第4話『空気がおいしいですっ!』
俺はノーライフキングのいた
ダンジョンのアイテムを回収した後に、
リルルと一緒にダンジョンから出た。
「リルル、体の調子は大丈夫か?」
「はいっ。最高ですっ! レイのおかげで目が見えますっ! 手も動きますっ! 足も動きますっ! 空気がおいしいですっ! あたし、また青い空、緑の森をこの目で見られるようになる日がくるとは夢にも思いませんでした……ひっくひっく。本当にこんな奇跡があるなんて……ひっく」
「それなら良かった」
さすがはチートだぜ。
サンキュー女神。
「ところで、レイはあたしをどうやって治療したのですか?」
これは……。
適当にごまかすしかないな。
「ダンジョンで拾ったレアドロップを使ったんだ」
「レイは、見ず知らずのあたしなんかのために、貴重なレアドロップアイテムを使ってくれたんですか? レイ、あなたは名のある聖人さまでしょうか?」
「いやただの冒険者であり、職業は錬金術師だ」
「レイは錬金術師さんだったのですか……えっと、かっこ、いいですよね!」
ちょっと苦しさを感じる褒め言葉だが嬉しいぞ。
俺もカッコいいから選んだからな。
まぁ、ダンジョン内で使えるスキル無いけどな。
「空気が美味しいです。草木を踏みしめる感覚が気持ち良いです。本当に命を救っていただき、ありがとうございましたっ!」
「そういえば、リルルは……」
おっと、
うっかりこみいった事を聞きそうになってしまった。
リルルの過去については、
あまり詮索しないようにしないとな。
まだ若い……というかそれ以前に幼いのに、
過酷な花売りの仕事で稼いでいるという時点で、
あまり話したくない過去を持っている可能性が高い。
この世界で言うところの
10歳の時に自分で決めなければならないようだ。
そして一度決定したら変更できず、
上位職に成長するまで変えられない重いものだ。
実際俺は、錬金術師という職業というだけで
かなり不遇な扱いを受けた。
更に
それなりに落ち込んだものだもんだ。
リルルが花売りという
選択しなければならなかった境遇を想像してみたが、
親に口減らしに売られたとか、人攫いとか、闇孤児院
とかどれもろくな、思い出ではなさそうだ。
わざわざリルルのトラウマに触れる可能性を
おかしてまで確認することでもないな。
「リルルはどこか行きたいところはあるか?」
「あたしはっ、どこでもだいじょうぶです!」
「そうか。ここから近くにある王都でもいいか? もし……王都がいやなら別のとこを目指しても良いぞ」
「あたしは、王都でも大丈夫です。レイさんの行くところなら、どこでも喜んで」
「そうか。この辺りの地形はかなり慣れているから道案内は俺に任せてくれ」
「はい。お願いしますっ!」
王都に行くことに賛同してくれて助かった。
俺の考えすぎかもしれないが、
まだこの件は完全に解決したように思えない。
なにしろ、ダークエルフっていう種族は
本当に執念深いからな。
もし生贄の少女がいなくなった上に、
生贄を定期的に捧げていたノーライフキングが
殺されたとなれば復讐のために何をするか分かったもんじゃない。
標的が俺だったら良いのだがきっと奴らは
まったく面識のない俺を狙うよりも、
リルルを狙って、俺の居場所を拷問を使って吐かせるだろう。
生前の893な人たちと同じように体面を気にする種族だからな。
その点、王都なら比較的安全だ。
なにしろギルドや衛兵の庇護下にあるからな。
盗賊や、奴隷商などになるものが多い、
ダークエルフに対しては特に厳しい目を向けている。
王都内でならば、暗殺が特異なダークエルフも
目立った行動は取れないはずだ。
少なくとも、抑止力としては期待できるはずだ。
それに仮に不穏な動きがあった時に助けを求めやすい。
「レイ、難しそうな顔をしていますが……具合は大丈夫ですか?」
「ああ……心配をかけてすまない。ノーライフキングとの激戦で、知らないうちにちょっとだけ疲れが溜まっていたようだ」
まぁ、半分は嘘ではない。
5時間毒玉投げるのだってそれなりに疲れる。
「王都に着いたらまず服屋に行こう」
「すみません……あたしお金もってません」
「もちろん知っている。服代くらいは俺が払う」
今のリルルの生贄の布は、
扇情的過ぎて目に毒だ。
ほとんど布一枚だからな。
さすがにえっちすぎる。
それに俺だって男だ。
そりゃ可愛い子が露出多めの服を来ていたら
ちょっとえっちな気分になる。
いや――、凄くえっちな気分になる。
今だってちょっと前かがみに
なりながら歩いてるんだ。
森の中を前かがみに
歩くのは結構大変だ。
空気を読んでかゴブリン先輩が
現われないのもツイてるぜ。
可愛い子の前でくらい、
女の子を助けたナイスガイを気取りたい気持ちはあある。
だけど、生理現象だから仕方ないよね?
俺は健全な男子だからっ!
あと、さり気なく鏡でみて研究した
横から見られた時に格好良く見える顔の角度(当社比)
を意識しながら歩いているのだけど、
リルルの目にはかっこよく映っているだろうか?
「服まで!? そっ、そこまでしてもらうのは、申し訳ないです」
「ははっ。リルルは律儀だな。そんな細かいことは気にしなくていい」
まあ……ぶっちゃけ、
俺は生活するのもカツカツな底辺冒険者だ。
だけどさ、今日くらいは見栄を張ってもいいだろ?
だってさ、一生に一度あるかないかの
可愛い子に男気アピールできる機会なんだぜ。
「それより、休まなくて大丈夫か? まだまだ王都まで距離はあるぞ?」
「大丈夫です。お気遣い、ありがとうございますっ」
さすが【耐久10】もあるとガッツあるな。
息切れすらしてない。
「そうか、なら王都までもう一踏ん張りだ。一緒にがんばろう!」
「はいっ、あたし、レイのためにがんばりますっ!」
村娘のように屈託のない笑顔最高です。
すまん、リルル。やっぱ俺、えっちだったよ。
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