第33話 倉庫街へ
「これがあったにゃ!」
小料理屋『狐』に飛び込んできたミケが手に持っている紙片をケインに見せる。
『子供を返してほしくば猫の獣人とハンターの男の二人で倉庫街へ来い』といったことが記載されていた。倉庫街は様々な商会の倉庫が集まった地区である。具体的には記載されていないが恐らくウエイランド商会の倉庫辺りに行けばいいのだろうか…。
やはり口封じにきたか…。しかし相手側はウィニーに執着している。彼が無事では困るくらいのようだ…。なぜ小さい子供相手にここまでするのか…
「ウィニー……。どうして……」
こちらではミケが沈んでいる。最近は笑顔も見せていた。自分に何も話さずにいなくなったことにショックを受けているようだった。ケインはミケの頭に手を置いて口を開いた。
「おそらく孤児院の誰かに呼び出されたんだろう。どんな悪党であってもウィニーの親代わりで長く暮らしていたんだ。おれたちの知らない、なんらかの理由をつけて外に連れ出すことはきっとできるだろう…。例えば家族同然に育った別の孤児。彼らに危機が迫っていて助けられるのはウィニーだけだといって言葉巧みに連れ出すとかな…」
「もしそうなら絶対に許さないにゃ!」
ケインも同感だった。
盗賊を行って世を騒がせるだけなら騎士たちが何とかする。だが子供を巻き込むことは許せない。そしてあいつらは覇王城まで呼び出され『二度とこのようなことがないように貴族家内、商会内に目を配るように(今回は許してやるが次はない)』という落しどころを見つけた筈だ。それすらも反故にする気配を感じる。なぜ終わらせようとしなかったのか…。
「呼びだされたのはおれたち二人だけだな?」
「にゃ!」
ということは相手側は襲撃の際にララを見ていないことになる。ウィニーに加えてケインとミケが今回の件に関わった者と認識しているらしかった。
「相手の目がララまで届いていない。ララにミケの家を見張って貰おう。別動隊が襲撃する可能性がある」
「それでいいにゃ」
「マスター!」
「おう。任せておけララの嬢ちゃんには伝言鳥を飛ばしておく」
「宜しく頼む!」
そう言って店を出ようとするケインの前にふわりとキャリーが姿を見せた。
「ケインさん。今回のこと大人同士の諍いであれば私は何も思うところはありません。しかしあのような小さい子を巻き込むこのような行為は許されるものではありません。王都の怒りに触れしものに正義の裁きを…」
そう言って頭を下げる。頷いたケインはミケを伴い倉庫街へと向かった。
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