第10話『リルルと一緒にダンジョン挑戦』

 俺は衛兵さんに護衛していただいたことの

 御礼をしたあと初級ダンジョンに向かった。



 盾よし、毒玉よし、回復薬よし。リルル良し。

 うむ準備は完璧だ。


 俺とリルルは初心者ダンジョンの入り口に近づく。


 多くの冒険者が訪れるダンジョンだけあって、

 人の手垢まみれではあるが、その分安心感は段違い。


 俺は扉を開けてダンジョンに潜る。


 ダンジョンの通路は縦横五メートル程度。

 壁の色はくすけた白色。

 明るくはないが、全体がぼんやりと光っている。



「ここが王都ギルドのダンジョンなんですね! 感激です」


「そうだ。野良ダンジョンではなくギルドの管轄下にある初心者用のダンジョンだ」


「野良ダンジョンとの違いは何ですか?」


「定期的にギルド職員さんが回っているから安全だ」



 実は俺も死にかけた時があり、

 職員さんに助けてもらったこともある。


 そのあと、法外な料金を請求されたので

 あまりお世話にはなりたくはないが。



「このダンジョンはどれくらいの深さなんですか?」



「10階層までだ。初心者用のダンジョンだからな」



「通常のダンジョンは10階層以上あるんですか?」



「ピンからキリまでだ。ノーライフキングのダンジョンみたいに1階層しかないけど難易度が高い野良ダンジョンもあれば、王都にある100階層以上ある誰もまだ踏破したことのないダンジョンもある」



「ダンジョンもいろいろあるんですねっ」


 ノーライフキングのダンジョンのような例外はあるが、

 原則的には、階層を進むたびにモンスターは強くなっていく。

 基本的には階層が進むにつれてドロップするアイテムの質も良くなる。


 それ以外にも宝箱にはユニークアイテムなんかが手に入ることもある。

 死亡した冒険者の荷物は第一発見者が所有して良いことになっている。


 俺の方針としては安全に狩りができる低階層でドロップアイテムを

 手に入れて、日銭を稼げればいい程度の場所である。



「レイ、敵です」

 


「リルルは後ろに下がって俺の戦い方を見ていろ」



 ゴブリンシャーマンか。

 確か1000体に1体くらいの希少種のはず。


 【邪神の寵愛】の強敵に出会う確率激増の効果か?


 確か、ファイアボールを飛ばしてくる

 厄介なモンスターだったはずだ。

 だが、今の俺なら。



「うらぁ!」



 パリィで、目の前に飛んできたファイアボールを打ち消した。

 満月の盾の魔法打ち消しの効果使える。


 あとは、他のゴブリンと同じようにやるだけだ。

 俺は毒玉を取り出して投げつける。

 毒玉の表面のカラが割れ毒薬がゴブリンにかかる。


 反撃として何度かファイアボールを

 シャーマンゴブリンが放ってきたので、

 ことごとくパリィで打ち消した。

 あとは待つだけの簡単なお仕事である。


 モンスターは死ねばは死体が光の粒に変化し

 空気中に溶けるように消えていく。


 もしそうじゃなければ、

 今頃ダンジョンは死体の山で埋まっているだろう。



「ゴブリン死にましたね……あっ、消えちゃいましたよ」



「簡単に言うと俺の戦闘スタイルはこんな感じだ」



「さすがですっ! 勉強になります」



「渡した分の毒玉と回復薬は好きな時に使ってくれ。何事も慣れだ」



「はいっ! 分かりました」



 シャーマンゴブリンが落とすドロップアイテムは

 【マジシャンズ・ロッド】以前の装備で死ぬ気で

 倒した時は結構高く売れた記憶のあるアイテムである。


 宿賃も3倍で返ってきたし、嬉しい限りである。

 お金があると美味しいものも食べられる。

 美味しいものが食べれると俺は幸せだ。



 しばらく歩いていると……。



「レイ! また、杖をもったゴブリンが、いましたっ!」



 モンスターが現れるたびに口で教えてくれる。

 なんとなく楽しそうな感じだだ。

 かわいいな。


 それにしてもどこに行ってもシャーマンゴブリンだらけだ。

 1000体に1体の確率なのでどれくらいなので、

 いままで出会った分の確率がどれくらいなのか

 まったく検討も付かない。


 普通のゴブリンには遭遇しないので

 毒玉の在庫が気になるところだ。


 先日のノーライフキングに大量に使ったのと、

 昨日合成で遊び過ぎたせいでかなりの

 毒玉を使ってしまった。


 あと在庫がが600個くらいしかないから、

 少しだけ心配だ。

 まあ【マジシャンズ・ロッド】売って儲けた金で

 毒玉は店で買えばいいか。


 お金が貯まるので嬉しすぎてて泣けてくる。

 あまりニヤニヤしているとかっこ悪いので、

 顔は引き締めていかないとな。



 シャーマンゴブリンを蹴散らしながらズンズン進む。

 リルルは毒玉を投げたり、ドロップアイテムを拾っている。

 

 楽しそうなのは良いことだな。

 俺も楽しい気分になるぞ。



「レイ、突き当りの部屋です。扉がありますね」



「お疲れ様。ここがフロアボス部屋だ」



「あの、噂のフロアボス部屋ですか?」



「そうだ。冒険者はこの扉の前で戦う準備を整えるんだ



「勉強になります!」



「リルルも喉乾いただろ。回復薬飲んだらどうだ」


 リルルは蓋を開けてグイッと回復薬を飲み干す。


「おいしいですっ!」


 いい笑顔だ。

 まぁ、ダメージ受けてないから本当は不要なのだが、

 味が美味しいのと喉の乾きが癒えるからな。


 錬金術師たちが価格戦略だけじゃなくて

 味でも差別化を頑張った結果である。

 本当に物売るって大変ですよね。



 というわけで、

 せっかくだから俺はこの赤の扉を選ぶぜ。


 まあ、俺の目の前には扉は一つしか無いけどな。

 ガチャリと音がして、フロアボス部屋が開かれる。



「うわっ! 大きくて怖いです!」



「……デカイな。これはヤバいかも」




 この部屋の本来のボスは、コボルト・キングだ。

 たが目の前に居るのはコボルト・デスロード。


 3メートルを超える体躯になんか全身に

 血管が浮き出ていて怖い。

 そして2足歩行だが顔だけは凶暴な狼のようだ。



 俺は、昨日作った毒玉☆を、

 コボルト・デスロードに投げつける。



「グギャアアアアアアアアアッ!!!!」



 怖い。


 怖いのは、コボルト・デスロードではなく

 毒玉☆の効果の方である。


 目、鼻、耳、口、毛穴から血を吹き出しながら

 のたうち回って一瞬で死んでしまった。

 俺は極めてなにか生命に対する侮辱を感じた。


 次に来る時は毒玉+4くらいのを投げて

 徐々に調整していこうと思うのであった。

 R.I.P.



「……消えましたね。武器が落ちてますよ」



「コボルトダガーだね。リルルにあげるよ」



 リルルが凄い嬉しそうにしている。

 そんなに喜ばれるとは思わなかったぞ。


 マジシャンズ・ロッドは俺もリルルも

 使えないので、限界突破した後に全部売ろう。


 さて、ダンジョン探索も終わったので

 あとはアイテムの換金をしに行こうか。

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