第2話

「ふぁーあ。死んだなんて何百年ぶりかしら」


 今いる“空間”の外側に、そいつはいきなり現れた。何の予兆もなかった。


「うわっ」


 俺はもちろん驚いた。そいつの顔は、そこで死んでいる女神とそっくりだったからだ。服装は微妙に違ったが、同じ系統だった。


「なんだあんた。双子の姉妹?」

「違いますよ。本人です。転生の女神ですからね。自分で自分を転生させてきたんです」


 なんだ、簡単に生き返れるのか。心配して損した。


「そこに転がってる方は誰にやられたんだ? どうやって?」

「その前に、執務室に入りたいのですけど。中からしか開けられないんです。開けてくれませんか?」

「自分の作った亜空間とかなんじゃないの?」

「そうなんですけど、わたし自身も除外されないようなルールにしてあるんです。そうでないと何かとトラブルになることもあるので」

「ふーん。で、どうすれば開くんだ」

「中にいる存在が、入口よ開け、と念じるだけでいいです」


 ふーん。よし、じゃあ“入口よ開”……まてよ。


「だったら、俺はどうやってここに入ったんだろう。犯人はどこへ消えたんだ?」

「それも含めて、中で説明しますから……とりあえず入れてください」


 ……なんだろう、何か、なんとなく違和感を感じる。


「その前に……何処の異世界でなんて言う魔王がいるところだったっけ、俺の行き先」


 マギファニアとかいう世界で、魔王の名前はカラドラバ。そう聞いた。それは間違いない。確かに覚えている。


「……」

「答えられないの?」

「実は、転生したせいで、少し記憶が曖昧になっておりまして……ほほほ」

「俺も転生したばっかりのはずだけど、記憶はばっちり残ってるよ」

「う」

「なあ、お前、だ? そもそもお前が転生してきたそこの死体本人だなんて、何の根拠も証拠もあるわけじゃないんだよな。お前がそう言っているだけだ」

「ふ……ふふふふふふ」

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