第4話

『 6月27日金曜日です


 本日の天気は朝までは晴れですが昼以降は天気の雲行きが怪しくなるかもしれません

 折りたたみ傘を持つと便利でしょう』


 結局月曜日に黒木田くろきだ はなから隆一りゅういちのスマホに

『 心配しないで』とメッセージが送られて以降特に音沙汰おとざたが無かった。


 先程の天気予報を聞き隆一は自室に戻り自分のカバンにお気に入りの赤色の折りたたみ傘を入れた。

 その後、ティッシュと丸めた紙を使いてるてる坊主を作ったと思いきや、逆さまに吊るしそして自室を出た。


 隆一が家を出ようとするとスマホにメッセージが届いた。相手は噂の黒木田 花である。


『一ノいちのせくんへ


 今日の午後の天気怪しいみたいね。


 もしかしたら雨が降るかもって期待してたりしてる?してたら嬉しいなー。


 あ、降ったらこの間の教室に放課後来てね♡


 花より』


 雨の予報がある日は必ずと言っていいほど黒木田 花は隆一へとこのようなメッセージを送ってくる。

 そして隆一はこれを見ると心無しか学校へ向かう速度が早まるのである。


 普段よりも15分も早く学校についた隆一は教室に荷物を置き、図書室に行こうとした。


 のだが運悪く教室でよく騒いでる人達がゾロゾロと教室に着き始め、その中に最近隆一に良く絡むようになった白百合しらゆり 百華ももかの姿があった。


 隆一の姿を確認した百華は、一緒に登校してきた友人に一言声をかけたと思いきや、小さい体をめいっぱい使いダッシュで隆一の元へと駆け寄った。


「あれ?一ノ瀬じゃーん!

 なになに早くなぁい?

 私に直ぐに会いたくて早く来ちゃったとか?

 あはははははっ」

 そしていつもの調子で隆一へと話しかけた。


「色々あってね。

 決して白百合さんに会いたくて早く来たとかそういうのじゃないから」

「あははーツンデレっていうやつかー」

「違う」

 ここ最近ずっと百華に絡まれて慣れたのか隆一はスパスパと切り返していた。


「そんでー?どしてこんなに早いの?


 お姉さんにおしえてみなさいよー?

 ほらほらー」

「白百合さんには関係ないから…」

「またまた〜、話せば楽になるかもよ?」

 一向に食い下がる気配のない百華に徐々に隆一は苛立ち始めた。


「それはただ単に白百合さんが聞きたいだけでしょ

 教えたくないんだよ」

 徐々に口調が強くなり始めた隆一に、からかうように百華はこう言った。


「かと言ってまた噂の『 黒木田 花』さんだったりして〜

 なんてそんな…こと…

 どうしたのさ、そんな怖い顔して」

 この発言を受けて隆一の様子が変わった。

「……さい」

「え?」

「うるさいっ!!!」

 我慢の限界が来たのだろう。

 隆一は大声で百華に対して放った。


「え、あの…ごめん…ごめんなさい…

 そんなに起こるとは思わなくて……」

 百華はまさか隆一がここまで怒るとは思っておらず、戸惑っていた。

 その様子を気にする様子も、また先程の隆一の大声が気になって寄ってきたクラスメイトにも気にする様子もなく隆一は続けた。


「『 黒木田』さんに関しては白百合さんには関係ないだろ!!何なんだよ!!!」


 積もりに積もった隆一の苛立ちが爆発し、止まらなかった。

 だがいい終わった後に隆一は我に返り冷静になったのか、自分が何をしたのかを把握し始め青ざめていった。


「あの、ごめん白百合さん…

 ちょっと色々あって当たってしまって…」

 なんとか隆一が弁解しようとするも、百華だって女子なのである。

 男子からの強い口調で怒られたのが辛かったのだろう、百華は泣いていた。


「ごめんね…そうだよね…

 簡単に踏み込んでいい問題じゃなかったよね

 次から気をつけるね…

 あはは…何勘違いしてたんだろ……」

 そう言いながら百華はその場から走り去った。



「くそっ…なんであんなこと言ってしまったんだろう」

 そう言いながら、すっかり落ち込んでしまった隆一は先程の騒ぎで出来た人垣をどかし、自分の席へと着いた。


 とここでふと隆一は疑問に思ったのだ。

「なんで白百合さん、黒木田さんの下の名前知ってるんだろう」

 月曜日に百華と 九十八にたらず 九里くりに話して以降ちょくちょく隆一は2人に相談はしているが、百華には下の名前は伝えていないのだ。


 恐らく九里が話の流れで教えたのだろう、と隆一は深く考えず放課後雨にならないかなーと思いながら外を眺めていた。


 そして結局、先程走り去っていった百華は今日1日戻ってくることは無かった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る