第2話

『6月23日月曜日


 先日の雨が嘘のように晴れた1日となるでしょう』


「てことは今日は黒木田くろきださんとのデートないってことか」

 制服に着替え、朝食を食べながら天気予報を見ていた隆一りゅういちは呟く。


 そこに隆一の赤色のスマホに通知が届く。

 相手はその噂の黒木田 はなである。


『一ノ瀬くんへ


 今日は晴れだね。

 デート出来ないのは残念だけど天気がいいのはいい事だよね。


 元気に1日頑張ろうね


 花より』


 とメールが送られていた。


 隆一と彼女との関係は「雨の日限定の恋人」というものであり、その内容と言うと

 花曰く


「雨が降った日はデートしましょう


 学校がある日も休日でも


 私たちがお互いに雨を好きになる時まで」

 ということである。


 言われた時は隆一は疑問に思いつつも、一目惚れした花と一緒にいられる理由が出来たこともあり結局その場でその関係を承諾した。


 花が雨を好んでいない理由はまだ明かされていないがそのうち話してくれるだろうと思ったのだろう、隆一は深く触れようとはしなかった。


 そして現在へと至る。

「黒木田さんに会えないのは残念だけど、多分学校で会うだろう。


 さてと、飯食ったし向かうか」

 隆一は食後のコーヒーを一気に流し込み、意外と苦味が強かったことに驚きつつも、学校へ行く楽しみが増えた喜びで直ぐに苦味など忘れたかのように爽やかに家をでた。



「よお、隆一元気してたか」

 隆一が登校してる途中、後ろからある男子が後ろから話しかけそのまま肩を組んだ。

「あぁ、九里くりか。

 お前こそ元気してたか?」

 それに気さくに応じる隆一。

「当たり前じゃん

 そんなにすぐ変わらないっしょ!」

 さらにそれを返す九里。


 隆一と 九十八にたらず 九里とは中学時代からの仲であり、今でこそクラスが離れてしまったが登校中や校内で会えばこのようなことは日常茶飯事なくらいには仲がいい。

 すれ違うだけでも同じことになる。

 つまりは親友のようなものだ。


「ところでさ、昨日の雨やばくなかった?

 俺ずっと家にいてゲームしてたけど、隆一はどうしてた?」

 そして話題は昨日の話へ。

「あー、昨日はちょっと用事で外に出ていたんだよね」

 返答に困りつつも隆一はきちんと返した。

 のだがやはり引っかかるところが思ったのか

「え、昨日結構降ってたじゃん

 なんの用事だよ」

 と九里は隆一の回答を食い気味に聞き返した。


「九里にならいいかな…


 そのな、実は昨日デートしてたんだよ」

 隆一は親友である九里になら話してもいいかとデートしていたことを話した。

「ほうほう、お前がデートねぇ

 んでお相手は誰よ、確か隆一の好きなタイプって小柄な子だったよな


 同じ学校のやつか?白百合じゃないよな?

 あいつ気が強いから隆一とは合わない気がするんだよなー」

 隆一がデートしたと言った時、九里は驚きつつもまるで自分の事のように喜びついつい質問攻めをした。

 その様子を見て隆一は九里に話してよかったと思い、また九里と親友でよかったとも思ったようである。


「私がどうしたの?」

「んげ、チビギャル……」

「あ?誰がチビギャルだコラ


 ボコすぞ」

「ボコしながら言うのやめて!!」


 まもなく校門に到着するの言うところで歩きながら隆一と九里が話してると、話の話題になったのを気になり白百合しらゆり 百華ももかが会話に入ってきた。

 ついでに小さい体も利用し二人の間に入っていき、チビギャルと百華に言い放った九十八にたらず九里を百華は容赦なく殴り始めた。


 やがてスッキリしたのか百華は

「んで私がどうかしたって?」

 と改めて聞いてきた。

「いやさ、隆一がさ昨日デートしたらしいんだけどさ相手誰かなーって思ってさ」

 と復活した九里が百華の質問に答える。


「あー、昨日は楽しかったよ」

「ん?何を言ってる?お前には聞いてないって


 おい、隆一いい加減なんか言えって!何ボーッとしてんだよ!」

 百華が意味不明な回答をする中、隆一は先程の感動に未だに浸っていた。

 九里は戸惑いながらもしかたないなぁと言いながら隆一の背中を叩き無理やり正気に戻そうとした。


「んん!!!


 あれ?なに?どうかした?」

「おまえ……」

 無事に正気に戻すことは出来たのだが、話をまるで聞いていなかった様子で呆れていた。

 が、気になることはいつまでも気になるのだろう。

 九里はまた隆一に質問した。

「それで結局昨日は誰とデートしたのさ


 流石にこいつはないだろ

 なんか楽しかったとか言ってるが」

 と百華に指さして言った。

「こいつって酷いなー

 またボコってあげようか?」

「話が進まんからどっかいってろ!」

 そう言って百華を輪の中から追い出した。



「んで誰よ」

 百華が遠く行ったのを何度か確認し九里がまた聞いた。

「んー、『黒木田 花』さんっていう子


 学校ではあんま見たことないけど、彼女の上履き見た限り同学年だったよ

 俺らと同じ青色だったし」


 隆一立ちが通う高校は学年ごとに上履きの色が違うため学年の区別がしやすいのだ。

 1年は赤色、2年は青色、3年は黄色というようになっている。



「んー、それちょっと引っかかるわ」

「なんで?」

 九里がやや疑問に思いながら考え込み、やがて確信に至ったのだろう。隆一にこう言った。



「いやさ、いろいろあって学年名簿よく見るんだがな


 少なくとも同学年に『黒木田』って女子いなかったと思うんだよ」

 それを聞き隆一の表情が青ざめていくのを九里は見てしまい言ったことを後悔したらしい。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る