第51話『賢者の石のエリーさん』
「始祖錬金術師さんが作った
《平均、千年から二千年程度です。王都のダンジョンの寿命が千年だったのは使用頻度の高さが原因です。僻地なら二千年程度は稼働します》
「なるほど。始祖錬金術師さんのダンジョン・コアもそろそろ新たしいのに替え時か。俺は物造りのプロじゃないから作れないし……どうしようか」
《人々の生活はダンジョンが生成するアイテムを前提としています。ダンジョンが枯渇すると生活が成り立たなくなります。限られた資源を奪いあうために人と人が争う暗黒の時代が再来する可能性もあります》
「うーん。そんな事態は避けたいな」
《そうですね……》
「だねぇ」
《言い忘れていましたが、いまの私ならレイさんを超位職に進化させることができます。超位職への進化を希望しますか? 金貨10枚いただければ対応可能です》
「超位職への進化? それじゃ一つ頼めるか」
俺は
おそらく
《レイの職業を"錬金術師"から"錬金術師☆"に超位進化させます》
もう少しマシな職業名はなかったんですかねぇ。
職業名は今後も"錬金術師"とだけ答えるからいいんですが。
《この進化によって【☆】付きのアイテムを6つ集める事でその100倍の性能を持つ【★】付きのアイテムを作ることができます》
「面白い能力ではあるけど集めるのはちょっと大変だね。36個の同一アイテム集めないといけないとだから、お金儲けには向かないかもしれない。売り方次第か」
《需要と供給の問題ですね。レイさんの言う通り、王都では過剰に高品質なアイテム現在は王都の民に求められていません。儲ける事が目的なのでしたら工夫が必要でしょう。大丈夫です。うまく知恵を絞れば一儲けできますよ》
「そうだな。王都には天才錬金術師が居る。新商品開発の時は彼女に相談しようか」
《天才錬金術師ですか? 一度お会いしたいものです》
「道具屋の孫娘さんだよ。
《残念です……》
「あのっ。道具屋のおばあちゃんが私の血入りの回復薬を飲んだ時に体が再構築されました。回復薬には肉体を生成する効能があるのかもしれませんっ」
「ダメもとでやるか。
《分かりました》
俺は脚立を使い、
墓石に水をかけるようなイメージだ。
すると、まばゆい光とともにお人形のように美しい金髪の美女が出てきた。
年齢は20代前半といった感じか。
「これが……肉体を持つという感覚。新鮮で面白いです。以後、私のことはエリーとお呼びください」
「おめでとう。エリーさん。この部屋から見る景色と、実際に王都を歩いて見る景色はきっと違うと思いますよ」
「リルルとレイがデートで行ったあのレストランに行ってみたいです」
確かにあそこは旨かった。
「そういえば、エリーさんがダンジョンから外出中の時はこのダンジョンはどうなるのでしょうか?」
「問題ありません。ダンジョン・コアの機能は、他のダンジョン同様に自動稼働モードでもまったく問題なく機能します」
「それじゃあ問題無さそうですね。エリーさんは王都の中で楽しんで下さい」
「はい。王都の街並みをこの体で実際に見て回るのが今から楽しみです」
「王都でお会いしたらその時は、三人で食事にでも行きましょう」
「あたしは、メイド喫茶がおすすめです。メイドさんが頑張って働いているので、見ているだけでも癒やされるとおもいますよっ」
「楽しそうですね! それではお忍びで王都の散歩に行ってきます。もし道ですれ違っても無視しないでくださいね」
「もちろんですっ」
エリーさんが道具屋の孫娘さんに会いに行くことを忘れていないか少し不安だ。
あまりにも忘れているようであれば、その時は指摘しよう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます