兄と双子 前編
「兄ちゃんのバカ!変態!!ドスケベメガネ!!」
「だから、わざとじゃないって言ってるだろう!?あと僕はメガネかけてないし!!」
それはとある日の休日拓真の自宅にての出来事である。寝汗を流そう風呂場にいき扉を開けた際に何故か拓真の妹の一人の恋がいたのだった。
当然服など着てはおらず産まれたままの姿であった。そしてもちろん拓真の方もフルチンである。裸同士で鉢合わせたということだ。
「なんでお前がいるんだ恋!?ここは僕の家だぞ!?」
「昨日言ったじゃん!
遊びに行くからねって!憶えてないの?」
昨日の夜、そういえば電話で言ってた気がする。拓真は昨夜のことを思い返す。
その時は麗子と色々やっていたこともあって空返事をしていた。でもまだ朝である。遊び行くとしても早すぎる。
産まれたままの姿の恋は女子高生ということもあり、胸などは幼さがありつつもやはり大人の女性に近づいているという肉付きを感じた。
昔よく一緒に入ってた時とは違っていたと拓真は彼女の成長を感じていた。
「というか、いつまで見てんのよ!このエッチ!それに実の妹になにを見せてのよ!!!」
風呂桶を思いっきり投げつけた。
「ぐはっ!!」
頭にクリティカルヒットして痛みで倒れてしまった。さすがに音が響いたのかもう1人の妹の愛までやってきた。
「どうしたの恋ちゃん?」
「あっ…」
脱衣所を開けると兄と双子の姉の恋が裸でいて目の前には兄のナニが主張しておりカオスな状況であった。彼女の目からハイライトが消えて思考が停止していた。
「ま、まて!愛!!これは!!」
拓真は必死に近くにあったタオルで下半身を隠すも手遅れである。愛は何も言わずに脱衣所の扉を閉めてどこかに言った。
すると数秒後にとある人物を連れてきていた。
「何してるの?たっくん?」
妻の麗子が笑顔で問いただす。しかし目が全く笑っていなかった。背筋が凍るような感覚に思わず正座をした。
「れ、麗子…。これはねあの…」
「聞いてよ!お義姉ちゃん!!私がシャワー浴びてるのにこのバカ兄貴は裸で入ってきたんだよ!!」
お、お前…。何を事をややこしくしようとしてんの?大体不可抗力だ。別に実妹の身体を見て欲情するような変態でもないし。
ただ、その言葉が火に油を注いだのだった。
「ねぇたっくん。何か言うことはない?」
「あ、あの、その…すみませんでした!!」
もう訳も分からずに麗子に土下座をしていた。はたから見たらほぼ裸の状態で妻に土下座をしているという珍妙な格好に映るだろう。
だが今この状況ではそんなこと考えることもなかった。
「どうして私に謝るの?普通は恋ちゃんに謝るよね?ねぇ?どうして私謝ったの?何かやましいことでもしたの??
ねぇ答えて?たっくん?」
笑顔からどんどん冷たい表情に変わっていく麗子。その顔を見ていて拓真だけでなく恋も少し震えていた。
「麗子さん…聞いてくれ…これは不可抗力なんだ…。まさか妹たちがもう来てるなんて思わなくて寝汗を流そうとして風呂場に行ったらいたんだよ!」
何も答えになっていない。麗子の表情が怖くてしっかりと言うことができていなかった。
恋はバスタオルを身体に巻いて2人のことを気まずそうに見守っていた。
「でも入ってるってわかるよね?なんでそこで扉開けたの?」
「いや、それはあの…。寝ぼけてたと言いますか…」
「ふーん。じゃあ寝ぼけてたら女子トイレにも入っていいの?女湯にも入っていいの?」
「ご、ごめんなさい!!僕が悪かったです!!許してください!!」
めいいっぱいこれでもかと言うくらいに土下座をした。そして怖くて顔が上げられなかったどんな表情をしているのか想像するだけでゾッとする。
だが麗子はしゃがんで拓真の肩に手を置いた。
それに驚いて思わず顔を上げた。麗子の表情は先程とは一変して穏やかなものに変わっていた。
「ふふ、冗談よ。わざとじゃないくらい私にもわかっているわ」
嘘だ。目が本気だった。殺気的なオーラが出ていた。で、でも許してもらえることがわかってほっとしていた。
「ごめんなさいで済むなら警察は要らないわよね?」
「え?」
すっと拓真の耳元に近づいて囁いてくる。
「後でお仕置ね…たっくん」
囁いたあとニコニコした顔で麗子は拓真を見ていた。その言葉を聞いたあと、拓真からは恋と愛が引くほど冷や汗が出てきていたのだった。
それから麗子はリビングの方に向かい、愛は兄である拓真にふんっとそっぽを向いて麗子の後を追った。脱衣所には恋と拓真のふたりだけが取り残された。
力が抜けていったのかそのまま正座からうつ伏せにぬるっと変わっていった。涙出てきていた。確かに妹がいるのに扉開けたは悪いけど、お仕置きされるほどしたのだろうか。
拓真は悲しさに涙が流れていた。そんな兄を見て気の毒に思ったのか。声をかけた。
「なんか、ごめんね兄ちゃん…」
「わかってる…何も…言うな……」
某漫画のとある博士のセリフのような言葉を放つがそれに恋は突っ込むこともしなかった。
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