第20話『ミスリルの剣を売って金貨いっぱい!』

「今日は高品質なミスリルの剣を買い取ってもらおうと」



「ミスリルの剣かい。いいセンスだね。中級冒険者には特に人気の武器だ」



「初級冒険者でも借金すれば買えなくはない一種の成功者の"ステータスシンボル"にもなってますからね」



 前世の車のイメージ的にはレ○サスやB○Wといった感じか。

 決して買えない金額ではない高級品。


 思わずマイカー自慢のために本当は必要もないのに温泉ドライブツアーとか

 企画したくなっちゃう感じのあの感じが近い。


 

「それにしても、前回持ってきてくれたマジシャンズ・ロッドと同じように今回のミスリルの剣もとんでもなく高品質な逸品だねぇ。うん、とても綺麗だよ」 



 さすがは商売人興味しんしんだな。

 生粋の商売人だから珍しい物を見るだけでも楽しいのかも。

 そういうところ生粋の職人肌って感じがするよな。



 ……おっと、うっかり忘れかけてた。

 今日はおばあちゃんに個人的に渡すものがあったんだったな。



 商談の前にプレゼントだ。

 リルルに預けていた物だからリルルから渡してもらおう。


 俺は、リルルの脇腹を人差し指でツンツンとつつき、

 プレゼントを渡すタイミングであると暗に伝える。



「あの。おばあちゃんっ。いつもお世話になっているのでっ。どうぞっ」



 よくできました。店に入る前に少し練習した甲斐があったな。

 なにごとも慣れだぞ、リルル。



「リルルちゃん、どうもありがとうね。ここで開けてもいいかい?」



「はい、どうぞっ」



「ありがとうねぇ。おばあちゃん、こんな素敵なネックレス初めてだよ」



「きにいってくれるといいんですがっ」



「ありがとうね。リルルちゃん、レイちゃん大切に使わせてもらうよ」



 エンジェルリング☆の効果は経験値10倍の効果。

 客が増えれば必要になる商業スキルも増えるだろう。

 これで少しは楽になれば良いんだけどね。


 冒険者ほど分かりやすい成果はでないだろうけど、

 それでも無いよりはマシにはなるだろう。


 まあ、少なくともピップエレ○バンの磁気ネックレス

 程度の効果は期待できるはずだ。オシャレだしな。



「このネックレスチェーンも繊細な加工がされていてキレイだねぇ」



「そのチェーンはレイがお店でがんばって探しました」



「流行り廃りのないクラシックなデザインだけど、職人技を感じさせる出来だね」



 たぶんチェーン6本買って限界突破させた時に

 品質が細かいところまで劇的に向上したんだろうな。



 リングのデザインは主張のないシンプルなシルバーリングだから心配はない。

 差が出るチェーンのヒモもこだわった。


 ぶっちゃけ、男の俺からすればネックレスの

 チェーンなんてどれも同じ金具のヒモだ。


 だけど女性は微妙に細工が違うだけで随分と評価が分かれるそうだ。

 どのあたりで違いを認識しているのか分からない。

 不思議なものだよな。

 センスってヤツなのかな?

 

 女性の髪型の微妙な変化に気づけない男、それが俺だ。

 ロングヘアーからショートに変えたらそりゃ気づくけど、

 ちょっとすいただけとか、ウェーブかけただけとか気づけない。


 でも、そういうのって結構重要視されるんだよな。

 生前はそういう細かな変化を気づいてさり気なく褒められる

 会社の同僚はモテたし、出世コースだったからな。


 長年の習慣でクセがついているし、

 すぐには変わるのは無理だ。それに限界はあるけど、

 できるところから気にするようにしてみよう。



「それじゃあ。そろっと、ミスリルの剣の鑑定をお願いします!」



「もちろん、お安いご用さ!」



 おばあちゃんは【鑑定:極】の持ち主である。

 さらにスキルで見られる情報だけではなく世間一般の市場価格も把握している。

 そういった諸々の事情を知った上で査定をしてくれるから信頼感がある。



「そうさね。この出来なら1本、金貨20枚で買わせてもらうよ。そうさね。店頭での販売価格は金貨80から金貨100枚が妥当かねぇ」


 

 マジシャンズ・ロッドの2倍! やったぜ!!

 めちゃくちゃ割の良い武器だな!!

 

 まあそれだけ需要があるというわけか。

 後衛職よりも派手に目立てる前衛職目指す冒険者って多いもんなぁ。



「ぜひそれでお願いします! ちなみに50本あります」



「この超絶品質のミスリルの剣50本かいっ! そりゃ凄い数だねぇ。今回はマジシャンズ・ロッドの儲けもたんまりあるから、即金で買い取れるよ。それじゃ全部で金貨1000枚だね」


「それでは、ぜひお願いします!」



「前回同様に、リルルちゃんと、レイちゃんはきっちり半分かい?」



「それでお願いします」



「はいよ。それじゃレイちゃんに金貨500枚。リルルちゃんに金貨500枚」



 おお……重い。

 ずっしりと重みを感じる金貨袋だ。


 日本円で5000万円……!

 六本木ヒルズに……住めないけどな!


 俺は安全のために即座に金貨をアイテムボックスに収納した。

 リルルにも金貨袋は常にアイテムボックスに収納してもらった。


 リルルにはちょっとくどいぐらいに外では絶対に、

 小銭袋以外は出さないようにと伝えた。

 


「あと、これはお願いなんですがいいですか?」



「いいよ。レイちゃん。何でも言いなさいね」



 俺はその言葉を聞き、更に追加のミスリルの剣☆を

 30本追加でアイテムボックスから出す。



「このミスリルの剣は、衛兵所におばあちゃんの名義で寄贈していただけますか?」



「……そりゃ、願ったり叶ったり、喜んでだけど、どうしてだい?」



「実は、つい最近はちょっと王都で不穏な連中が動き回っている可能性があって、いざという時に衛兵さんが戦えるようになって欲しいと思っているんです」



「なるほどね。確かにミスリルの剣30本は、衛兵所に寄贈するよ。ただし……」



「ただし……?」



「孫娘の錬金術師の力を借りて、衛兵所に寄贈する分の"30本のミスリルの剣"には【譲渡・売却・ダンジョン内で使用不可】の魔刻を刻ませてもらうよ。あまりに良い出来の武器に目がくらんで衛兵を一斉に辞めて冒険者にでもなられちゃ、王都の治安は一気に壊滅しちまう。それでもいいかい?」



「おおっ!! お孫さん、そんなこともできるんですね。超凄腕の錬金術師じゃないですか。衛兵のなかにも出来心で売ったり、盗まれたり、衛兵やめて冒険者になっちゃう人も出てくるかもしれませんから、ぜひそうしていただけると助かります!」

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