ファンタジーらいふっ! ~父子で異世界の過ごし方~
雪あざらし
プロローグ
プロローグ-
暗い微睡の中、微かな声が聞こえる……
「…パ………て、………パパ………お、き、て」
「……ううん……」
何か頭をポンポン叩かれている様な…感触を感じながら目を擦り重い目蓋を開ける。
そこには私の顔を眺める息子、
巴月は3歳、まだまだやんちゃな時期なのだが早起きしても寝室から出ずおもちゃで遊んだり私の体で遊んだり…とても真っ直ぐで素直に育ってくれた。
いつも枕元に置いてあるスマホも全く触らず『私の物と巴月の物の分別が付いている』
名前負けしない女の子っぽい顔立ちをしている息子で図体は5歳児並みに大きく人見知りが激しく甘えん坊なのが心配かなぁ…。
「あ、おはようございます。」
いつもの様に起こしてくれた巴月におはようの挨拶をする。
何も変わらない日常、六畳一間の寝室。
朝の支度をして巴月を保育園に送り出さないと……
フラフラする体を無理やり動かし起き上がろうとする…
「パパ、戸、開かない」
巴月が不安そうに声を掛ける。
「え?そんな事は…」
と、
「こりゃ参ったなぁ…」頭をポリポリ掻いていると
「パパ…」巴月が足にしがみ付いて動かない。
(まぁ、不安にもなるよなぁ…)巴月の頭を撫で撫でして「大丈夫、パパが何とかするからね」笑顔で返し少しでも不安を取り除く。
「巴月、おもちゃで遊んでていいよ。パパは部屋を調べてみるから」
「うん」と返事をし、消防車のおもちゃを走らせて遊ぶ。
(先ずは整理だな。巴月とこうして会話が成立しているとなると夢や幻覚では無い可能性が高い。だとしても襖が開かないのは何故ー?)
寝起きでまだハッキリしていない脳味噌を出来る限りフル回転させる。
(このまま待っていれば保育園の方から連絡が来そうだけどーーー!!スマホがあったか!!)
早速スマホを手に持ち確認する。
「えっ!?」
「パパ、どうしたの?」
「ううん、大丈夫だよ」笑顔で返す。
(圏外な上にWi-Fiが繋がっていない…)時間は9時10分を指していた。
(流石にこの状況は異常じゃないか?自然災害?)去年、震度7弱の地震を経験してから万が一に備えて寝室には生活備蓄をしまってある。
いざとなったら寝室で過ごすが、襖が開かないのが府に落ちないー。
何なんだ?この違和感はーーーー。
次に部屋中を散策して見る。
ーと言っても、押し入れしかないのだが。
押し入れを開けると巴月用の紙おむつ、お尻拭き、乾パンに水、生活用品…そして巴月の保育園用鞄があったー。
保育園用鞄は仄かに何かを引き付けるかの様に光っていたーー。
(何でここに鞄がー?)そう、この鞄は巴月が毎日保育園に持っていくリュック型の鞄だ。
思わず押し入れから引っ張り出す。
「巴月の鞄!!」巴月がサッと私の手から奪い取り中身を漁る。
しかし、中身がない。着替えも涎掛けも、連絡簿も。ただの1枚の紙切れ以外はー。
「パパ、巴月の鞄、空っぽ」
「そうだね…、何でだろ」
「何でだろ」
そう言いながら一枚の紙切れを見る。
「巴月も見たい」とぴょんぴょんするので一緒に寝転がりながら見る。
「パパ、何て書いてるの?」
「読めないのに見るんかいっ」解ってはいたが思わずツッコんでしまった。
紙切れには不思議な模様があるだけだった。緑色の何かの魔法陣の様な物が描かれているだけ。
巴月が突っつくと緑の模様が光出した-------!!
「巴月、危ない!!」慌てて巴月を包み込む様に覆い被さったが、何も起こらない。
緑の模様から空中に文字が浮かんでいた。
・鞄の中に入れられる物は一つのみ
・二つ以上入れた場合、ランダムで一つが抽選されそれ以外は消滅する
・鞄の中に入れた物は消耗、破損時即座に新しい物が補充される
・このプレートは
・プレートは常に鞄の中にあり、また上記の対象外である
・以降閲覧規制(条件を満たす事により可能)
何なんだ、このどっかのゲームみたいな設定は…。
しかし、襖が開かないのは以上これしか手掛かりはないか、しかしこれを素直に信じてよいのか?
巴月は不思議そうに浮かんだ文字を手でブンブンしたり眺めた入りしてる。
まぁ、それが普通の行動だよな。
「巴月、今日は保育園行かないでパパとお出掛けするか!! 」
「やったー!!」最高の笑顔で万歳する姿がとても癒される。
「よし、パンツ取り替えて〜、着替えて〜、出掛けよう」
巴月を横にし、おむつを取り替え着替えを済ます。
問題は鞄に何を入れるかだが……そんな事は決まっている。
巴月のおむつだ。
こればっかりは幾らあっても困らないし、補充されるなら常に清潔でいられるからな。
巴月の鞄に紙おむつと『プレート』という名の紙切れを入れジッパーで閉じると襖がゴトッと音がした。
相変わらずビビリの巴月はしがみ付く。
巴月の頭を撫で、「リュック背負ってく?」
「うん」と返事をし、いそいそと背負う。
「さて、出掛けるか」
「うん、巴月も行くー」
私は巴月と手を繋ぎ、襖に手を掛けた。
普段と変わらずスッと開いたがその先は虹色に光先が分からない光景だった。
「結局、異世界物じゃねーか」
私は半笑いし、巴月と寝室を後にするのだったー-------。
ファンタジーらいふっ! ~父子で異世界の過ごし方~ 雪あざらし @azarashi39
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