本当の大人

卯野ましろ

第1話 給食のカレー

 今日の給食は、みんなが大好きなあの料理です。


「わーい! カレーだ!」


 カレーのおかげで、いつもに増して教室はパアッと明るくなっています。


「いただきまーす!」


 みんな楽しそうにカレーを食べています。おかわりする子も、たくさんいます。


「学校のカレーって、どうやって作ったの? って思うくらい、おいしいよね!」

「本当にねー。家では真似できないような味だよね」


 あるグループでは、カレーの話題で盛り上がっています。


「でもさ、何か少~しだけ物足りない気もするんだよな~」


 好介こうすけくんが言うと、グループのみんなは首をかしげています。


「何で?」

「オレ、辛いもの大好きだからさ……もうちょっと辛くしてくれたら最高だなー」

「あ、それ分かるかも」

「うんうん」


 同じグループの子たちが共感してくれて、好介くんは嬉しくなりました。


「だよな! やっぱりカレーは辛くなくっちゃ! オレん家のカレーは中辛だぞ~」

「同じ同じ!」

「中辛でーす」

「あ、あのね……」


 好介くんたち三人が元気な声を出す中で、ゆうちゃんが申し訳なさそうに話し始めました。


「私の家は、甘口なんだよね……」

「うっそ、マジで?」


 ゆうちゃんの発言に、いち早く返事をしたのは好介くんです。


「何だよ~。お子ちゃまだなー、お前!」


 好介くんは、あっはっは! と大笑いしています。


「うん、そう。お子ちゃまなの私」


 そう言って、ゆうちゃんも軽く笑いました。二人以外の同じグループの子たちは、何も言えずに食べることに集中していました。

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