第27話 副院長
「ウィニーを保護して頂き感謝します。突然居なくなってしまって心配しておりました」
そう言いながら現れたのは僧服を着た男だった。30代だろうか…。笑顔を浮かべているがケインにはこの笑顔が信用できるものかは確信が持てなかった。
「ウィニー?それがあの子の名前かな?」
「はい。犬の獣人はこの王都には少ない。伺った服装の特徴ですぐ分りました。申し遅れました。私はこのレー二ディア孤児院で副院長をしておりますワイルダーと申します」
ワイルダーと名乗った男にケインも答える。
「ケインだ。B級ハンターをしている」
あえて本名を名乗ったがワイルダーは反応していないように見える。ケインという名前は覇国ではそれほど珍しくはない。ミケを狙ったことは皇太子である自分とは無関係かもしれない。ハンターである自分とは関係あるかもしれないが…。
「それでウィニーはどちらに?」
「おれの仲間が保護しているよ」
「彼の家はここです。こちらで引き取ります。お伺いしても?」
「それは断る」
ワイルダーは笑顔を張り付かせたまま一瞬怪訝な顔をする。
「理由をお伺いしても?」
「あの子は何らかの犯罪に巻き込まれた可能性がある。落ち着いたら王立騎士団で話を聞いてもらうさ」
「では、それをこちらで…」
「悪いがそれはできない。今日はウィニーが住んでいた場所が分かってよかったよ」
何とも言えない表情をするワイルダーを尻目にそれだけ言って踵を返すケイン。
それにしてもレー二ディア家か…。
「まだ父上には話せないな…」
そう呟いたケインはもう一箇所行くべき場所を思いつき足をそちらへ向けた。
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