第14話 Gランクのお仕事

「それでは早速依頼が来ています」


「良し! 何でも来いや!」


「えーっと『家の庭の雑草を抜いて欲しい』です!」


 え……それ冒険者がやる事なの?


「オケオケ。サクッとやってきてやるぜ!」


──────────────



「ホッホッホ……お主が依頼を受けてくれた者かの?」


「はいそうですぅ。よろしくお願いしまーす(ニッコリ)」


「ホッホッホ元気が良くて宜しい。それでは此処の雑草を今日一日かけても良いから抜いてくれんかのぉ。作業量分だけ報酬を支払おう」


 うわぁ……これもう雑草なんてレベルじゃねぇだろ。草の生い茂った空き地レベルじゃねぇか……


「わっかりましたぁ!」


「では、終わったら呼んでくれ」


「うし! やるか!」


 ふっ……俺はチート能力者だぜ? こんな下らねえ事でも全て対応出来るのもチートだゴラァ!


綺麗さっぱりオーバークリーン!」


 地面を一回踏みしめるだけで、全ての雑草が全て刈り取り、全面に3センチから5センチの適切な長さで芝生を生やす。


 ほらね! 良し、おじいさんを呼び出すか。


「雑草抜き、完了しましたぁ!」


「は? まだ1分も経っていないが……」


「まぁまぁ、見てください」


「はぁっ!? なんじゃこれは……全て芝生になっておる! 素晴らしい!

 これで暫く快適に過ごせそうじゃ! それじゃあ報酬は1万E(エーデル)で良いじゃろう!」


「ありがとうございますぅ!」


 エーデルって事はどうやらお金の単位は変わっていない様だな。ま、分かりやすいからいいか!


「依頼終えてきましたぁ」


「報酬は幾らでしたか?」


「1万エーデルだぜー雑草全部抜いて芝生生やして来たからな。大満足だってよ」


「あははは……凄いですね。それではもう次の依頼が来てますよ」


「なんだなんだ?」


「えーっと『娘のゴミ屋敷を掃除して欲しい』です!」


 また下らねえ依頼だな……。


「あのさ、これ冒険者がやる仕事?」


「申し訳ありません……Gランクの方は一般の依頼も受ける仕様ですので、こう言う依頼多いんですよね……又は、Gランクを信頼していない人も多く……」


「なるほどね」


───────────────


「貴方が今回の依頼を受けてくださった方ですか?よろしくお願いします」


「いえいえ〜ゴミ屋敷の掃除ですよね? サクッと終わらせるんで大丈夫です」


「そう言って貰えると嬉しいです! ではお願いします。サキ! 掃除屋さんが来てくれたぞ」


「今開けるー」


 ドバドバドバババババ!!


 ええぇ……これがゴミ屋敷って言うのかよ……最早自分の部屋に収まりきって無えじゃねぇか……良く生きてたなこの娘……。


「じゃあやっていきますねぇ」


「あー待って! 捨てちゃいけない物や、捨てたくない物もあると思うから1個1個確認しながら捨ててね」


 ひいいいい! めんどくせえええ! あー! こうなったら全部吹き飛ばしてやらぁ!


異空間アザーディメンション…」


 この空間は完全に時間が停止しており、自身が動いても何しても気付かれる事は無い! そして、娘をここから洗脳する。


『お前に大切な物は無い!』


ギュイイイン……パリーン!


「そして、オーバークリーン!」


 部屋から溢れて出る程のゴミは一瞬にして消滅させた。


「ハイ終わり」


「わぁ〜すっごーい! 全部綺麗になくなっちゃった!」


「おぉ〜何という早業! ありがとうございます! 報酬は冒険者ギルドに払っておきますね」


「ありがとうございやしたぁ〜」


──────────────


「依頼完了〜」


「あ、おかえりなさい! 報酬は10万エーデルです! 娘さんも何かから開放された様にとても感謝していましたよ」


「あはは……そりゃ良かった」


 やっぱりチートって最高〜!


「さっきから凄まじい速さで依頼を熟していますが、疲れないんですか?」


「いんや? 全っ然? 寧ろ楽しいよ」


 ただ怒りをぶちまけていた前の世界とは大違いだね! こっちでは自由にのびのびとチート生活できるわ。


「それでは、次は今日最後の依頼です」


「え?最後? これしか無いの?」


「いやぁ、それがそもそもGランクの信頼度の低さに依頼が届かない上に、Gランク冒険者の皆さんは依頼の面倒さに受けようとせず、Gランクでも歓迎してくれる高ランクパーティに寄生して金を稼いでいる方が殆どなんですよね……」


確かに面倒だよな! もしチート能力持ってなかったら俺も同じ事してたわ!!


「へぇ〜」


「それでは、次の依頼は……『引っ越しの手伝いをして欲しい』です!」


 次は力仕事か……ま、力なんて使う気無いけどね!


「はいはい〜じゃあ行ってきまーす」




「貴様がGランク冒険者か? 話は聞いているな? ここ全ての家具、骨董品、全てを引っ越し先に運んでもらいたい。

 分かってはいると思うが、貴様の目の前にいるのは、貴族だ! 少しでも物に傷をつけて見せろ! 1つに付き罰金、100万エーデルだ!」


「了解ですぅ〜じゃ、始めますねぇ」


 さっき俺は一切の力は使わないと言った。じゃあどうやって運ぶかって?全部転送するんだよ!


 シュピン……シュピン……


「おい貴様! さっきから指先で荷物に触れているが、何のつもりだ?」


「転送するんですよっ」


「はぁ? ハッハッハ……突然何を言うかと思えば……転送だと?

 Gランクが出来る訳が無かろう。まさか、物に傷を付けてしまう事を恐れている訳ではなかろうな?」


「まさか〜そんな訳無いですよぉ」




「さて、これで全部ですねぇ〜じゃ、最後に頭貸してください。転送先の情報を貴方の頭からミリ単位で収集し一気に転送するんで」


「ううむ……早く済ませてくれよ?」


「ハイハイ」


 ギュイイイン……シュピン!


「うわっ……今何をした?」


「それでは3.2.1ハイ!」


 指定した家具が一斉にその場から消える。


「な、何をした!?」


「全部引っ越し先に運んで置きましたぁ〜」


「本当にそうなのか一緒に確認しろ」


「あ、じゃあ空間転移しますねー」


「はぁ!? 転移魔法だと!? 貴様本当にGランク……」


「レッツゴー!」


 シュンッ……


 全くうるせぇ貴族だな……


「はっ! こ、此処は……な、何という事だ……全ての家具が私の理想通りに置かれているっ!

 貴様……やはりGランク冒険者では無いな……。さて、報酬だが……本来なら2万エーデルもしないGランクの雇い金だが……、悔しいがAランク以上の冒険者への報酬の規定に則り、120万エーデルをやろう」


「へっ!? いや俺マジでGランクなんだけど!?」


「Gランクが転移・転送魔法を使えるはずが無かろう! この魔法は最低でもAランクは必要だと言われている! つべこべ言わずに受け取れ!」


「あ、ハイ……」


・・・・・・・・・・・・・・・


「依頼完了〜何と120万エーデル貰っちゃいました〜」


「凄いですね! やはり限界ステータスの恩恵は流石です!」


 俺のステータスって確か運は最悪なのに、世界の常識がそれを助けてくれている……。


 全く優等生なんて困っちゃうなぁ!

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