僕の休日は彼女と共に過ごす 前編
カーテンの隙間から朝日が入ってきた。その光が僕の顔にあたり朝を教えてきた。
目が覚めて最初に横でスヤスヤと寝ている妻を見た。
やはり彼女を見ていると癒される。気持ちよさそうに寝ており、まだ起きそうにはなかった。
昨日は相当激しかったから仕方がないのだろう。疲れきって行為が終えるとそのまま寝てしまったせいか、服はどちらも着ていなかった。
僕は散らばった服たち集めてしっかり身だしなみを整えた。
妻のも散らばっていたため、全部集めてしっかりと畳んで妻の近くに置いておいた。
「うんん…ん…たっくん…もっと抱きしめて…」
妻の寝言が聞こえてきた。どうやら僕の夢を見ているらしい。
そんな彼女を見ていると愛おしくなり頭を撫でた。
「麗子は可愛いなぁ…」
すると妻は頭を撫でていた僕の手を引っ張り僕を抱き寄せてきたのだった。
そして朝から熱いキスをお見舞してきたのだった。
でもどうやら妻は寝ているため恐らく夢での出来事を行動にしているのだろう。
腕も脚も絡めてきて僕を逃げられないようにしてきた。
「たっくん…だいしゅき…ちゅっ…れろっ…はむっ…はぁ…はぁ…ちゅっ…」
「ちょ、ちょっと麗子、いくらなんでも朝から…!?はむっ…ちゅっ…ちゅっ…れろっ!?」
彼女はお構い無しに僕の唇を貪りついていた。女性ならば男性の方が力が強いから解けるだろうと思っている人がいるかも知れないが、妻は格闘技を心得ており黒帯だ。
染み付いた動きで僕を拘束している為、ものの見事に動けないのだ。
「だ、だめ!朝から激し…あぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
僕は彼女に美味しくいただかれてしまったのだった。
◇◇◇
チーン!!
トースターからパンの焼ける音がした。焼けた2枚のパンを熱さに耐えながらとると2枚のプレートに移した。
僕はコーヒを片手にテレビでニュース番組を見ていた。
朝から襲われて精も根も尽き果ていた僕とは真逆に艶々で張りのある顔をした妻がキッチンで料理をしていた。
僕の生命力はほとんど妻に持っていかれたのだ。
「美味しそうだな…」
ニュース番組のグルメコーナーで人気のスイーツ店が紹介されていた。
そこにはショートケーキやチーズケーキなどが写っており、レポーターの女性が美味しそうに頬張っていた。
「たっくん甘いもの好きだもんね?」
キッチンで料理をしている妻がそう言ってきた。妻の言う通り僕は甘いものが妻の次に大好きである。
会社でのストレスなどがあると大量に甘いものを食べて発散したりしているのだ。
もちろん身体はある程度鍛えているので、太りはしないし、体型も維持している。
「甘いもの食べたい…」
「じゃあ今日食べに行く?」
料理を終えた皿に盛ってやってきた妻がそう言った。
確かに今日は日曜日でとくに予定がない。それならちょうどいいかもしれない。
妻はベーコンエッグを2つ僕の席と自分の席において座った。
「いいね。せっかくの休みだし行こう!」
甘いもの沢山食べて生命力を回復させようと思った。
手を合わせていただきますをすると妻の手料理を食べた。
やはり妻は料理が上手い。ベーコンエッグにしても変わらないだろうと思う人がいるだろうが絶妙な焼き加減をだしていて、味付けは塩コショウで申し分ないのだ。
スープは味噌汁であるがこれもまたいりこ出汁の白味噌の味噌汁で美味しい。
本当に僕には過ぎたる妻であった。
「ねぇねぇ…たっくん。はい。あーん」
食べていると僕に箸で挟んだベーコンを渡してきた。
それを口を開けて待つと妻は丁寧にそこに入れてくれた。
「ふふっ。どう?美味しい?」
「うん。麗子のご飯はいつも美味しいよ」
僕がそう言うと、嬉しそうな顔をしていた。やはり可愛いな。少し照れくさいこともあるが、妻はこういうことも割と平気でやる。
もちろん外でも例外ではない。
今度は妻が待っているため、それに応えるように僕も箸でベーコンエッグの白身を掴んだ。
「はい。あーん」
パクッと妻は口に入れると右手を頬をあてて幸せそうにしていた。
そういえば妻は結婚して昔とだいぶ変わったと今更ながら感じていた。
昔は真面目な感じでこういうことをするような女性ではなかった。人って変わるものだなとつくづく感じた。
食事が終わると外着に着替えた。ジーパンに少し厚めの白のロンT黒のジャケットにした。
妻はベージュパンツに白のフワッとしたTシャツを着ていた。清楚な感じ出ていて妻にピッタリな服装であった。
化粧も濃すぎず程よくしており、彼女の元の顔の良さを引き立たせていた。
「よし…。じゃあいこうか?」
「うん!」
外にでてマンションのエレベーターへと向かった。妻は無言で手を出してきて、手を繋いでと目で訴えてきた。
もちろん手を繋いでエレベーターへと向かった。エレベーターの方につくと女性が1人待っていた。
眼鏡をかけて三つ編みを下ろした少し地味めの服を着た女性だった。
この娘は家の隣部屋に住んでいる女子大生の
「こんにちは彩奈ちゃん。どこかへお出かけかい?」
僕の声に驚き身体をピクっとさせこちらの方を見てきた。
「ど、どうも…ちょっと買い物に…」
彼女は少し挙動不審ながらも答えてくれた。
彩奈ちゃんは今お母さんと妹さんの3人で暮らしており、お父さんは単身赴任中らしい。
ちょっと地味な服装だが少しお洒落したらもっと綺麗になりそうだなと思った。
顔も化粧も気持ち程度しかしていない。少し損をしている気がした。
「あ、あの……ひっ!すみません!なんでもありません!!」
何か僕に尋ねようとしていたが僕顔を見た瞬間、急に驚き階段の方へと行ってしまった。
彩奈ちゃんは挨拶もしてくれて良い子なんだけど、不思議なところもある。
「………」
横を見ると少し険しそうな顔を妻はしていた。
「どうしたの?」
「ん?ううん!なんでもないよ!」
何もなかったようににっこりと笑顔を見せてきた。うん、可愛い。
丁度エレベーターもきて1階へと降りていった。
◇◇◇
「はぁ…はぁ…。こ、怖かった…」
階段で一気に駆け下りていき、息が上がっていた。彼女は先程隣の部屋に住む若い夫婦と挨拶をしたのだった。
夫は
妻は
彼女は隣であることもあり挨拶をすることがたまにある。夫の拓真の方は優しいから笑顔で挨拶をしてくれる。
妻の麗子も一人の時は笑顔で挨拶をしてくれるのだ。
しかし、旦那と二人の場合挨拶した時に殺されるのではないかと思うほどの殺意で見られるのだ。
「またお礼言えなかった…」
彩奈は残念そうにとぼとぼと下を向いて歩いていった。
彼女は以前拓真に助けられたことがあり、そのお礼が言いたかったのだ。
しかし人を前にするとコミュ障を発揮してしまう彩奈ははっきりと言うことも出来ず、決心がついたかと思えば、隣りの奥さんの麗子がいて睨まれる始末であった。
「これ返さないとな…」
水色の少し古ぼけたハンカチであった。これは元は拓真のもので借りっぱなしであったのだ。はやく返そうと思っていたが、コミュ障のせいで言うことが出来ず持ちっぱなしであった。
「すん…すん…」
匂いを嗅ぐとまだ僅かに拓真の匂いがしていた。この匂いを嗅ぐと彩奈はどこか落ち着くのであった。
「あ、私ったら…はしたない……」
やっていることは変態と似た類である。そんな自分の行動が少し嫌になった。
「麗子さんいいな……。あんな良い人が旦那さんだなんて…」
あの優しい拓真をつまである麗子の事が少し羨ましかった。
しかし、夫婦である以上あまり近づくのは良くないと思い彩奈はこれ以上考えるのは辞めることにした。
彩奈は目的のものを買うためにそのお店へと歩いていったのだった。
◇◇◇
「たっくん。先に買い物していい?」
「ん?いいけど何買うの?」
手を繋いで二人仲良く歩いているうちにショッピングモールを通りかかった。
そこで足を止めて妻がそう言ってきたのだ。
服でも買うのかなと思っていたが、どうもついて行くとそうではなかった。
妻が僕を連れてきたところをは生活雑貨であった。
つまり調理器具やらのところであったが、まだ新しい筈だから買うものがあるのかなと不思議に思った。
「あ!これこれ!見て!たっくん!」
僕に見せてきたのはショーケースに入れられスポットライトにあてられて光る包丁であった。
それを見た時に昨日のことを思い出しゾクッと背中に寒気が走った。
「こ、これって包丁だよね?」
「そうだよ?今使っているのもいいけど、これ凄いんだよ!?」
名札には刀匠村正一門作の三徳包丁であった。村正ってあの妖刀村正でしょ?それはやばくないか?
キャッチコピーには「この包丁に切れぬもの無し」なんて書かれている。
この包丁を見ている時の妻はとてもいきいきしており、その顔はどこか狂気すら感じた。
「ねぇ…これ買っていい?」
値段を見たらなんとびっくり一振り8万5000円(税抜き)であった。
どうしてこんな大金を払ってまで僕は危険をおかさなければならないんだろうか。
「高いよ…。それに今持ってるのでも充分使えるでしょ?」
「使えるけど、この包丁使ったらもっと料理がしやすくなるんだよ?そしたら、たっくんにもっと美味しいご飯作れるよ?」
いやでもな…。もしまた昨日のようなことが起こったら今度こそ僕は殺されるかもしれない。
しかもこの包丁なんかやばそうなオーラが感じるんだよな…。狂気的なものが感じる。
「お願いたっくん…?」
僕に向かって上目遣いでお願いをしてきた。なんて眩しいんだ。そして可愛すぎる。こんな目で見られたら断りづらいじゃないか…。
でもこの包丁本当にやばそうだし。
どうしたらいいものか…。
「お会計9万3500円です」
「カードでお願いします」
買いました。理由は妻が可愛かったからそれだけです。以上。
今度から妻を怒らせないように気をつけるしかないな。じゃなければ、あの妖刀の餌食にされちゃう。
包丁を買った妻は鼻歌を歌うほどご機嫌であった。
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