Chapter7 僕の罪 -My sin-
忘れられない子がいる。
mutterで「天使を追いかけている」と呟いていた男の子だ。
タケルくん……そんな名前だったはずだ。
ずっと気になっていた。顔も知らないし、どこにいるのかもわからない。
でも、タケルくんは、誰かがその手を握っていなければ、火の中にでも飛び込んでいってしまうような危うい子に、僕には感じられてならなかった。
画面からでもわかるほどに、彼のいら立ちは強かった。
世界の終わりが近づいているというのに、いつも通りの日々を続ける人にいら立つ。
そして、自分の目的に自分の力が届いていないことにいら立つ。
僕は、ついたまらなくなって彼の呟きに返信したことがある。
「今まで通りの生活を送ることに意味を見出している人もいる」と。
そして「君は君にとって、意味のあることをすればいい」と付け加えた。
彼は随分と喜んでくれたようだった。
「やっぱり、俺、天使に会いに行くよ」そんなつぶやきを残していた。
今、思えば、僕は彼を壊すきっかけを作ってしまったのかもしれない。
タケルくんが終局の混乱の中でどうなったのかはしらない。
だけど、彼はハピネス症候群になって、今までの自分を見失ってしまった。
それは確かだ。
彼が彼でなくなっていく姿を、僕はmutterを通してただ見ることしかできなかった。
恐かった。彼をそんな状況に追いやった責任の一端は、きっと僕にもある。
タケルくん、終局の向こうで君に会えるなら、その時は君に謝りたい。
僕は、あの時、君の背中を押したことを後悔している。
あの時、君に送った言葉は、僕の罪そのものだ。
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