第21話 近況と物騒な話
ケインが倉庫で戦闘に入る数日前…。
ケインは一人でのクエストを完了しギルドに報告へ来ていた。ちょうど馴染みになったリーネのブースが空いていたので完了の報告をする。
「はい。確かに完了を確認しました。今日はお一人なんですね?」
事情を知っているリーネは楽しそうだ。対するケインはバツが悪そうに答える。
「みんな忙しくてね」
ララはミケと一緒。カールは騎士団の稽古。それぞれに忙しかった。
ミケは酒屋を営んでいる実家で諸々の手続きの準備を進めている。先のファーブル領に出現したダンジョン探索と吸魔草の群生地発見の功績で一代貴族に叙される予定でありその準備がなかなかに大変だった。ララが手伝って頑張っている。
これをもってミケは覇国における巡検士の任に着くことになっていた。巡検士は覇王の直属で国内を見廻る。これはケインの案で、要は外で自由にできる、つまりこれまでと変わらない生活ができるというものだった。これまでのミケのハンターとしての活躍が国益になっていたので国王のゲイルもこれをよしとした。
そして国の巡検士を皇太子が見初めて……というシナリオである。親しい者達には知らされていた。
女同士で話があるとかで近づかせてくれないケインは政務もなく暇だったため一人クエストを受けたのだった。
「それにしても最近は用心棒の依頼が多いのか?」
「はい。不在の店舗などを狙った盗みは最近増加傾向でしたが先日の事件がきっかけで依頼が一気に増えた印象です」
「ちょっと治安が心配だな」
王都を騒がす盗賊団の噂はケインも聞いていた。不在の店舗を狙うということだったのだが数日前に酷い事件がおきていた。
とある商店の一家と用心棒が惨殺される形で見つかったのである。一家は隣人に仕入れのために別の街に行くと告げていたが予定を変更したため賊と鉢合わせたらしい。
用心棒がB級ハンターであったため商会地区の者達は危機感を強めていた。騎士団も捜査にあたっているが今のところ手掛かりはないらしい。
「ケインさんは用心棒は受けないんですね」
「ダンジョン探索以外で一定期間拘束されるクエストは難しくてね。それじゃ行くよ。リーネちゃんも気を付けてね」
「ありがとうございました」
立ち上がるケインをリーネは見送る。
「はー。それにしてもいいなー、ミケさん…」
ケインが去ったブースでリーネはポツリと呟いた。その時、ギルドの共有スペースから苛立った声が聞こえてきた。
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