Chapter 8 夜の町で - In the night town-
小さな、けど、もう一つ忘れられない思い出がある。
グリーンウッドで子供たちに向けた映画の上映会を企画した時、僕は、上映に使うビデオを借りる係だったのに、うっかりビデオを用意し忘れてしまった。
市内でビデオを借りることのできる店はもうそうはない。
中央区の百貨店内に最近できたレンタルビデオ店が、自分が知る限り、おそらく僕の住む町で最後のレンタルビデオ店だった。
閉店間際に店に駆け込んだ僕は、あわただしく一本のビデオを借りると、急いで家に帰ろうとした。
その時だった。僕は一人の男性の肩とぶつかってしまった。
鋭さを感じる目つきとは逆に、男性の対応は穏やかで紳士的だった。
僕は鋭さに勝手に圧倒されて緊張していたが、思ったほど怖い人ではなかった。
とりとめのない話をしばらくした後、僕らは百貨店の閉店に合わせて別れた。
あの男性はどうなったのだろうか。
タケルくんと同じで、今となってはもうわからない。
僕は彼の名前を知らない。
でも、せめて、大切な人と一緒に、おだやかな終わりを迎えていてほしいと思う。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます