第2話◇あ? 夢か? 夢オチか?


 目が覚める。目が覚めた。おはよーさん。なんか、ゾンビとバトルするハイテンションな夢を見てたような……。起きる?……起きるか、よっと……


 ベリベリベリベリビリビリッ


 なんだぁ?着てるTシャツが破れて、ヘソと腹筋が見えてる。あー、現状確認。俺、血塗れのTシャツ着たままソファにうつ伏せで寝てました。Tシャツとソファにくっついた血が乾いて接着剤みたいになってて、起きたときに破れてしまったと。血って固まるとこーなんのか?

 なんかまだ、頭がボンヤリしている。クラクラする。ソファに座り直す……俺の部屋にソファは無い。黒革のソファがあるここ何処だよ? あー待て待て、順に思い出していこう。


 アパートの部屋を出たら、外にはゾンビがいた。なんだオマエ? と聞いたら、うぁー、とか言いながら襲ってきたので慌てて蹴飛ばして逃げた。街の中は割と静かで、たまにゾンビがいて、生きてる人間はいなかった。遠くで見えた火はキャンプファイアーじゃ無くて火事なんだろーな。


 知らないうちにゾンビが街に来てたらしい。知らんかった、いつの間に。3ヶ月前にバイト先がつぶれて無くなってから、ハローワークかバイトの面接に行く以外はアパートの外には出てないから、ぜんぜん気がつかなかった。


 部屋のテレビは世の中が地デジになったときから砂嵐しか放送してないし、貯金が残り少ないから、外に用事がある日は、一日一食。用事の無い日はなるべく動かないようにしてカロリーの消費を抑えて、二日で一食。少ない貯金をやりくりしての節約生活。食事は近所のドラッグストアで買える1パック58円のレトルトカレー。米さえあれば一食58円だ。そんな生活をしてたから、外でなにかあっても、気がつかなくてもしかたねーよな。俺は悪くない、社会が悪い。


 だいたい一日三食もメシを食うなんてのは、金持ちの贅沢なんだよ。成長期の終わった人間が一日三食も食ってたら、デブるだろうが。それをカロリー控えめだとか、塩分控えめだとか、死ねよブルジョア。食い過ぎて胃が破れて死ね。脂肪肝になってしまえ。


 まぁ、アパートの外に出る日の前日か? なんか外がうるせえわやかましいわ、工事でもしてんのかって、あれがゾンビパニック初日だったのかね。気がつかなかった俺は二日目から参加したと。ブームに乗り遅れた訳だ。流行とか知ったこっちゃねーけど。

 だけど、人がいなくてゾンビしかいないのなら、ラッキーなんじゃね?


 と、思いついた俺は商店街のスポーツ用品店から木刀と金属バットを頂いた。店員いないし、シャッター開いてました、ありがとうございます。で、道中のゾンビをしばきながらコンビニに直行。ガラスは割れてるし、ここにも店員はいない。ひゃっほい取り放題と缶詰やら菓子パンをカゴにつめるだけつめて、アパートに持ち帰った。

 

 久しぶりに腹いっぱいにメシを食ったなー。

 カレー以外のものを口にするのは、何週間ぶりだろう。缶詰のサバの味噌煮、缶詰の焼き鳥、きゅうりとなすの漬物、チーズクリームパン……バイト先が見つからなくて、そろそろ飢え死にを覚悟してたところだったから、夢中で食った。ガツガツ食った。泣きそうになった。ゾンビありがとう。ゾンビのおかげでごはんを腹いっぱい食えました。大感謝。

 がっつきすぎて、少しおなかが痛くなったが満腹感で幸せー。


 食って寝て、動けるようになってから、んじゃ本格的にサバイバルするかなーと、金属バットと木刀を持ってデパートに出発。

 サバイバルと言えば? 水に食料、衣服、電灯、乾電池、あとリュックとか頂いてこようかな。今のとこ、ウチのアパートまだ電気、水道使えるけどいつ止まるやら。このときの道中にゾンビ殴って木刀が折れて、代わりに金属バットでしばき倒して、ちょっとゾンビのぶっ壊し方が解ってきたところで、デパートの近くまで来たら……そうだ、あのバカ女が悲鳴あげながら逃げてきたんだよ。なんだあの女?

 バカ女が連れてきたゾンビとバトルして……


 ゾンビに噛まれたんだ。

 そうだ、俺、ゾンビに腕かじられたんだよ。

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