死にゆくものに愛を

KS

第1話

「ハァハァ…クッ…アッハァ」

私は急いで走る。ヤツラに追いつかれないように。心臓が波打つ、胸がひどく痛い。私はぐちゃぐちゃの頭で考える。

 (どうしてこうなった?どうして‼︎)

 そして私は思い出す。

 あぁきっとあの日から私たちの 世界は狂い始めたんだ。

 あの暑い夏の日から。


①終わりの始まり。

 

 カナカナカナとひぐらしがなく、もうだいぶ日が落ちてきたな。そう思い私は机に突っ伏した顔を上げて帰り支度をする。何でこんなことをしているかというと、私は高校最後の試合であっさり負け部活を引退したからだ。

必死に取り組んでいた部活もなくなり勉強もしたくなかったので、ただただ放課後は机に突っ伏している。

「あら、やっと起きたのね。」私は目を擦りながら聞き馴染みのある声の方に目を向ける。

「あれ、美弥子まだ帰ってなかったんだ。」

彼女は戸田美弥子、容姿端麗で文武両道少しキツイ口調だけど優しい子。高校でできた初めての友達だ。

「貴方のことよ。どうせクラスで寝てると思ったわ。さぁ早く帰り支度を整えて、先生がSHRで変質者が出たと行っていたんだから早く帰るわよ。」とせかしてきた。

「変質者?そんなこといってたっけ?」

「貴方という人は…」呆れられてしまった。

「早くしなさい!」とぐいぐい押してくる。

「わかったわかったよ。」とせかせかと準備を終える。

廊下を歩きながら少し振り向きニヤニヤしながらこう聞いた。

「ねぇ、もしかして私が起きるの待っててくれたの?」

「なっ、そんなことないわ!たまたま、そうたまたまよ!」彼女は顔を赤らめた。ふふ可愛いなあ。

「そんなこと言ってると置いていくわよ。」と彼女は歩く速度を少し上げた。 

「待ってよ〜」そういいながら彼女を追いかける。こんな幸せな日がずっと続けばいいのにと思いながら。

 私たちは校門を出ていつもの帰り道を歩く。

「ねぇねぇ、さっき言ってた不審者ってどんな人だったの?」

「えっと確か人を噛んだとか言ってたかな。」

「うわぁ、怖いねそれ。」と言って彼女に抱きつく「ちょっとやめなさいって。」私たちはそんなことを言い合いながら歩いていた。

「じゃぁ、私ここ曲がるから気をつけて帰るのよ。また明日」

「また明日!」そう言って私たちはわかれた。

彼女と別れた交差点から家までは少し歩く。私はボーとしながら歩いていた。すると目の前にフラフラしながら歩いている男の人が来た。私は少し横にずれて避けようとした、すると男はいきなり腕を掴んで噛もうとしてきた。

「ひぃ」私は手を思い切り振り払い走った、後ろを振り向くとァァァァアと叫び声を上げながら男も追いかけてきた。男の目は血走っていて口からは唾液が垂れ流していた。

(殺される。きっとアレが美弥子の言ってた不審者だ。)

私は必死に走った。家に着いた時にはすぐそこまで迫っていた。

「お母さんあけて‼︎」ドンドンと扉を叩く。

「どうしたのそんな慌てて?」と母に聞かれたが、無視をして扉に鍵をかけた。外から扉を叩く音がする。

母親に事情を説明して警察に通報してもらった。

私は自分の部屋に隠れた。警察も来てくれたらしく男は連行されていった。

テレビでは緊急放送がされていた。

『謎のウイルスによって、人が凶暴になっています‼︎外に出ないよう気をつけてください‼︎感染者と粘膜接触をするとウイルスに感染する可能性があります‼︎』もしかするとあの男は…

私は怖くなって、考えるのをやめた。

 

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