妻の様子がおかしいようだが?

 あれからお昼ご飯は、家で僕が絵里の分も合わせて作り食べることにした。

 絵里の方は先程までの行動がまるでなかったかのように振る舞い、うちの実家にある少し古めの据え置き機でゲームをしていた。

 僕はと言うと、ゲームをやっている絵里と画面をコーヒーを飲みながら見ていた。


「やっぱ衣装は3の時がいいよね!4以降のやつはどうも好きになれないわ」


 絵里は戦国武将が3人称視点で戦う某ゲームをやっていた。

 このソフトは僕のであるが、よく2人で対戦などしていたのだ。


「今のも僕は好きだけどね。井伊直虎の衣装とか最高だし…」


 そんなこと言っているとジト目で絵里がこちらを見てきた。なんと言うか、冷たい目というのが正しいのだろうか、軽く軽蔑されていた。


「拓真の変態。やっぱり大きのが好きなんだね?相も変わらず」


「相も変わらずってなんだよ!?たまたま好みの人が巨乳ってだけだろ?」


 絵里はため息をついて画面の方に戻っていた。三人称視点で進められていくこのゲームは開放感があって僕は好きである。

 ただ1つ言いたいのは、女性キャラの衣装が過激なところもあり、そういう目で見てしまうこともあった。

 そんなことはさておいて、先程までの変な空気とは一変して普通に絵里とゲームをやっていった。

 あんなことをされたのにと思われるかもしれないが、やはり前提として幼馴染であることが大きい。

 3時頃に妻たちが帰ってきた。うちの母親は満足したような顔をしており、妹たちもなにか買ってもらったようで、同じく満足した顔をしていた。

 しかし、どうも妻はあまり浮かない顔をしていた。


「それじゃぁ私は帰るね。またね拓真」


「あ、あぁ…またな」


 家族が帰ってきた時は同時に絵里は帰っていった。絵里は最後に妻の方を見て不敵な笑みを浮かべ、うちの母親と妹たちに挨拶をして帰っていった。

 僕は絵里の不敵な笑みによってさらに気になってしまった。


「麗子?一体何があったんだ?」


 気になり、妻に尋ねてみた。


 一体2人の間で何があったのだろうか、僕は後で尋ねることにしてみた。



 そして、夜になり僕の部屋にて2人っきりになる機会があったので、先程2人で話していたことを尋ねてみることにした。


「麗子どうかしたの?」


「絵里さんとなにかしてたの?」


 声色が明らかにいつもとは違い冷たさを感じていた。明らかに怒ってると伝わってくる。

 ただやましいことなど一切してないし、ゲームやってる姿を見てたくらいなものである。


「別に何もしてないよ」


「そう?」


 そもそも絵里とは幼馴染で付き合いもかなり長い。今更恋愛という感情は湧いては来ない。

 そもそも所帯持ちになった拓真にとってはそういう関係になってしまうのは良くないとわかっている。


「絵里さんは幼馴染だし気心もしれてるからね…」


「何が言いたいの?」


「別に…」


 麗子からの追求が止まらず拓真も少しムッとしてしまう。それに絵里が言っていた疫病神トラブルメーカーという言葉も気になってしまう。

 あの言葉の真意が汲み取れない。何か2人の間に事情があったのか分からないが拓真にはそれが分からない。


「何か絵里とあったの?」


 躊躇う気持ちはあったが聞いてみることにした。


「ううん。別に絵里さんとは何もないよ…何もね…」


 少し暗い表情になって拓真から顔を逸らした。そしてそれ以上拓真への追求は無くなった。

 特に顔を合わせることなく、なんとも言えないような沈黙が2人の空間に流れていく。


「拓真」


「何?」


 静寂を切り裂くように麗子が口を開いた。そして拓真は名前を呼ばれた返事をした。

 振り向いた時に彼女の顔が近づき軽く唇が触れ合った。


「何でもないよ?」


 麗子はそう言って笑っていた。









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