第18話『完成! 経験値10倍UPの指輪』
ここは第五階層のボスフロアである。
このフロアに来るのは20回をゆうに超える。
いわゆるソシャゲで言うところの鬼周回。
鬼周回の目的はレアドロ、金策、
そしてリルルに戦闘スタイルを覚えさせるためである。
お金は大事だ。学費、食費、宿賃とかで自然と溶けていく。
稼げるだけ稼ぎたい。そして、いつか俺は王都に家を建てたい。
俺が何故家を建てたいのか謎だが。
「エンチャント・ファイア! エンチャント・アイシクル!」
リルルが覚えた基礎魔法の応用技だ。
左右に火属性と氷属性を別々に付与する事によって最強に見える。
まあ、実際は特に強くなるわけではないんだけどね。
リルルはこれを【デュアル・マジック・ブレイド】と名付けた。
魔法剣ではないのだけど本人が楽しそうだから細かいことは良いや。
そういうのは気分の問題だよね。
それに、氷も炎も自己再生の能力を持つ相手に
は効果あるみたいだし問題無い。
現に――。
「いきますっ! デュアル・マジック・ブレイド!」
炎のダガーと、氷のダガーで滅多斬りにして、
クリオネ・ロードの核を破壊して勝利。
氷と炎が合わさり最強に見える。
まあ、強さとは実際の関係はないがな!
この第5層には20回ほど潜ったこともあって、
リルルは第二形態の変形時の毒液も触手乱舞も
俺のサポートなしで回避できるようになっていた。
目標は俺のサポート無しでの一人で踏破だ。
いまのところ順調に進んでいる。
「リルル、魔法剣を完璧に使いこなしているな!」
「いえいえ、レイが魔法を教えてくれたからですよ」
「真面目に勉強しているリルルも偉いぞ」
そんなことを話している間にクリオネ・ロードは
光の粒子になり消滅。
エンジェルリングをドロップした。
「やったです! レイ、これで限界突破できますね!」
「そうだな。それじゃ限界突破させるか」
俺が6つの指輪に手をかざすと、
1つの指輪に合成された。
一応性能をチェックしておくか。
――――――――――――――――――――――――
エンジェルリング☆
詳細:経験値の取得倍率増加(10倍)
――――――――――――――――――――――――
「リルル。エンジェルリングを作り直しておいたぞ」
「ありがとうございますっ!」
さて、俺も自分の分のエンジェルリング☆を装備しますか。
俺にとっては特に経験値倍率10倍はありがたい。
能力値補正が低い俺の場合は生存確率を上げる方法は
レベルアップ時の体力補正くらいだからなぁ。
この指輪があれば生存確率をあげるこができるだろう。
もちろんこのアイテムは絶対に売却しない。
野盗とか暗殺者ギルドの手に渡ったら怖いもんな。
「リルル。今日はどうする? 6階層潜るか?」
「今日は、ひさびさにおばあちゃんのとこ行きませんか?」
「そうだな。売り物も随分と溜まったことだしな」
この五階層ではかなりのアイテムを集めることができた。
高額買取が期待できる武器ミスリルの剣、経験値倍増のエンジェルリング、
どちらも、欲しかったアイテムだ。
ちなみに、
ミスリルの剣は道具屋に買い取って貰う分と、
衛兵所の衛兵さんに寄贈する分を集めた。
衛兵さんの強化はすなわち、王都の治安の維持の向上に繋がる。
衛兵さんに寄贈するのは必須ではない。
必須……ではないのだけど、
宿屋でダークエルフの暗殺者に襲撃された時に、
衛兵所で保護してもらった恩もありその恩返しもしたい。
それに一宿一飯の恩義もある。
うーむ。
泊めさせてもらったのは留置所の中だったし。
布団は硬かったけどな!
隣にリルルが居たから笑い話になるいい思い出だ。
辛い思い出でも、誰かが隣に入れば共通の思い出になる。
そうそうあの夜のあと、
街の掲示板でダークエルフのお尋ね者についての
ビラを何度か見かけたから衛兵さんも、
真面目に仕事してくれてるみたいだ。
よかったよかった。
ダークエルフの暗殺者はかなりの手練れだ。
衛兵がダークエルフと対峙した時に、残念ながら現在の支給品のブロードソードでは相手にならないだろう。そのためのミスリルの剣☆の寄贈だ。
街の平和=リルルの安全と考えるならば、
まわりまわって最終的に俺の利益にもなるわけだ。
ミスリルの剣星の寄贈については具体的には、
道具屋のおばあちゃんから寄贈してもらうことにする。
一介の冒険者が大量にミスリルの剣……しかも超高品質な
物を衛兵に寄贈するとか明らかにおかしいもんな。
痛くもない腹を探られるのは本意ではない。
それに、道具屋のおばあちゃんの仕事も最近はかなり
儲かっているらしく、そろそろ競合連中や、
ガラの悪い連中に嫌がらせされてもおかしくない頃合いだ。
そんななかで衛兵に恩を売ってコネをつくっておけば
イザという時にかなりの助けになってくれる可能性が高い。
情けは人のためならず。
まわりまわって返ってくるものだ。……たぶん。
年始に初詣でなんとなく買っちゃうお守り程度には期待できるはず
「リルルの魔法剣カッコよかったぞ!」
「えへへ。ありがとうございます!」
「他に覚えたい魔法とかあるか?」
「今度は雷の属性も付与してみたいです。すごく難しくて苦戦していますっ」
「それじゃあおばあちゃんの道具屋でアイテムを買い取ってもらったあとは、俺の部屋でみっちり雷の勉強の復讐だ! ビシバシいくから覚悟するように!」
まあ、実際はビシバシしないけどね。
スパルタ式は勉強には逆効果らしいからね。
でも、一度くらい軽くおしりをはたいてみたいな。
むちっとしているからね。
「はい! 一生懸命がんばりますっ!」
俺とリルルはボスを倒した時に現れる転移ゲートを
くぐってダンジョンを立ち去るのであった。
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