第18話 真の人間の屑

 貴族へ荷物を届ける商人の護衛をしてから冒険者ギルドに帰った日。


「いやぁ、力を存分に使えるって気持ちいわぁ……」


「おっと最上さん。最近どんどん功績を積んでる様ですねぇ……全く、どんどんDランク冒険者への依頼じゃなくて最上さん宛ての依頼がドシドシ来ますよ〜(ニタァ)」


「つまりそれは金稼ぎも出来るって事だな!良いねっ!」


「んで、その大量に届く依頼の中で私が選んでおきました! えっとですね……『報酬は弾む。護衛をしろ』とだけ書かれているんですよねぇ……宛先は、隣国の貴族街からだそうです!」


 あぁ……あの商人から広まったのかな? それも隣国か……ワクワクするなぁ!?


「オケオケ。じゃ、行ってくるわ……ディメンションポータル(ど○でもドア)」


 ムオオオン……


「へっ!?転移魔法ならぬ、時空間移動魔法!!??」


「もう、その反応飽きたわ。じゃあね〜」


 はぁ……転移魔法も転送魔法も、時空間移動魔法も、俺がやる魔法で物体を消しとばす以外は軽ーくやってるのに、どんだけみんな驚くんだよ……ま、元いた世界じゃ魔法すらあり得ないけどねー。


 ポータル移動し、貴族街。


「ふぅ……ここが貴族街ね。とりあえず宛先はここらしいけど、肝心の依頼人がどこにいるか分からねぇぜ」


 しかも煌びやかな服を着た貴族達からとっても視線を感じる。それもDランク冒険者ならぬ俺の装備は、異世界転生する死ぬ前に来ていた私服だからな。


 その視線は何だこいつ? みたいな疑問の視線ではなく、兎に角汚い。ゴミを見るかの様な視線だ。


 今すぐにでもこの貴族街を丸々吹っ飛ばしたい気分だ。


 まぁ、その結果? 前回の魔王を吹っ飛ばした世界においては、一つの国を一撃で消滅させた事があるからな。怒りは抑えようか。いや、それ以前に魔王含めて世界消滅させてるわww


「んーどこにもいねぇなぁ……探すの面倒だなぁ……」


 まぁ、なんとなく声を張り上げれば見つかるっしょ。


「貴族の皆さあぁん! Dランク冒険者ですううう! 依頼者は何処に居ますかあああ! 早く来ないとぶっ殺しに行きますよおおお!?」


 と、目の前にいた。


「大声出さなくとも分かっております……私は依頼人の代理で世話係をやっている者でございます……」


「へぇー」


「依頼内容は聞いている通りであれば、護衛ですが……依頼者本人が完全引きこもり状態でして、護衛というより、外に出す事を手伝って欲しいという依頼なんですよね……」


「あーはいはいはい……そういう系は俺に任せて下さい。簡単に外に出してやりますよ」


「人の視線が嫌だとか、陽の光が嫌だとか、況してや外の景色自体が嫌だとか……私も出来る限りの事をしているのですが、外の話すら聞こうとしないのです……」


 おい待て……それガチの奴じゃん……


「いやいや! 全く問題無いですよ!? もうね、超簡単!」


「一体……何を考えているのですか……?」


 ん? 何にも考えてねぇ! いやぁ、そう言う鬱って言うの? それが詳しくどんなにやばいやつかしらねぇけど、ちょっと強引に引っ張り出せば何とかなるっしょ。




「ディズマル様……例のDランク冒険者様を連れて参りました……」


「あら、依頼してから一日も経って無いのに早いのね……入れなさい」


 あれ……女?


「ウィーッス……Dランク冒険者でーす! チィーッス」


「……おほん……貴方が私の依頼を受けた冒険者ですか……噂で聞いた人柄よりかなり違う様ですが、良しとしましょう……今回は……私の護衛という事ですが……」


 うわぁ……コイツ何歳だ? 身長と言葉遣いと身なりからして、十二〜十四歳くらいか?


「という事なんです……分かりましたか?」


「え? あ、ごめん聞いてなかったわ。もう一回説明してくれる?」


「あ……貴方という人は……で、ではもう一度説明します……今回の依頼は……」


 にしても年下かぁ……さっき強引にやるとか言ったけど、流石に女の子とも言える奴に手出したらまずいかなぁ……。


「という事なんです……あの……聞いてませんよね?」


「ん? ……よく分かったね。てめぇの話なんざ聞く耳なんて持ってねぇよ」


「なっ……!?」


「冒険者様……気持ちは良く分かりますが……どうかそこの所……」


 この小説を読んでるお前ら、この俺が今どれだけ自由で、やる気が無くて、面倒屋の屑なのか思い知らせてやるよ!


 女だからって容赦しねぇぞゴラァ! 引きこもりがなんだぁ? 鬱がなんだぁ? 原因はしらねぇけど、俺はカウンセリングじゃねえええええ!!


「あの……冒険者……様?」


 ガシッ……


「え、あ、ちょっと! 何をするつもり!?」


「外にそんなに出たいんなら……(ニタァ……)出れば良いんじゃねぇかあああ!!」


「きゃああああ!」


 パリィインッ!


「コイツやりやがったあああ! おっと……口が滑ってしまいました……」


 十二歳の女の子の胸倉を掴み上げ、窓の外へ投げ飛ばす。ふっ、リアル世界でやったらこりゃ問題もんだろうな。だが今は違う! 此処は異世界であり! 俺はもう死んだ事になってるからな! 自由なんだよ!!


「はーいディズマルさん! 外の空気は美味しいですかぁ?」


「はっ……外……外……人……光……」


 うっはwwwあまりの急な出来事に頭の整理が追いついてねぇ様だな。


「で、ディズマル様! 大丈夫ですか! 今行きますぞ!」


「行かなくて良い……また引きこもりに戻んぞ? 良いか? コイツは俺が責任を持って街へ連れて行く」


「いや、それは嘘の依頼であって……本来の依頼は……」


「んな事しらねぇ……俺はギルドの方では護衛を受けたの。てめぇらの個人的な頼みなんて聞くつもりはねぇ……」


「……なんて事だ……このままだとお嬢様が……ディズマル様! 逃げて下さい! 今すぐ!」


「光……光……人……ひ?」


 はいはーい! ディズマルさん。僕と一緒に行きますよっと!


「ディメンション・ポータル!」


 ムオオオン……。


「ディズマル様ああああ!!」





「へーい! 依頼完了!」


「うわあああああ! 人だあああ! あ……」


 あ、気絶した……ま、良いか!

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