三、 三十代
私は夫を亡くして、未亡人となった。もう十代のときのような華やかさはなかったし、新たな恋を探しても、私は己を殺し続けて死んでいくのかと思うと、なんとも前向きになれなかった。
そんな私が選んだのは、好きなことに身を委ねるということだった。
どんな物事にも変わり者というものは存在している。
大抵の人ならば、馬鹿な女ほど可愛いと思いがちなところを、あえて賢いことに喜んで次から次へとこちらの知識を欲しがる人もいる。
それもどうかとは思うけれど、私はこうやって筆を執るようになって、ある意味救われたとも言えるだろう。この知識を求めて、住むところと仕事を与えてくれる人が現れたのだから。
その人は妻帯者で、私を女として扱ったわけではなく、あくまでも知識人として扱った。あるいは、作家だろうか。それとも、娘の家庭教師だろうか。
とにかく私に特別目をかけてくれるお金持ちで、その上女としての愛らしさや奉仕を望まない人だった。
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