第2話 甘口の理由
放課後、ゆうちゃんは
「ゆうちゃん、いらっしゃい」
好子ちゃんが、ゆうちゃんを笑顔で迎えました。
「お邪魔します」
ゆうちゃんが好子ちゃんの家に入ると、そこには……。
「あ、好介くん」
「お、おうっ」
「な~に隠れてんのよ、あんた。素直にお出迎えすれば良いのに!」
「う、うるせぇっ!」
好子ちゃんと好介くんは、双子の姉弟なのです。ゆうちゃんと二人は仲良しの、ご近所さんなのです。よく三人で遊んでいます。
「ゆうちゃん、これ食べてね」
「いただきます」
好子ちゃんが出してくれたおやつを、ゆうちゃんは食べ始めました。
「な、何だよ。お前、辛いもの食べられるのかよ」
おいしそうに辛いお煎餅を食べるゆうちゃんに、好介くんは驚いています。それを見て、好子ちゃんはニヤリ。
「ゆうちゃん、好介ってば帰ってから『ゆうは辛いの苦手な、お子ちゃま~。辛いの好きなオレ大人!』って超うるさいのよー。こいつ、本っ当に何も知らないんだから……幼馴染みなのに」
「何だとっ!」
「ゆうちゃんはねぇ……辛いものが大好きなの。でも弟の、たーくんが小さいから辛いカレーが家では出されないの!」
「あ……」
好介くんは「しまった」という表情で、ゆうちゃんを見ました。そして言いました。
「……そういうことなら早く言えよな。オレ、分からなかったから……あのとき笑っちまったじゃねーか。ちゃんと説明しろよ」
「うん、そうだね。ごめんなさい」
「コラーッ!」
ゆうちゃんが好介くんに謝った直後、好子ちゃんが怒り出しました。
「好介! ゆうちゃんに対して何なのよ、その態度! あんた、この前カゼひいたときに薬が苦くて嫌だって泣いたじゃない!」
「わーっ、それを言うな!」
好介くんは焦りました。賑やかな兄妹のやりとりを見て、ゆうちゃんは幸せそうに笑っています。すると、好子ちゃんが言いました。
「本当の大人は、ゆうちゃんよ。散々ひどいことを言われても、こうやって笑って流しているんだから! 辛いものが平気なだけで自慢する奴の方が、お子ちゃまじゃないの! 何が大人よ!」
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