小さな頃から一緒に居た、何処に行くのもおんなじで両親が共に単身赴任でも寂しいと感じた事は無かった。

「この本、サペティさんは返さなくてもいいって言ってくれたけど」

「必ず返しにこよう。図書館の本だからね、絶対に」

〝秘密の場所〟についてはその本に書いてあった。


「欲しいものを願えば与えられる場所、家族が欲しいと長年言っていた牧場の農夫に妻が出来こどもが産まれ、貧乏だった子はお金持ちになったりとそこでは願いが叶います。」

 あからさまな表記だが嘘には感じなかった。彼女らは人一倍それを見抜く力があるからだ。


「私たちも叶うかな?」

「大丈夫、心配しないで。」

 姉ピリカに妹シャン、勘が良いのはピリカの方。シャンはわかっても口にはしない、姉が絶えず言うのをわかっているから。

「お父さんもお母さんも帰ってくればいいけど、それは期待できないかな」

「そうだね...。」

〝この身体〟になってから、極端に忙しくするようになった。家にいれない理由を作るようにできるだけ遠くに距離を空けて。

「よし、それじゃ行こ?

ロンさんにできるだけ食べ物貰って」

「パン屋さんだから捨てちゃうパンばっかりだけどね。」


首が二つに身が一つ

彼女の無くしたものは心臓。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る