第3話 東京って・・

大学の相談室に行き、女性のカウンセラーに今までの事を全て話した。

最初は驚いた顔をしていたカウンセラーは次のように答えた。

「一方的な物の見方ではなく、色んな角度から考えた方がいいよ。傷ついたかもしれないけれど、叱咤激励して先生は言ったのかもしれないしね。」

それは分かっている。けれど、けれど・・

「今の健康状態だと病院に行った方がいいわね。大学から近い病院を紹介するわ。」

そう言い何個か病院を紹介されて、私は一番大学から近い病院に行く事になった。


東京のビル郡の中にあるそこは古びた病院だった。臆病な私は都会のビルに入るという事だけでもドキドキしていた。

精神科と心療内科の違いが分からないが、まあいいか。心療内科でも薬は出るだろう。


錆びたドアを開け、中を見渡す。古い椅子や漫画が置かれている待合室には3、4人いた。私は受付を済ませ隅の方にささっと座り俯く。やっぱり人がいる所は何だか怖い。あー早く呼ばれないかな。


40分位待った。長いな。早く帰りたい。

・・あ、やっと呼ばれた。私は急いで診察室へ入った。

年期の入った椅子に座っていたのは白髪でかなりのお爺さん医師だった。見た目がちょっと怖そうな人だが大丈夫かな。不安になる私だったが、事の全てを医師に話した。

「あなたはうつ病ですね。薬あげるからこれ飲んでね。」

そう言い何種類か薬を処方してもらった。そしてアドバイスももらった。(今になっては何も覚えてはいないが。)

ベテランの医師が言うんだから間違いないのだろう。やっぱり私はうつ病だったのか。この精神状態が病気というもので良かった。病気なら薬を飲めば治るのだろう。そんな甘い考えもあった。薬が神様に見えた。


その後通院し、何日も薬を飲んだ。だが薬は一向に効く気配は無し。まだ涙するし、気持ちが不安定でハラハラ、ソワソワする。怖い夢もよく見た。リスが大量死してる夢とか、襲われる夢とか。朝起きてベッドシーツのチェック柄を見ただけでも夢を思い出し怖くてたまらなくなっていた。悲鳴を上げることもしばしばあった。


(私、どうなっちゃったんだろう。。。)


心の不安がみるみる膨れ上がる。


結局うつ状態は改善されず、看護師や医師の威圧的な態度にも不満を持っていた私は、今日こそ決着つけようと思い、母と病院に向かった。

お爺さん医師に相談した。これで何も変わらないなら病院を変えよう。

「先生、薬効いてる感じがしないんですが・・。辛くて辛くてしょうがないです。

どうすればいいですか?」

「うーん。まあ薬が効いているかチェックするから採血しよう。」

そう言いお爺さん医師は注射器を出した。私は血管が細くなかなか刺さらないタイプで苦戦していた。

あ、刺せた。何回か失敗したけれどやっと取れそうだ。と思ったら、お爺さん医師の手が震えている!やめて!採血で震えないで!怖い!

今文章にすると笑える話だが、当時はすごく恐ろしかった。自殺願望がある時期に血を見るだけでも怖いのにっ。


そんなこんなでここで治るなとも思えなかったので見切りをつけ、お爺さん医師の心療内科には行かなくなった。


さて、また新しい病院探しが始まるな。

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