第22話『オリハルコンとかを集めよう!』

「フィジカル・ブースト!」



 リルルの脚部に魔力が流れ込む。

 体の中には血管と同じように見えない魔力の経路があるようだ。

 その部分に魔力が通ると青緑色の光が灯る。


 リルルは、バッタのように両脚を屈め靴底に力を溜め込み、

 一気に敵に向かって飛びかかる。


 アルビノ・デス・オークは頸部を切断されて即死。

 自分が何をされたのかも分からなかっただろう。



 ボスのレアドロップは【オークアックス】だった。

 売ろう。



 ちなみに新技の【フィジカル・ブースト】はリルル命名だ。

 自分の技に名前をつけるところが素晴らしい。

 そういうところが好きだ。



「第六階層のボスも瞬殺か。魔力の調整が凄くうまくなってきてるな」



「えへへ。学校に通わせてもらっているおかげです」



 まあ、俺は学校に通っても強くなってないけどな。

 新しい未知の事が学べるから楽しいからそれで俺は満足だけどさ。


 それと、リルルが強いのは素のフィジカルが一番の理由だが、

 これも言わぬが花というやつだろう。



「第七階層もついでに攻略しちゃうか?」



「そうですね。今日は調子も良いので行きましょうか」



 魔法を覚えてからは更にダンジョン探索が楽しそうだ。

 ここは初心者用のダンジョンだから安全だけど、

 本物のダンジョンには危険なトラップがある

 ということはそろそろ教えていかないとな。


 ただ、俺も全部知っているわけではないから、

 ダンジョン潜りの元プロ冒険者の人から話を聞けたりしたら良いんだけどな。

 強い冒険者に限って、武勇伝ぽく話を盛るから困りものなのだけど。


 お。モンスターだ。

 きらきら光るスライムだ。オリハルスライムか。


 毒玉+2を投げなきゃ。

 当たったぞ。

 おっ、逃げたか。

 ……死んだか。


 なにかとてつもない経験値が入った気がするぞ。

 さすが経験値10倍のエンジェルリング☆だ。


 このフロアは特訓するのには良いかもな。


 ここのスライムは【オリハルコン】とかいうアイテムをドロップするのも良い。

 きっと高く売れるに違いない。



「このスライム、動きが速いです!」



「手伝う」



 くらえ、麻痺玉+1だ。

 当たった。

 明らかに動きが鈍くなってるな。

 麻痺玉+2だと動きが止まって、リルルの戦闘経験を積めない。

 だから麻痺玉+1がちょうどいいあんばいだ。



「このフロアは戦えば戦うほどドンドンからだが軽くなりますっ!」


「さすがエンジェルリング☆だな」



 俺は初心者用のダンジョンの構造は熟知している。

 最初に攻略する時に、ノートに地図をメモに書きながら攻略したからな。

 ノーキルでボスフロアに辿りつけるのだがそれだと

 俺もリルルも経験が積めないからまわり道をしながら

 ボスフロアに向かっている感じだ。



「あっ! ボスフロア見つかりました!」



「ちょっと、ここのフロアボスは俺が倒してもいいか?」



「もちろんいいですよ!」



「このフロアにはアイテム集めに何度か潜るから、今日は俺に譲ってくれ」



 ここのボスはアイアンゴーレム。

 俺の毒玉が効かなかった相手だ。

 因縁の敵でもある。


 当時は、泣けなしの金で買った水魔法のスクロールで倒したんだよな。

 初心者用のダンジョンの七階層で攻略が止まる人が多いのは、

 このアイアンゴーレム先生のせいである。


 当然、【邪神の寵愛】によってただのアイアンゴーレムが

 出てくるはずが無いんだけどな。

 さて、鬼が出るやら蛇が出るやら。



「アダマンゴーレム……。いかにも強そうだな」



 だが、攻撃パターンは単調だ。

 アダマンゴーレムの大ぶりのパンチを、満月の盾で弾く。

 後ろに後退したところを、麻痺玉+3を投げる。



「おお。状態異常が通ったぞ!」



 明らかに動きが緩慢になったアダマンゴーレムに

 毒玉+3を投げつける。


 内部が腐食しているせいか関節部からボロボロと

 四肢がもげていき、死んだ。


 光の粒子に戻ったあとにドロップした

 ボスドロップアイテムは【アダマンタイト】


 そもそもこのアダマンゴーレムに出会える可能性が、

 1000分の1以下。


 更に、ドロップする可能性は10000分の1程度。

 かなりのレアドロップアイテムなのだろう。


 運極振りいいね。


 でも、あんまり成長していない段階で悪目立ちすると厄介事が増えるから、

 本当に強くなるまではリルルとおばあちゃんだけの秘密にしておこう。


 この世界の人だけを責めるつもりはないけど、

 前世でもお金の臭いとか、うまい話を嗅ぎつけると変な人が

 寄ってくるなんて話はよく聞いていたからな。


 特にこの世界は暗殺者ギルドなんかが存在するこの世界だから、

 俺とリルルが強くなるまではおとなしくしよう。


 俺の目標は王都に家を作ることだ。



 貴族とかみたいに人前でスピーチをするのが苦手な俺には向かない。

 だから役職について偉くなるつもりはまったくない。


 会社で朝礼当番が回ってくる時は当日話す内容を考えるために

 一週間前くらい前からノートで話すネタを考えてたんだよな。

 一生懸命話したのに、拍手して貰えなくて悲しかった。


 せっかく雨の日、晴れの日、曇りの日の3パターンの朝礼ネタを

 用意していたのに、地震。しかもスピーチ中に突発的に起きた

 震度たった1のせいであまりうけなかったのが辛かった。


 しかも、その震度1のせいで、もう一度朝礼させられたけど、

 やっぱり受けなくて悲しかった。

 ああいうのがうまい人が出世するのかもしれんね。


 俺は人前で目立つのはもうこりごりなのじゃ。



「レイ、みけんにシワよってますよ~! 笑顔ですよ!」



「すまない。錬金術の未来について……思索を巡らせていた」



 嘘だけどね。



「そうだったんですねっ! あたし、集中してるところ邪魔してごめんなさい……」



「あっ……いや、大した事ではないから気に病まないでくれ」



「良かったです。ところで、もしよければこのフロアで特訓しませんか?」



「そうだな。リルルにとっても、素早い敵を仕留める良い経験になるだろうからな」



 それに金目になりそうな物もたくさんあるからな。



 結果として、俺とリルルはこの七階層を30周ほど鬼周回した。

 アダマンタイトとミスリルはめっちゃいっぱい集まった。



 道具屋のおばあちゃんのお店の経営の事も考えて

 1階層のマジシャンズ・ロッドと5階層の

 ミスリルの剣もたくさん集めておいた。


 やっぱりお店にとっては定番商品って大事だろうからね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る