第23話『究極のコボルトダガーを作ろう!』

 今日は久しぶりのオフ日だ。


 たまには息抜きしないと疲れちゃうからね。

 リルルはのんびり街歩きをするとのこと。

 たまには羽を伸ばさなきゃね。


 俺が一人部屋で何をしているのかと言うと……。

 生理現象の話は割愛だ。

 男なら勇者だって英雄だってモテモテのイケメンでもすることだ。

 健全な精神を維持するためには必要な儀式なのだ。


 俺は悪くねえっ!


 さて、賢者モードに突入した俺の思考力はいつもより上がっている。

 今の俺の脳に雑念はなくまるで凪のように穏やかで静かだ。

 俺はついに明鏡止水の心に達したのかもしれない。


 …… 見えたぞっ! 水のひとしずくっ!



 そんなわけで俺は錬金術の実験に挑戦している。



「まずはっと、……ミスリルの剣☆を分解。ミスリル鋼のみを抽出。うむ、さすがはミスリルの剣☆から抽出したミスリル鋼。この時点でかなりの高純度のミスリルだ。不純物がなく、相当高品質なミスリル鋼だな」


 さてさて、同じ工程を6回繰り返そう。

 ほいほいのほいっと。


 できたぞ。


 これで、ミスリル鋼が6つ。

 それじゃいきますか。



「限界突破っと」



 うむ、問題なく出来た。

 【ミスリル鋼☆】だ。



 念のためにミスリル鋼☆は10個くらい作るか。

 実際はどの程度必要なのかは分からないけど、

 多ければ多いにこしたことはないだろう。



「次はっ……と」



 オリハルコンは7階層の雑魚ドロップで死ぬほど

 入手したから片っ端から合成して行こう。


 あのぴかぴかスライムは経験値たくさんくれるし

 良い敵だったな。たまに狩りにいくか。


 おし【オリハルコン☆】完成っと。

 あまった分は売ろう。


 おばあちゃん高額で買ってくれるかな?

 やはり素材状態だと加工品より売値落ちるのだろうか。



「最後にっと」



 アダマンタイト。これは7階層のボスドロップ品だ。

 1周ごとに1個しか手に入らないから30個しかない。

 これはもったいないから売れないな。


 売却はせずに、大事に取っておこう。

 ほいさ【アダマンタイト鋼☆】完成っと。



 よし。

 【ミスリル鋼☆】 【オリハルコン鋼☆】 【アダマンタイト鋼☆】



 強化に必要な素材は全て揃ったぞ。

 分解したり、くっつけたりとなかなか楽しかったな。

 粘土遊びみたいで好きなんだよな。この作業。


 こういう作業俺好きなのかもな。

 子供の頃にいろんなプラモデルを合体させて遊んだりしてたしな。


 まだ親父が居た時は学○のチャレンジを購読する余裕とかあったから、

 毎月送られてくる工作キットとかも好きだったもんな。


 アリの巣観察キットと、カブトガニ育成キットは楽しかったなぁ。

 こっちでもそういうの作ったら売れないかな?


 スライム育成キットとか子供にウケそうだ。

 今度おばあちゃんに聞いてみよう。




「レイ、何をやっているですか?」



 リルルが俺の部屋に入ってきた。


 ノックをして声をかけていたそうなのだが気づかなかったようだ。

 俺も気づかぬ内にかなりの集中力を使っていたのかもしれない。


 今回は良かったけど、"うっかり"もあるかもしれない。

 今後は部屋には鍵をするのは忘れないようにしよう。うん。



「リルルのコボルトダガーを強化するための鋼材を錬成していたんだ」



「でもでも、コボルトダガーはいまでもすごく強いですよ?」


 リルルは部屋の中に散らばる、色とりどりのピカピカの

 鉄の塊を見ながら不思議そうな顔をしている。



「確かにそうだな。でも、リルルはコボルトダガー以外使いたくないだろ?」



「そうですね。あたしの手にしっくりくるのでこれコボルトダガー以外は使いたくありません……レイからのはじめてのプレゼントでもありますしっ」


 泣けることを言ってくれる。

 俺が作った物を大切にしてくれるのは嬉しい。

 そう考えると、モノ造りの錬金術師の職業は俺に向いていたのかもね。



「でも、いまは初心者用のダンジョンだけど、この初心者用のダンジョンを超えたら新しいダンジョンでより強い武器が見つかる可能性が高い」



「それでも、あたしは……できれば、コボルトダガーを使いたいですっ」



「ふふんっ! そう言ってくれると思ったぞ。今日の俺の錬成はそのための下準備だったというわけだ。これからもリルルが一線で戦えるようにするためにな」



「コボルトダガーずっと使えるんですかっ? どうもありがとうございます!」



「ただ一つ問題が。3種の鋼材を合成するには高度な錬金知識が必要なんだ」



「レイさんほどの、とてつもなくすごい錬金術師でも無理なんですかっ?」



 実は特にとてつもなく凄い錬金術師ではないけどな。

 2種類の素材を合成しかできないし。



「はは。ありがとう。でも無理なんだ」



 すまないな。俺は実は錬金術師としては平凡なんだ。

 日々の稼ぎは冒険者での仕事がメインだからな。

 一日中椅子に座って専業で働いているプロ錬金術師にはかなわない。



「そうなんですか……レイさんはすごい錬金術師なのに……凄いレイさんなのに」



 俺はわしわしとリルルの頭を撫でる。

 褒めてくれてありがとな。



「なので、道具屋のおばあちゃんの孫娘さんにお願いしようと思っている」



「あの、カウンターでお会いしたおばあちゃんの孫娘さんですか?」



「そうだ。あの子は元大手の錬金術師ギルド所属していたっておばあちゃんが言っていた。錬金術師の仕事一筋だけで生活してきたんだから、3種合成も出来るかもしれない」



「はわわ……。あの孫娘さんすごいかたなんですね」



「それじゃ、今日はアイテム売却ついでに、孫娘さんに会いに行こう」



「はい! それでは、おばあちゃんのお店にいきましょうっ!」

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