第3話

「黒木田さんがいないってどういう事!?


 じゃああの雨の日にあったあの子は誰なの!?」

 隆一は九里くりに我を忘れて掴みかかる。

 九里の発言がよっぽどショックだったのか隆一はかなり錯乱している様子だった。


 九里はなんとか隆一を落ち着かせようと考え、正面に立ち、

「落ち着け隆一!!

 たしかに『黒木田』っていう子はいないとは言ったけどにいないとは言ってないぞ」

 九里が必死に隆一の両肩をがっちり掴みながらさらに続けた。


「あくまでそれはでの話だ

 1年かもしれないしはたまた3年かもしれない

 その子とデートしたんだろ?

 また会う約束したんだろ!?


 その時に事情を聞けばいいじゃないかよ!」

「そうだよな…うん、そうだな!

 また会った時に聞けばいいんだよな

 ありがとう九里!!」

 九里の熱い助言に、隆一は徐々に正気を戻しやがていつもの調子に戻っていくようだった。


 それを見て九里はホッとしていた。

「ふぅ、世話のやけるやつだな」

「ん?なんか言った?」

「なんでもないよ〜、ささっ

 そろそろ自分らの教室向かおうぜ

 そろそろホームルーム始まる時間だぞ」

「げっ、話しすぎた!

 急ごう!!」

「おーう」

 そう言って2人は校舎の中に走って入っていった。

 そして2人は走った甲斐あってなんとか無事ホームルームには間に合ったそうだ。



 その後隆一のクラスは数学、現国、化学、英語と午前の授業を消化しそして昼休みになった。


 昼休みのチャイムがなると普段はすぐに教室を出ていく白百合しらゆり 百華ももかが隆一の元へとチャームポイントである金髪のポニーテールを揺らしながら歩いていきそのまま隆一の元へと向かった。


 その隆一はと言うといつものように家から適当に持ってきた本をコンビニで買ってきたパンを頬張りながら、読もうとしていた。

 だがそれに構わず話しかけるのが百華である。


「ねね、結局朝は何を話していたの?」

「なんだ白百合さんか

 なんでもないよ」

 男同士で話せる内容があるように、隆一にとっては女子に恋愛ごとに関することを話すのは気恥しいようでさっきから目線を合わせようとしていない。


「えー、でもデートって聞いたら女子からしたらやっぱ気になるよねー


 ねぇ誰よ教えてよ、こっそりでいいから」

 隆一の願いとは反して百華はグイグイ話しかける。やはり女子としては恋バナが大好物なのだろう。しかも周りが見えなくなるほどに。


「あのさ…白百合さん。

 言い難いんだけど1ついい?」

 心做しか隆一の態度がよそよそしい。

 だがそれに百華は気づかずにそのまま続けた。


「小さいのが当たってるんだけど…」

 隆一の腕が百華の胸に包まれていたのだ。

 話に夢中になり徐々に密着していったのだが、百華は気づかず隆一の我慢にも限界が来たようである。


「小さいとは失礼な!

 慎ましやかと言いなさい!


 軽くさっきの話聞いたら許そうと思ったけどもう徹底的に聞いてやるんだから!」


 この百華の女子特有の恋バナ魂の気迫に隆一は根負けしてしまい

 朝、九里に質問されたようなことを隆一は百華にも答えた。


「ふーん、『黒木田』さんねぇ

 その子が一ノ瀬がデートした相手ね」


 んでその子がこの学年にいないかもでちょっと不安定になってると」

 一通り聞き終わり百華は隆一の話を整理していた。

「まぁそうだね

 なんで雨の日しかダメなのかって知りたい」

 隆一はそれに頷き、黒木田 花についての謎を考えていた。


八十九にたらずの奴、ややこしいことにしやがって」

 と、隆一に聞こえない声で百華はボソッと呟いていた。

 もちろん隆一は気づくはずもなくブツブツと考えていた。


「あー、そろそろ昼休み終わっちゃうね

 なんか動きがあったら教えなさいよー

 それと本読もうとしてたのに邪魔しちゃってごめんね

 今度なんか奢るから」

 そう言って花は自分の席へと戻っていった。


 彼女が戻ったことを確認した隆一は再び本を読む態勢になった。

 その彼女はというと自分の席に戻り、急いでお弁当を食べては時々隆一の方を見たりとやや不自然な行動をしていた。

 もちろん、隆一は花が自身を見てるなんてことに気づくはずもなかった。

 2人がそうこうしているうちに昼休みが終わり午後の授業が始まろうとしていた。


 ふと隆一は気になり確認すると自身のスマホに一通のメッセージが届いていた。

 相手は噂の黒木田 花である。

 隆一はドキドキしながらメッセージを開けるとこう書かれていた。


『一ノ瀬くんへ


 どうやら私のことを探してるみたいだけど心配しないで


 また雨の日の放課後あの教室で会いましょう


 あなたは私を知らないかもしれないけれど意外と私はあなたを見てるのよ


 花より』

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