第32話『究極の靴と至高の服を作ろう!』
「水龍神の革……しかもこれだけ上物となると是非とも喜んで……と言いたいところだけど、それを裁縫するためには、伝説級の糸と、最硬度の針が必要だわ」
革自体が頑丈だから裁縫するには革に負けない裁縫針が必要っつーことか。
糸は運良くかなりの品質の物を持っているけどな。
「おお。エルフのアンちゃん、裁縫針一式はなら俺がコイツの依頼で使った端材が作る。それで十分だろ。超高純度のアダマンタイト、オリハルコン、ミスリルを合成して作った最高の鋼材で作られた裁縫針だ。お前さんにとってもこれ以上に良いものはねーだろ」
「ええ。それだけ一流の裁縫道具をもらいながら依頼を全うできないくらいなら看板なんてとっくにおろしているは」
「裁ちバサミとか裁縫に必要な道具はチャチャッと作っておいたから持って行けや」
「あとは糸ですねぇ。これだけ素晴らしい革を縫い付けるのに弱い糸では駄目だわね。うーん。どうしたものかしら」
「それならこれはどうですか? "アリアドネの糸" っていう物なのですが」
第7階層の隠し部屋のボス"レジェンダリー・ミノタウルス"が素材としてドロップした物だ。念のためにたくさん集めておいて良かった。品質は最高の"アリアドネの糸☆"だ。
「それは……神話の伝承に記されている伝説の糸? それをどこで? いえいえ、それを冒険者に聞くのは野暮ですね。了解しました。素材は十分です」
ゲットできる場所は初心者用ダンジョンの7階層の隠し部屋なんだけどな。
リルルが敵を倒すときにうっかり壁を蹴ったら見つけたんだ。
でも言ったところで【邪神の寵愛】が無いとミノタウルスしか出ないのだろう。
「服のデザインの件を相談したいのですがよろしいでしょうか? 簡単なラフスケッチはこちらの方で準備させていただきました」
俺は何枚かに分けて描いた冒険者服のイメージ図と靴のイメージ図を渡した。
「これは、とてもよくできたラフスケッチですね。コンセプトは伝わりました。これは、機能的でありながらも女性的な魅力を引き立たせる良い服ですね」
「ありがとうございます。あくまでも素人の作ったラフなので、実際に裁縫する時は参考程度にとどめて下さい。あっ、ただし、ホットパンツの変更はなしで」
「承知しました。必ずしやご期待に添えるものをお作りしましょう。このラフスケッチにない部分で何か希望はありますか?」
「まず服の胸の部分ですね。今の冒険者服は若干胸が抑圧され過ぎています。心肺機能に悪影響を及ぼす可能性があるのでこの部分は多少余裕のある感じでお願いします」
「フフ……胸を強調するデザインにしろということでしょうか?」
「いえ……。あくまでもコンセプトは一般女性冒険者の服です。今までの既製品のように胸元を圧迫するような感じではなく、ほんの少し緩めて欲しいだけです」
「あくまでも、気持ち程度遊びを持たせる感じということですね」
「はい……あくまでもリルルが呼吸をしやすくするための配慮です。その、リルルは一般より大きいので。下品な感じではなく、あくまでも上品な感じでお願いします」
「なるほど……。実際の冒険者からの意見は参考になります。そうです」
「それにあまり露出が多い服の場合はモンスター以外にも人間にも警戒しなければならなくなるので、あくまでも気持ち程度で」
乳揺れ。確かに魅力的である。
かくいう俺もドリ○キャスのソウル○ャリバーのソ○ィーティアの乳揺れに感動した男だ。更にその後はD○Aシリーズ、スパ○ボシリーズの女性キャラカットインと散々楽しんでもきた。F○7のティ○ァのムービーシーンの揺れををり返しCDが擦り切れるほど見返した程の男だ。
だが……俺はついに気づいたのだ。
……至ってしまったのだ。
あえてあまり揺れない。つまり、揺れているのか揺れていないのかが分からない程度の良さというものもあるのだという事に。
ところでだ、乳揺れとは関係ないのだけど、ド○キャスのソウル○ャリバーのソフィー○ィアの人妻属性で性癖こじらせた被害者は多いと思う。
あの北欧少女風の正統派の美形の容姿で更に人妻で二人の子持ちというのは完全に沼だ。ダークサイド面に堕ちた思春期の男性は多かったことだろう。罪深い女性である。
くっ……これが、邪神の瞳の副作用か。恐るべき4Kの世界。
次々と悪しき心が脳内に流れ込んでくる。
制御せねば、闇に飲まれる!
一瞬別ダークサイド世界に意識を奪われていた俺を、
エルフの服飾師が声をかける。
「……えっと、レイさん。目をつむったまま眉間にシワを寄らせて難しい顔をしていますが大丈夫ですか?」
「すみません。よりよい服を作るためのアイディアを考えていました」
「フフ……。レイさん、貴方という人は。何事に対しても真面目で誠実な男性なのですね。あなたのような聖人のような人に会ったのは初めてです。ところで、ホットパンツについては何か意見はありますか?」
「一言で言うなら、ピチッとした方が良いですね。太ももにちょっと肉が食い込む感じの。そんな感じでお願いします。そうすると、攻撃力が高まって戦闘効率が良くなるんです。お願いします。お願いします」
大事なことなので2回お願いしてしまった。
「なるほど。興味深いですね。戦闘効率の問題なら仕方ないですね」
「その通りです。太ももと食い込み。これによって、飛躍的に攻撃力が増すのです。よろしくお願いします!」
「……なるほど。頼まれました。……これは職人としての腕前が問われる一大事業になりそうです!」
「靴の方はいかがしましょうか?」
「ラフスケッチでまとめましたのでこちらをご覧ください。リルルの方から戦闘面での具体的な要望があるそうなので、リルル説明をしてやってくれ」
「キックも戦闘の一部に組み込みたいので、靴底と、つま先と、カカトに鉄のプレートを入れて欲しいですっ!」
「鉄のプレートの件は承知しました。いわゆる安全靴のようなイメージですね。靴のデザインはどんな物が良いですか?」
「足のスネの部分まで保護できるタイプのエンジニアブーツでお願いします」
「ふむ。なるほど。あと他に希望はあるかしら?」
「靴底、つま先、カカトに属性付与ができるようにしてくれると助かります」
「あー。それなら、旦那のコボルトダガーを作る時に余った端材でプレートを作ってやるよ。30分もありゃつくれるわな。アダマンタイト鋼、オリハルコン鋼、ミスリル鋼の合金によって、通常のミスリルの魔力伝導率の15倍だ。更にアダマンタイト鋼の特性で絶対に壊れるってことがねぇからな」
「30分で出来ちゃうのね、凄いわ。それじゃ、プレートはドワーフにお願いするわ。ところで、リルルちゃんは足から魔法を放つ運用を考えているのかしら?」
「いえっ、例えば基礎魔力操作で靴底に雷の属性をエンチャントした状態で敵をキックできたら、かなりのダメージを与えられるかなと思いまして」
【速さ:20】の素質ばかり注目していたが、
リルルの【筋力:20】だ。
超一流の格闘家としての素質も備えているのだったな。
実際、クトゥルー・クラーケの魔核に対して超長距離ジャンプキックを
炸裂させた時は、5メートルの眼球が深く抉れるぐらいの
大ダメージを叩き出していたもんな。
なんか、ライダー○ックっぽくてカッコいいし良いな。
属性を付与すれば更に必殺技感が増して楽しさアップだ。
これはやるしかあるまい。
「そんな感じでお願いします。納期はどれくらい掛かりますか?」
「1週間もあれば余裕で作れますよ。コボルトダガーと一緒に引き取りに来たらいかがかしら?」
「それでは。完全に同じ服を6足と、靴を6足お願いします」
「ところでお代は持っているのかしら? 私の仕事は高いわよ」
「多分十分な金貨を持っていると思います」
「本当は、私の仕事で更に特殊素材での完全なオートクチュールなので金貨5000枚はいただきたいのですが……」
金貨5000枚とかそんな金貨、ねーよ。
オーダーメードでもさすがに5億円とか高すぎるだろ。
というか明らかに俺の容姿みりゃそんな金を持っているように見えないだろ。
石油王でも買えねぇよ。……多分。いや、やっぱ買えるかも。
「"海龍神の革"と"アリアドネの糸"と"コボルトダガーの端材"を全部くれるという条件なら、99%割引のお友達価格で金貨50枚にまけちゃいます!」
発泡酒の糖質99%オフみたいな雑な値付けだな。
まあ、"海龍神の革"と"3種超合金の端材"が目当てといったところか。
「99%オフですか! それじゃあ喜んでお願いします!!」
99%オフでも金貨50枚……500万円か。
よし。ミスリルの剣とマジシャンズ・ロッドを
集めて限界突破させる作業に戻るぞい。
でも99%割引というのも言い値だしなぁ……。
職人の作業価格の相場は本当に分からない。
職人仕事系はどこもそんな物か。
いや、俺はこの人の笑顔を信じよう。
エルフはきっと嘘つかない。
信じる者は救われると言うしね。
完成が楽しみだ。
特に――ホットパンツのな!
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