Chapter 9 一人になんてさせないよ - I won't let you alone-
終局宣言前、グリーンウッドには60人くらいの子供たちが通っていた。
もちろん、その全員が毎日来ているわけではない。決まった曜日に来る子、月に数日しか来ない子、いろいろいた。
でも、そんな子供たちもほとんどが姿を消し、連絡が取れなくなった。
今、ここに通っているのは6人の子供だけだ。
そして、その中の一人の子……はじめて僕を「ウサギ先生」と呼んでくれた男の子、カンちゃんの両親が、忽然と姿を消した。
その日の夕方まで、いつも通りに仕事をして、カンちゃんの誕生日を祝うために、両親揃ってグリーンウッドに迎えに来るはずだった。
でも、二人はカンちゃんを迎えにはこなかった。
職場にも事情を聴きに行ったが、これといった情報は何ひとつ得られなかった。
家に戻った形跡もない。
もちろん、息子を捨てて姿を消すような理由も、二人には見当たらなかった。
そもそも、逃げる場所など、終局を迎えるこの世のどこにあると言うのだろう?
とにかく、乗っていたという車ごと、カンちゃんの両親は失踪してしまったのだ。
その日から、僕たちスタッフはカンちゃんをグリーンウッドで預かることにした。
カンちゃんには親類がいたが、終局の混乱の中で連絡が取れなくなっていた。
誰かに頼ることはできない。
この子は、文字通りたった一人だ。でも、一人になんてさせはしない。
本当に終局なんて来るのだろうか。信じたくはない。でも、来るんだろう。
日を追うごとに壊れていくこの世界の姿が、近づく終局の足音そのものだ。
でも、最後までこの子は見捨てない。ここに通ってくれる他の子供たちも。
泊まり込んだその日、僕はそう心に誓った。
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