第26話 孤児院

 ケインは孤児院を前に佇んでいた。特徴的な朱い色の尖塔が見える。恐らくここがキャリーが記憶探索サーチメモリーを使って獣人の少年から読み取った孤児院だろう。


 今日の夜明けまでかけてケインはミケの家に強盗入った者達のアジトで捕まえた3人を問い詰めた。


 強盗の実行犯達は雇われた裏ハンターらしい。犯罪を犯した等の理由でギルドに所属できない自称ハンターということだ。


 身なりの良かった男はケインの尋問にかなり抵抗した。右耳と鼻の頭を切り飛ばされても口を割らなかったが…

「こんな時に手段を選ぶほど優しくはないぞ…」

 手の爪の下に竹串を打ち込まれ四本目には口を割った。


 その口からは目的は店から金目の物を強奪し、

 猫の獣人を拉致することであったことが語られた。


 さらに男に口から、その男の主人の名前が語られたがそれにはケインも驚いた。それと同時にそんな連中がこんな強盗を計画する理由が分からなかった。


 ケインは裏を取ることにし捕まえた3人はミケの家の倉庫に放り込んだ。ミケとララに監視を頼んでおく。


 ララにもこのことはしばらく騎士団には伝えないことを指示しておいた。本当に身なりの良い男が語った主人というものが首謀者ならこの強盗の件をを闇に葬ることも容易い。


 そんなことはさせないと考えるケイン。恐らく相手側は知らないとはいえケインの大切な人々を危険に晒したのだ。


 ここまで大きな相手だと何らかの妥協点を見出すことになるかも知れないことは王族であるケインも承知している。しかし…

「ケイン。これは難しいかもにゃ」

「それでも逃げ得などはさせないさ」


 そんなこともあり先ずは獣人の子について調べることから始めた。キャリーはこの子が孤児院で生活していると言っていた。ということはその孤児院は強盗を行うような組織と繋がりがあることになる。信じたくはないことだった。


 この国の孤児院は貴族の管理下ということになっている。民のために尽くす行為の一つとしてこのような制度が採られているが実際の運営は様々である。当主自ら積極的に関わる場合もあるが運営を他のものに任せる場合もあった。


 さてこの孤児院は…?

 門のところにはレー二ディア孤児院と書かれている。レー二ディア家のことだろうか?レー二ディア家は覇国の最大有力貴族の一つである。先代当主は父王であるゲイルと共に先の戦争で活躍した英雄だ。少し嫌な予感を覚えるケイン。


「ちょっといいですか?」

 入り口に立っている男に話しかける。やはりレー二ディア家管轄の孤児院のようだ。獣人の子の特徴を告げる。男はここで待つように言って慌てるように奥に引っ込んだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る