来訪者は何かとめんどくさい 後編
結局我が愚妹たちはうちに泊まることになったが、面倒な部分もあればある意味助かった部分もある。
もしこのまま帰られていたら、今日あったことの追求から逃れられないところであったのだ。
「兄ちゃん兄ちゃん」
「なんだ?」
「何も無い」
人を呼んでおいて何も無いとは…。完全におちょくっているようだった。僕が貸したジャージが丈や大きさがあっていないのか、ブカブカであった。
「なら呼ぶな」
「ねぇ兄ちゃん兄ちゃん」
「…」
「兄ちゃんってば!!」
「なんだよ?」
なんてめんどくさい妹なのだろうか。同じ妹でも愛はソファで僕の膝を枕に本を読んでいて、全くの無害である。風呂に入ってこちらもジャージ姿であった。
しかしこの2人は双子なのにどうしてこうも性格が違うのだろうか。
容姿はほぼ同じであるのに、雰囲気などは全く持って違う。
「私も膝枕やって!!」
「愛がいるから無理だって」
僕の膝は殆ど愛の頭が場所をとっており、隙間は僅かであった。
それに対して恋は頬を膨らませてムスッととしていた。
「愛ばっかりずるい!!私も膝枕!!!」
「残念ね恋。兄さんの膝枕は私のもの」
本から視線を恋の方へと移した愛はドヤ顔をして恋を煽っていた。
それにムカついた恋は愛の頭を僕の膝からのかそうと必死で動かしていた。
しかし、恋の意図とは反して全く愛の頭は動かない。僕の膝に頭の重みを押し付けていたからである。
「もう!私が膝枕してもらうの!!あんた頭重すぎ!!」
「恋と違って脳みそ詰まってるから」
「はぁ!?どういう意味よ!!?」
「お前ら喧嘩するなよ…。だいたい僕の膝は枕じゃない」
こんなくだらないことで喧嘩をするとは全く恥ずかしいものである。
しかし約1名この喧嘩を微笑ましく見ている人物がいた。
それは僕の妻の麗子である。妻は僕と容姿が似ている妹たちとのやり取りを見るのが好きらしいのだ。妻は妹たちには嫉妬をしたりしない。
妻にとっては可愛い義妹であるのだ。妻にも兄弟はいるが、みんな年上であり、妻は末っ子であるのだ。
だから、妹ができたのは妻にとってはこの上ない喜びであるらしく、うちの愚妹たちを必要以上に甘やかしてしまっているのだ。
だからか最近わがままに拍車がかかっている。
「ほんと、たっくんたち仲良いね」
「これのどこが?可愛げ無い奴らだよ」
「たっくんの嘘つき。本当にそう思ってるなら、そんな顔はしないよ?」
そんな顔とはどんな顔なのだろうか。ふと鏡の方に目をやると、どことなく面倒くささ感じても、嫌悪感を抱いておらず満更でもないような僕の顔であった。
「「兄ちゃん(さん)は私のこと嫌いなの?」」
2人がここぞとばかりにユニオンして僕に問いかけた。その目は捨てられた子犬のような目をしていた。
「別に嫌いじゃ…ない…けど」
「あは!兄ちゃんちょろ!」
「兄さんはシスコン」
手のひらを返したかのように妹たちは僕にそのような言葉を向けてきた。
本当に可愛げのない奴らだよ。そして僕自身も恋の言う通りちょろすぎると感じてしまった。
「でもね私達は兄ちゃんのこと大好きだからね!」
恋がそういうと2人は僕に抱きついてきたのだった。抱きつかれるとどことなく昔を思い出していた。
母親はいつも仕事のため、家には僕と妹たちの3人だけであった。それは恋と愛が赤ん坊の時でも例外ではなかった。
保育園に預けられて、母親の代わりに僕が2人を迎えに行き、家での面倒はずっと見てきた。もちろん絵里や絵里のお母さんにも助けてもらいつつ、過ごしてきたのだ。
だからなのか、2人は僕に懐いている。今までずっと一緒にいたから。今はこんな感じだが昔は僕の袖を掴んで側を離れない子たちであった。
2人の前では恥ずかしくて言えないが、2人とも僕の愛する可愛い妹たちである。
それだけはずっと変わっていない。
「たっくん愛されてるわね。仲のいい兄妹って羨ましいな」
妻は僕たちの姿を見てそう言った。妻の言葉にはどことなく羨望のようなものが含まれていた。
妻たちの兄弟の仲についてまた後日詳しく言いたいと思うがここでは控えておこう。
「さてと、そろそろ夜遅いし、寝るか?」
「そうね。2人のお布団は応接間の所に敷いておいたわ」
「ありがとう麗子お義姉ちゃん」
「ありがとうございますお義姉さん」
「じゃあおやすみ」
「「おやすみなさい」」
2人は欠伸をしつつ布団のある応接間の方へと向かっていったのだった。
僕たち夫婦は寝室に入ったのだった。
「たっくん」
「どうしたの?」
突然僕の名前を呼んだ妻に僕は問いかけてみた。声音の感じでは決して怒ってるわけではなかったが、どことなく緊張感の感じるものであった。
「ふふふ」
「ん?」
突然不敵な笑みを浮かべたかと思うと妻は僕に抱きついてきてベッドの方へと押し倒してきた。
「れ、麗子?どうしたの?」
「今日はなかなかたっくんに触れられなかった反動かな」
そう言うと麗子は強引に僕の唇を塞いできたのだった。
妹たちに嫉妬しないとはいえ、今日は1日2人の時間がなかったからか我慢が出来なくなったのであろう。
だから、僕も抵抗をすることなく受け入れた。甘くそして深い口付けで身体が火照ってきた麗子を止めることなど誰も出来なかった。
行為が始まろうとした時に、ある音で一瞬で静寂に包まれた。
ドアのノック音。それは誰のものか検討はつく。妹たちである。
さすがに止めて、ドアを開けた。
「どうしたんだよ?」
「お兄ちゃん…一緒に寝て…」
「私も…」
2人はまるで小さい子のようにどこか弱々しく僕に頼んできたのだった。その姿はかつての幼なき妹たちを見るかのようであった。
妻の方を見ると、頬を赤らめて衣服を整えていた。そして「いいよ」と頷いてくれた。
「2人とも今日だけだぞ」
そう言って年頃の2人の妹と妻の4人でひとつのベッドに寝ることになった。
「お兄ちゃんの匂いだ…」
「いい匂い…」
2人は僕に体をひっつけて心地よさそうに眠りについた。僕は小声で妻に「ごめん」と謝った。
しかし、妻は嫌な顔せずに笑ってくれていた。これは「気にしないで」ということなのだろう。
本当によくできた妻である。
「2人とも心地よさそうね」
「そうだね」
2人の寝顔を見ていると小さかった時に、怖いという理由で一緒に寝ていた時を思い出す。
月日が流れても、変わらないものがあるのだと、改めて気づいたのだった。
そして後日、この日に出来なかった分も含めて妻との行為はかなりハードであったことは言うまでもない。
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