湊の休日


 夏休みや春休みなどの学校が決めた長期休みではなく、国によって決められた大型連休のゴールデンウィーク。


 今年は祝日の間に平日が挟まれることなく、一週間が丸々休み。

 全て家で一人のんびりしている予定だった。


 遊んだとしても妹の楓とだけ、それ以外は絶対に家から出ない……なんて心に決めていたのに、初日から家の大掃除になり、三日目には真っ白なドレスをきた綺羅坂が家にやってきたり。


 向かいに住む雫は、毎年この時期は三重の実家に帰省していて会うことはないが、既に俺が予定していたものとは違う連休になっていた。



 しかし、何よりも予想外だったのは……


「だから学校が始まってから、タイミングを見てデートに誘いたいんだけど、いい方法ないかな?」


「……お前さ、なんで毎日俺の家に来てんの?」


 学園の王子、スマイル製造機の荻原優斗が毎日のように俺の家に来ては、意中の女子をデートに誘う方法について相談をされていることだろう。


 今日も朝食を食べ、リビングで一息ついている時に呼び鈴を鳴らす音が聞こえ、外を見ると案の定優斗だった。




「こんなこと相談できるのは湊だけだって春休みにも言ったじゃないか!」


「……いや、断ったよな?」


「……でさ、俺の作戦は、連休明けにある行事の―――」


「聞けよ」


 自分に都合の悪い話になると、途端に話しを変える優斗に呆れつつ、今日もこの話しは長くなることを確信した。


 なぜ貴重な連休を、俺はこんなイケメンと過ごさねばならんのだ。

 一旦優斗を部屋に残し、飲み物を取りにリビングへ戻る。


「兄さん、今日も優斗さんの相談事ですか?」


「……恋する男子生徒は忙しいんだとよ」


「そうなんですか……兄さんに恋はまだ早いですね」


 妹はとても大人でした。






 部屋に戻ると、再び優斗の恋愛相談が再開される。


「でな、神崎さんは連休中は実家に帰ってるみたいで、場所は知らないんだけど……たぶん連休の間に家にいないのは俺にしか伝えてないんじゃないか?」


「……そうか、良かったな」


 ……知っているとは言えない。

 


 その後も、半分以上の話を聞き流し、所々で適当な返事を返していると不思議なことに会話が成立していく。

 そんな会話を一時間程繰り返していると……



「そうだよな!やっぱり来週の日曜に誘うのが一番いい方法だよな!」


「え?……ん?」


「ありがとう湊!これで誘うのにためらいが無くなった!」


「い、いや、気にすんな……うん、来週だな」



 何かとんでもないことをやらかしてしまった気がする。

 妙にすっきりとした表情をしている優斗に「聞いてませんでした」とは言い出せず、そのまま話を合わせていくことにした。

 

 

 来週の日曜にデートの誘うと言っていたが、そのイベントに俺が巻き込まれぬよう注意して過ごさねば。


 

 そういえば来週は学校で何か重要なことがあった気がしたのだが、今はそれが何かを思い出すことはできなかった。

 

「それじゃあ明日は、誘った後のプランについての相談をしに来るから!」


「……二度と来るな」


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