第3話 井の頭恩賜公園の呪い・後

『う、うそだ!本当に弁財天さま?』

目の前で起きている事の驚きよりも……

う、美しい!この世のものとは思えないほど美しい!

これが神様というものなのか。

ほどあり、化粧しているとは思えない透き通った肌、全てを見透かされているような大きな瞳、そして少し透けている衣をまとい、エロスさえも美しい!というか、ほぼ丸見えで見ていられない。

そんな感動はよそに支配人が喋り始めた。

『会えて嬉しいよ。また色々と聞かせて欲しいけどいいかな?』

『別に構わんが、この子は新人か?随分可愛い顔しておるの』

弁財天さまに凝視され、大藪は顔が赤くなった。まるで水平線の海に太陽が染めるような感じだ。


『この子かい?新人ではなく迷い人さ。名前は大藪相馬くんだ。可愛いからって、喰わないでおくれよ。一応、いまは助手として手伝ってもらっている。』

迷い人?俺はそんな状態なのか…なんだそれ?

『ほぉ、迷い人か。若い男を間近で見たのは何百年ぶりかの』

『お、お、大藪です。はじめまして…はぁはぁ』

弁財天さまに見られると、まともに息が出来ない。

これは、恋なのか?


『大藪くん、いまのキミの精神状況は間違っても恋ではないからね。普段、人間は神様を見てはいけない事になってる。精気を吸われてしまうからね。』

やっぱり、違ったのか…


精気を吸われるだって?なんて厄介な

『これでも、力を押さえているつもりなんだけね。私が美しいからしょうがない事よ』

美しいって自覚があるのか、神様ってこんなものなのか?なんか思ってたのと違う


『さて本題に入ろう、弁財天は人間にヤキモチを妬くことはあるのかい?特にカップルなんかに』

『なぜ、そんな事を聞く?ヤキモチなんて妬くはず無かろう!人間なんて所詮は自分の子供同然だぞ』

『えっ!?』

思わず声が出てしまい、慌てて手で口を押さえた。


意外だった。ヤキモチを妬いてカップルを別れさせているとばかり思っていた。噂になるくらいだから、真実ではないのか…

『えっ!?、とは失礼な坊やだな。そんなカップルなんかにいちいちヤキモチなんか妬いてられるか!疲れるわ』

『じゃあ、噂の話は?』

『噂とはなんだ?』

『その話は僕がしよう。人間達は、弁財天がヤキモチを妬いて別れさせていると噂しているのさ。もう伝説的に広まっているよ』

『なんだと?別れさせているのは間違っていないが、理由が全く違うな』


弁財天は、面倒くさそうに理由を説明してくれた。

『別れさせているのは、男が酷いヤツの場合だけだ。二股、三股かけている男・彼女のお金を無心に使う男・体目当てが男などだ』

『そんなの見てわかるんですか?』

『我をだれだと、思っている?神じゃぞ。人間の事など全て見透せるわ!お前の事もわかっておるぞ。お前はな…』

支配人が咳払いをして、話を制止した。

『ま、まぁ、その話は後にしてさ。大藪くん、どうだい?都市伝説の真実を聞いて…感想は?』

支配人は、さっきの話を制止してからちょっと雰囲気が変わったが…まぁ今は考えないでおこう!

『感想か…本当に弁財天さまが別れさせているなんて驚いたけど、実際に会って話を聞いてみると不思議じゃないかなって神様は、やっぱり人間の事を考えてくれてるんだな。』

『うんうん、そうだね。神様も捨てたもんじゃないだろ。』

弁財天さまがちょっと怖い顔をしている

『お前が言うな!神の何がわかる。この青二才が!大藪も神様が全て人間の味方だと思わない事だ。神の中でも、生の神と死の神は気をつけるんだ!やつらは、人間の命をもてあそんでいるからな。人間の命をゲーム感覚でな。』

『ところで、大藪は人の生まれ変わりをどう考えている?』

『生まれ変わり?本当にそんな事あるとは信じられないかな…』

弁財天は、がっかりした表情に変わった。

ため息混じりの声で喋り始めた。

『はぁ…、現代の人間はそんな事まで忘れてしまったのかい』

『まぁ、しょうがないよ。いまの人間は目に見えるものしか信じない。大藪くんがいい例だ。』

『人間はな、10回生まれ変われる。11回目は動物の生として生まれ変わり、記憶を全て消される。とはいっても、邪悪な心を持ったものは例外だが…』

『邪悪な心?』

『そう、その輪廻を利用した遊びを2柱の神はやっている。』

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