第21話『金貨500枚の使いみち』
ミスリルの剣を売っただけで金貨500枚かぁ……。
改めて冷静に考えるとすげぇ金額だな。
まずは必須の毒玉、麻痺玉、回復薬は
数千個単位でとにかく買えるだけ買うとして、だ。
それでもまだまだ断然余裕あるなぁ。
俺の最終目標、家を買うとしたら
中古の家でも最低金貨1000枚。
ある程度贅沢な家に住むなら2000枚。
貴族風の家……田園調布系目指すなら3000枚。
大貴族風……ヒルズ族を目指すなら5000枚。
うーん。あんまり大きい家だと掃除も大変そうだ。
目指すは中流の家。金貨2000枚というところか。
そもそも俺はなんでこの世界に来てから、
こんな家にこだわってんだろ。
前世の団地住まいが無意識にコンプレックスになってんのかな。
いやさ、公営団地は家としては広かったし設備に不満はなかった。
実際家賃も3LDKの広さで3万円ってかーちゃん言ってたし。
でも、中学に入ったあたりから徐々に距離を取る友人とか出てきたんだよな。
変な噂とかも言われてたみたいだし、
団地住まいのせいかは知らないけど、ちょっと悲しかったのは事実だ。
俺が家にこだわるのはコンプレックスの裏返しなのかもな。
「むにゃむにゃ。レイ、夜ふかしさんですか~」
さっきまでベットの上でスースーと寝ていた
リルルが心配そうに俺の顔を覗き込む。
「おおすまん、もしかして起こしちゃったか?」
「いえ。ちょっとねるまえにお水を飲みすぎたみたいでっ」
リルルはてへへと笑う。
「そうかそうか。それじゃおしっこいってらっしゃい」
「は~い。レイもはやくねた方がいいですよ~」
「ほいよ!」
確かにリルルのいう通りだな。
夜に考え事をすると、ついついウツくさい事を考えてしまう。
そうならないように、とっとと寝ることにしよう。
俺は、床の布団の中に潜り込む。
基本的に魔導学院の夜間部がある日は、
その後は宿屋の俺の部屋でリルルと復習。
勉強の途中にリルルが意識を失うので、
ベットに担ぎあげて、
俺は床の布団で寝るという感じだ。
リルルは自分だけベッドに寝て俺が床に寝ることを、とても申し訳ないと思っていたようだが完全な誤解である。誤解を解くのに少し時間が
ある程度お金が稼げる状態でも、布団にこだわるので
本当に布団で寝るのが好きなのだと今は理解してくれている。
布団はあの床の硬さを感じられる感じがすきなんだよな。
日中は畳めばスペースも広く取れるし、
天日干しもできる。俺はベッドより布団はだ。
"ジョニー様"を鎮める日は魔導学院の休講日だ。
なぜかと言うと休講日は元通り俺とリルルは宿屋の
別部屋で寝るからだ。
その日に猛りに猛ったご立派様を鎮めるのだ。
生理現象だから仕方ないよな。
「レイ、もう昼ですよ~!」
「おお、もう昼か。よく寝たと思ったがそんな時間か」
今日は魔導学院の夜間部で基礎コースの延長申請を提出する日である。
俺と、リルルは外着に着替えて魔導学院に向かう。
ここはエリート達が集まる魔導学院の構内である。
いつも夜間コースで来ている場所であるが、昼はなんというか雰囲気が違う。
エリートの学校って感じだ。俺とは肌があわない。
「昼の魔導学院は、若くて綺麗な服を着ている子がいっぱいですね」
「そうだな。貴族の子供が通っている名門校だからな」
「楽しそうですね」
「リルルも本当は学校に通いたかったか?」
同じ年の子達が通っている。
もし行きたいというのであれば叶えてやりたい気持ちもある。
「いえ、あたしは、レイと冒険するほうが楽しいです! 絶対です!」
結果から言うとリルルは一ヶ月で5属性を習得できなかった。
だから延長コースを申し込む事になったのだ。
決して無駄だった訳ではない。
リルルは火属性と水属性は覚えられたのだ。
俺なんて、何も習得できなかったんだぜ……トホホ。
でも、魔法の理屈は理解できた。
その理屈をリルルに噛み砕いて説明もできる。
それに学ぶことは楽しい。
だから、魔法が使えなくても俺なりに楽しくやれている。
……受講料が安かったらなぁ。
ここは魔導学院の教務課。事務職が働いている部屋である。
俺たちのような外部生はここで受講料を支払い、授業に参加する。
「こんにちわ。夜間部の5属性コースの延長申請と、基礎講座の【身体強化魔法】を受講したいのですが、空きはありますか?」
「こんにちわ、レイさん、リルルさん。はい。両コースとも空きは十分にありますよ! 特に【身体強化魔法】については、受講者はレイさんと、リルルさんの二名だけです! 講師とのマンツーマンです。よかったですね。みっちり学んでくださいね!」
「はいっ! がんばります!」
「リルルさんは素直な子ですね。レイの妹さんですか?」
説明が難しいので適当に受け流す。
「はい。リルルは俺の妹です」
リルルは、ほおを膨らまして少しムーっとしていた。
ほっぺが、とらふぐみたいでかわいい。
「それじゃ、これから受付の人と細かい打ち合わせするから、リルルは昼の学校を探索してきな~! 夜の学校とは結構違うはずだぞ~!」
どうしても、金絡みの話となるとリルルは遠慮しちゃうもんな。
学費が高いことを知ったら『魔法は飽きたですっ』とか無理して
いっちゃいそうだ。
リルルが、トテテとどこかへ行ったのを確認した後に話を切り出す。
「ところで、受講料は2人分でどんな感じですかね?」
「二ヶ月の延長分が二人分で金貨100枚。身体強化魔法は、講師をマンツーマンの専任で付けるので金貨200枚。合計300枚となります」
うわ。クソたけぇ……。ボッタクリ……ではないんだろうけど。
残りの金貨は200枚かぁ……トホホ。
……俺の田園調布がはるか彼方に。
「はい。受講料はそれで良いです。あともし良ければ、魔導学院の女性用の夏服と春夏秋服を6着ずつ売ってくれますか? 受講中はリルルに着せてあげたくって」
「もちろん良いですよ。夏服は一着、金貨1枚なので6枚。スリーシーズン対応のものは一着、金貨2枚なので金貨12枚。あとは、金貨1枚の商品だと、学校指定のブラウスや、校章もありますがいかがしますか?」
うわ……高ぇ。さすが貴族のぼっちゃんの学校だな。
冒険者の装備ならかなり良いやつ買える金額だよ。
でも確かに生地の質が良いし魔力伝導率とかが高いみたいだ。
「それもそれぞれ6つずつ。……いや、洗濯することも考えると全ての商品を12着ずつでお願いします!」
限界突破すると夏服2着、春秋冬2着、校章2個、ブラウス2枚。
決して買いすぎではないだろう。ブラウスは後日買い足すかもしれない。
「ちょっとだけ買い過ぎな気がしますが。お買い上げありがとうございます。それでは、受講料あわせて金貨372枚……なんですがレイさんにはおまけして350枚でお売りします」
「おまけしてくれてありがとうございます!」
俺はリルルが帰ってくる前に急いでアイテムボックスに隠す。
あとで限界突破の作業が完成したらプレゼントをするつもりだ。
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