第5話『王都でリルルを愛でてみた』

 俺は何度か、前かがみの

 体勢になりながら深呼吸をしつつ、

 下半身の海綿体様を鎮めつつ、

 王都へ向かった。



「ふぅ。やっと着いたな。お疲れ様、リルル」



「あたしのために、ゆっくり安全に歩いてくれてありがとうございますっ! レイは、強いだけではなくとっても優しい紳士ですっ!」



 リルルの笑顔がまぶしいぜっ!

 まあ、俺とリルルは能力値で

 【速さ:1】と【速さ:20】の差があるからな。

 でもせっかく褒めてもらったのだからそういう事にしよう。

 そうとも俺は紳士なんだ。



 王都についてからは服屋と武器屋に立ち寄った。

 俺もそんなに金銭的に余裕がある身分ではないので、

 リルルに買い与えてやれるのも最低限のものとなった。


 本当はリルルにはもっと良いのを買い与えてやりたかったのだが……。


 ちなみに王都で購入した装備は以下の通りである。


 女性険者用の服一式

 頑丈な厚底の革製ブーツ

 鉄製のナイフ二本

 腰に差し込むタイプのナイフケース


 武器をナイフ2刀にしたのは、

 リルルの【速さ:20】という尋常ならざる

 能力値を最大限有効活用できるようにするためである。


 速さを生かすのであれば、長大な剣よりも

 一気に懐に潜り込んで連撃を繰り出せる

 ナイフの方が適任である。


 ちなみに、リルルが背中にナイフ二本を納めた姿はちょっとダン○ちの主人公っぽい感じだ。ダガーとか、ナイフ二本とかシーフっぽくってかっこいい。

 


 それにしても改めてリルルが

 ちゃんとした服を着せてみるとあれだな。

 やっぱ美人、いや……かわいいな。


 リルルすまない。


 君を助けたナイスガイは、

 脳内でえっちなことを

 考えていることを許してくれ。



 生贄の布をまとっていた時のリルルは

 正直えっちすぎて直視できなかったのだが、

 今ならガン見しても犯罪にはならないだろう。



 俺は、リルルを上から順に観察する。

 ポーカーフェイスを心がけているので、

 リルルには下心はバレないはずだ。



 まず、リルルの髪なのだが

 金色に風になびく髪が美しい。

 まるで絹のように艷やかだ。

 長さはセミロングで細めの髪だ。

 一度3時間ぐらい撫で回したあとに、

 2時間くらい髪の匂いを堪能したい。



 瞳の色は、薄緑色。

 宝石で表現するならエメラルド。

 金色の髪に映える。

 思わず宝石箱にしまいたい美しさだ。

 って、こりゃヤベェ人の発想だ。



 耳や鼻は、小ぶりで特に主張はないが

 一言で言うならば整っている。

 耳を一度口にカプッと含んでみたい。

 そして思う存分堪能したい。



 首筋はスラッとしている。

 とはいっても細いわけではない。

 しっかりとした首だ。

 うなじがえっちだ。



 そしてボディーラインが目立たない

 はずの冒険者服をきてもなお、

 隠しきれない豊満なおっぱい。

 ああ、神よ。……俺を殺してくれ。



 更にウェストは程よくくびれている。

 痩せ過ぎず程よく引き締まった感じだ。



 そして太もも。女冒険者の服は

 太ももが見えるタイプのミニスカート型なのだが、

 なんだろう……むっちりしていて素晴らしい。

 ひざ枕とかしてもらったら、俺死ぬんじゃないかな?


 ちなみに黒ハイニーソックスもあわせて買った。

 やはり、太ももとハイニーソックスの間から

 ちらりと見える肌色は至高であり、

 まさに絶対領域。


 ちょっとハイニーソックスが食い込んでいる

 境目の部分が……うん、最高です。

【筋力:20】でも体の柔らかさには

 関係ないようで、もうね、最高です。



 そして、お尻。これはいわゆる安産型

 というのかな? ちょっとだけ大きめのお尻。

 でもなんだろう良いよね。浪漫だよ。


 人類は、二足歩行になる前の、

 四足の時代は女性のアピールポイントは

 お尻だったらしいのだ。


 お尻からおっぱいに視点が移ったのは

 二足歩行に移行してからのこと。

 つまり、俺がここまで熱くなるのも

 人間の太古の血が蘇っているだけで、

 極めて自然なことなのだ!



「レイ? どうしましたか。あたし変ですか?」



 俺はリルルの声で正気を取り戻す。


 えっと、今俺は何をしていて、

 ここはどこだったかな?

 そして俺は誰だ?


 落ち着け、落ち着け、俺はレイ冒険者だ。

 まず俺がリルルに向けて


 最初に言わなければいけない言葉は……!



「えっちだ」


 あっやべ、

 思わず心の声が漏れた。

 はやく訂正しないと。


「……っ?」


「え~……っちゃすだ! えっちゃすだ! リルル。似合っているぞ。これで誰がみても立派な一人前の冒険者だ!」


「えっちゃすだ、ですか?」


「"えっちゃすだ"というのは古代ルーン語で"強そう"という意味の言葉だ」


「さすがレイですっ! 強くて、頭もいいんですねっ!」



 屈託のない笑みを向けられ、

 多少の罪悪感を感じてしまった。


 とにかく、勢いでごまかした。

 ごまかせたか微妙であるがごまかした。



「ところで、リルルはこれからどうする?」



「えっと……お金を稼ごうかと思っています。レイに助けてもらった恩返しをするためにもすぐにでもお金を稼げる仕事をっ……しなきゃですよっね」



「リルル、御礼はいらない。……十分に堪能……いやっ、やはり困った時はお互い様だ。それが冒険者というものだ」



 ふむ。花売りの仕事に戻るのは嫌なようだな。

 言葉の節々にかなり抵抗があるように感じる。

 まぁ、あんな怖い目にあえば当然だ。


 中にはプライドを持って働いている人もいるので

 触れて良いものかどうか迷ったのだが、

 本人の意思の確認が取れて良かった。


 お店などではなくガラの悪い裏路地で

 花売りをしていたという話をあわせて考えると、

 やはり余程の事情があったのだろう。


 決して良い思い出ではないのだろう。

 できれば、違う生き方を見つけてやりたい。



 そういや、リルルは 『冒険者に成りたかったけど素質がなかったから花売りで生計を立てていた』 とか言っていたな。



 今も冒険者の仕事に興味があるか聞いてみるか。



「リルルはまだ冒険者に憧れはあるか?」



「はい。一度ギルドの試験を受けたのですがクリアできませんでした。でも、今も冒険者のような生き方ができたら、なんて夢想することがあります。おかしいですよね? はは」



「いや、今のリルルなら余裕だと思うぞ」


 余裕なんてもんじゃない。超余裕だ。

 勇者より能力値上は上だろう。


「そうでしょうか?」



「ああ。お墨付きをくれてやるぞ」



 リルルはあらゆる能力値が常軌を逸している。

 それは俺も認める。

 能力値だけの話で言えば英雄クラスだろう。


 だがしばらくの間は、あまり強さを自覚させずに

 慎重に着実にダンジョンを攻略する立ち回りを

 教えた方が良い。


 慢心したら死ぬのがダンジョンってやつだ。

 初見殺しの罠が盛りだくさんだからな。


 たとえばだ、過去に神の加護を受けたように

 恵まれた能力値の勇者がダンジョン内の

 転移トラップで石壁の中に埋まって無惨に死んだ、

 なんて話を聞いたことがある。


 どんな強者であれ敬意を払わなければいけない、

 それがダンジョンというやつだ。



「もしよければっ、レイとパーティー組んでもいいですか?」



「いひっ? 本当に、俺で良いのか。俺のステータスをみた上での判断か」



「はい。凄いさすがレイですっ。素晴らしい運をお持ちだと感動しました!」



 まあ。確かに運は凄いまあ、褒められるのは嬉しい。

 褒められ慣れていない俺は惚れてしまうぞ、

 良いのかリルル。



「そうか。ならパーティーを組もう」


 よろしくお願いします!


「もちろんですっ、ぜひおねがいします」



「もちろんだ。明日、俺が初心者用のダンジョンで安全な戦い方の手本を見せるから同行して欲しい。リルルにとってはキツイかもしれないが覚悟はあるか?」



「はいっ、がんばります」


 うん。素直な良い子だ。


「そこで、もし怖いなと思ったら別の仕事を探すのを手伝うぞ。例えばギルドの受付嬢とか、事務職とか仕事の空きがないか探そう」



「……なにからなにまで、さすがレイです」



「もし大丈夫そうならギルドに言って正式な冒険者の手続きをしよう。俺が紹介状書けば、Fランクの冒険者としてなら試験免除で登録させてくれるはずだ」



 まあ、俺じゃなくてもある程度の冒険者経験があるヤツの紹介状さえあれば通っちゃうくらいザルだがな。まぁ、ゆくゆくは知ることになるとはいえ、今日くらいはカッコつけても罰はあたらないだろう。


「それで、お願いします」



 俺が仲間と組んでダンジョンに潜れるようになるとは感慨深いぜ。

 運極振りと錬金術師の不遇セットのせいで、

 パーティー組んでもらえずソロプレイせざる負えなかったからな。



「それじゃ、明日のダンジョン潜りに備えて宿屋で休もうか」



「はい」

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