Chapter13 本屋さんの思い出 - Memories at the bookstore-
ある日、一人の子から「新しい本が読みたい」といわれた。
その直後、残った子供たちからも、次々と同じリクエストが飛び出した。
グリーンウッドにある本のラインナップは、もう何年もずっと変わっていない。新しい本が加わることもあったが、それはスタッフやボランティアの方が寄贈してくれた本で、新しく本を買うということはなかった。
しかも、本の状態はどれもよくない。
元気のある子の中には、勢い余って本を破いてしまう子もいるし、そうでなくても、たくさんの子供たちが手を触れて、ほとんどの本はボロボロだった。
もう終局も近い。
グリーンウッドの経営がほぼ破たんしているこの状況で、本の購入に裂けるお金はほぼなかったが、思い切って新しい本を買うことにした。
とはいえ、そう大量に買えるものじゃない。
一人一冊、今、一番欲しい本を買ってあげることにした。購入担当は僕だ。
だけど、本屋さんの数は減っていたし、欲しい本が必ずあるわけではない。
いろいろと探し歩いて、たどり着いたのが中央区にある本屋さんだった。
意外だった。この街のほとんどの本屋さんを知っているつもりだったけど、今まで見たことのない本屋さんだった。
幸い、僕はこの本屋でリクエストのあった本をすべて手に入れることができた。
思わぬ形で、かわいい店員さんを困らせてしまったけど……
でも、この店で買った本が、子供たちの手にわたることはなかった。
思い出したくはない。でも、これを語らないと、僕の終局は終わらないんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます